2023年6月17日34,409 ビュー View

【取材】「ときろう」が望むバランスで関わる。17歳まで元気でこれた秘訣は干渉し過ぎない距離感 #38ときろう

平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。 この特集では、レジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らすうえで大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただきます。今回登場してくれたのは、17歳のときろうくん。小さい頃から食が細かったため、何でも食べさせてきたということですが、そんなときろうくんの長寿の秘訣とは。

ときろうくん プロフィール

柴犬

年齢&性別

17歳の男の子(2006年4月8日生まれ)

体重

7.8kg(若い時は9kg)

大好きなこと

散歩、車に乗ること、こたつ

既往歴

・14歳で初めての前庭疾患。その後16歳までに4回発症。同じく14歳で心臓疾患。現在も薬を服用中。

・15歳の時に全身麻酔で歯石除去。同じく15歳で左眼がぶどう膜炎に。

・16歳で肝炎になり、点滴、服薬で治療。

 

物静かで優しい子

柴犬

 

子どもの頃から犬と暮らし、楽しく幸せな時間を過ごしてきた島田さん。そんな経験を我が子にもと、ときろうくんを迎えたそうです。

 

「一番下の子が小学生に上がった時に、そろそろ年齢的に大丈夫かなと思って迎えました。

 

ブリーダーさんから、8頭兄弟で一番穏やかで優しいという子を譲っていただいたのですが、本当にそのとおりで、物静かで子どもにも優しい犬でした。

 

動物好きな私の子どもたちはもちろん、そうでない周りの子も、“ときろうみたいな犬が飼いたい!”と好きになってくれ、実際に犬を迎えたお家もあったんですよ。

 

かといって人懐っこい訳ではなく、家族にもあまり甘えたりはしません。一匹狼タイプというか、落ち着いて静かにしているのが好きな子でしたね」。(島田さん=以下「」内同)。

 

独りが好きな面もあれば、協調性や順応性もあるときろうくん。お子さんの送り迎えに付いて行くうち、車が大好きになったそう。

 

おかげで遠方へのお出かけも楽しめ、家族でたくさんの思い出をつくることができました。

 

また、リードが外れて逃げてしまった時は、追いかけても呼んでも戻って来ないのに、車で近づいてみると自分から乗ってきた、なんてことも。

 

そんな場面はなかなかないかもしれませんが、病院に行くときなども、車に慣れさせておくと余計な負担がかからず安心ですね。

 

シニアの工夫

柴犬

 

今のときろうくんはどんな暮らしを送っているのでしょう。

 

「元気ではあるのですが、去年の春、16歳の時に体調を崩してから、体力や足腰は衰えています。それに発作的に倒れることもあったので、散歩や遠出はあまりしなくなりました。

 

今はカートで外を楽しませ、歩きたがったら少し歩かせるくらいにしています。体調を崩すまでは、15分くらい散歩できてたんですけどね。

 

カートは、寝た状態で乗れて、高さが低いものにしました。主人がネットで見つけたのですが、シニア向けのものはあまりなく、探すのがなかなか大変でした。

 