2019年9月11日10,917 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】#2 まるで別犬格!? ご近所のあの犬にだけ激しく吠えるんです【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。

今回は、“特定の犬にだけ、人が変わった…ではなく、犬が変わったように吠えまくる”というお悩み。果たして小野流解決策とは?

今回の悩み:よく散歩で会う、あの犬にだけ吠えるんです…。

8歳・女のコのお悩みの内容

「5歳過ぎから他の犬に吠えるようになりました。

 

お散歩中、オスワリ、マテでスレちがえばお利口に出来るのですが、どーしてもダメなコがいます。

 

元々は相手に吠えられていたのですが、今では姿が見えなくても匂いを取っただけで鼻が擦れるくらい激しくクンクンし、鳥のような変な声を出したり姿が見えたら激しく吠えます。

 

そして、オスワリ、マテ、などのコマンドも入らなくなりオヤツも食べず…。まるで別犬格になってしまうんです。

 

なるべく、会わないようにして見かけたらうちの犬が気が付かない様に道を変えたりしていますが、完全には避けられないので、その犬に会ったときもパニックにならないようにしたいのですが、何かいい方法はありますか?」

 

なかなか難しそうなお悩みですが、果たしてその解決方法は!?

 

シニア犬なので健康を第一優先にトレーニングを

柴犬

Rin Seiko/shutterstock

まずお困りごとに取組む場合、僕の場合は徹底的に原因がどこにあるか調べます。

 

飼主さんからの情報だけですと、「飼主フィルター」を通しての情報になり、実際に犬を見てみると全然違うということもたくさんあります。

 

なので、大前提として、“こういう方法もあるんだな”というスタンスでお読みいただけると幸いです。

 

 

成犬になってからの問題行動は珍しくない

じつは、この柴犬のように、成犬になってから何か困ることが出てくることは多々あります。

 

原因は様々ですが、何か身に起きたことでそれ以降、苦手になったり出来なくなったり。

 

積もり積もった経験で嫌になってしまったり。たった1回の出来事でも、態度や対応が変化してしまう場合もあります。

 

直接的な原因ではなくても、なにかのキッカケで変わってしまう場合もあります。

 

わかりやすいのは、避妊去勢でしょうか。ホルモンなバランスや自律神経の乱れなどでも今まで許容できていたものが、できなくなることもあります。

 

そして、今回のケースですが、まず8歳という年齢。ここを考慮しなくてはなりません。

 

最近の犬たちは8歳でも十分に元気ですが、やはり若い子に比べると歳はとっています。健康状態が悪ければ、問題行動を治すトレーニングをするより、体調をまずは万全にしてあげることが最優先。

 

慢性的な病気にかかっているかも知れませんので、8歳くらいからは毎日よく体調を気にしてあげてください。

 

足腰も弱ってる場合がありますので、運動の仕方も変化を入れていく時期の子もいます。

 

トレーニングをするとなると、ストレスがかかるかもしれません。ストレスから体調を壊す可能性もあり、また体調を壊してしまったとき、回復にかかる時間も年齢ととも増しますので、実際のトレーニング方法は、ストレスとのバランスを見ながら考えないといけません。

 

特に、犬のメンタルに影響するようなトレーニングをするときは尚更です。そこは忘れずに頭に入れておいてください。

 

積もりに積もって変わってしまった可能性が

柴犬

Vagengeim/shutterstock

ご質問を読んで気になったのが、「元々相手に吠えられていた」という部分です。どのくらいの頻度で吠えられていたのかはわかりませんが、この子的には「堪忍袋の尾が切れた」状態になってしまったのかもしれません。

 

前に書いたように、積もり積もって態度が変わってしまったパターンですね。

 

ずっとこの子が、頑張って耐えていたのであれば、恐怖や不安が気持ちの中に含まれていて、先に排除しないと気が済まないかもしれません。

 

最初のころは、リードが付いていなかったら逃げたかったのに、「リードのせいで逃げられない」→「逃げられないから耐える」→「逃げられないなら排除する」なんて流れかもしれないですね。

 

オスワリ、マテがパニックのスイッチになっているかも

柴犬

witaya ratanasirikulchai/shutterstock

もう一つ気になったのが、特定の子以外はオスワリ、マテですれ違うことができるという点です。

 

すれ違う時、オスワリ、マテでしかすれ違え無いのなら、普通に歩いてすれ違うことをしてください。

 

もちろんオスワリしてすれ違うケースも大切ですし、必要な場面もあると思います。

 

しかし、あまりにもそのパターンをやり過ぎていていると、苦手な犬を前にしたとき、パッと頭に「犬がいる→コマンドが出る」という流れが浮かびます。

 

すると「今はオスワリ、マテはしたくないのに、させられるかもしれない」とパニックになったり、より特定の子が嫌になっているかもしれません。

 

どちらにしろ、苦手な子の前で不安定な状態になってしまうので、安定させてあげる事が大切です。

 

不意に出くわしたときの対処法は、直前の状態を「キープ」すること

柴犬

Tatyana Kuznetsova/shutterstock

これは、「犬と飼い主が今まで何をやってきたか」という部分に大きく起因しますので、この相談者さんと犬との関係を見てみないと本当のところはわかりません。

 

ですので、ほんの一例として捉えてください。

 

犬が緊張したら飼い主はリードを短く持ちます。歩いていて、なおかつすれ違える道幅であれば、そのまま歩き続けてください。

 

信号待ちなどで動いていなかったときは、そのままそこを動かないようにしてください。

決して犬と目を合わせたり、言うことを聞かせようと声を掛けないでください。

 

怒るのは厳禁です。できるだけ、飼い主は平常心で緊張しないように(難しいですが)。

 

緊張している対象が離れて少し落ち着いてきたら、何事もなかったかのようにいつも通り歩いてください。

 

このくらいが、不意に出くわした時の対処です。

 

先にも書きましたとおり、「今まで何を犬とやってきたのか」というのがポイントになります。

 

それまでの散歩の練習ややり方などが大きく絡んできますので、お散歩の仕方に自信が無ければ、お散歩のトレーニングから始めないといけません。

 

もう一つ。これは完全にトレーナーと特定の犬の協力が必要になるので現実的ではありませんが……。

 

相手の犬との距離が遠いうちに、愛柴が相手に気がついたときは、MAXの興奮状態、パニックになる前の平常心が保てている距離、飼主のコマンドが聞けている距離で、愛柴を落ち着かせる練習を繰り返します。

 

パニックに「させないこと」より、「パニックからなるだけ早く復帰する」ことが大切

柴犬

MitchyPQ/shutterstock

年をとってからの特定された嫌いなもの、人、犬などを平気にさせるのは、“知らないから嫌い”という状態よりも、かなり難しいです。

 

なぜなら、年齢的にも色々経験してきた上での好き嫌いですから、根深いんですよ。

 

年齢を考えると、パニックにさせないことより、パニック状態から早く復帰するという方向に目を向けることも大切かなと思います。

 

パニックになった犬の不安感を早く取り除いてあげるために、体調を見ながらトレーニングしてみてください。

 

トレーニングは犬を幸せにする

柴犬

GALINA TARASENKO/shutterstock

「飼主の言うことを聞く」。このことを、とても当たり前のように捉えてる人もいれば、「そんなの犬が可愛そう」と捉えている飼い主もいます。

 

しかし、これはバランスやら加減やら程度が大事。なんでも“やり過ぎ”は良くないですよね。

 

子犬の頃から適切なトレーニングをしたことのある犬の、最も特徴的な部分は「精神的な安定性」です。

 

もちろん、持って生まれた性格や犬種特性を踏まえた上での適切なトレーニングですが。

 

色々なトレーニングやしつけがありますが、飼い主さんと毎日一生懸命取り組んだこと、取り組んでいることがある犬は、心が安定していて幸せだなと思います。

 

例えば、大震災のような災害が起こった時に「なんともないよ。大丈夫だよ」と伝えるために、飼い主といつもやってることを一緒に行うことは、犬のメンタルを安定に強く導きます。

 

犬が不安がっている時に「初めてやること」はほとんど意味をなしません。日頃の接し方が緊急時には成果を発揮し、犬を安心安全に導けます。

 

ですので、「飼い主の言うことを聞く」ことは、とても大切な一面もあります。

 

例えが大震災でしたので、今回の問題とあまりリンクしていないように思われるかもしれませんが、犬は毎日、大震災以上の不安を抱いているかもしれません。

 

ぜひ犬のメンタルの主軸を作るような適切なトレーニングを心掛けてトレーニングしてください。

 

そうすれば、ゼロではありませんが、成犬になってから急にダメになるモノや可能性を低くする事ができると思います。

 

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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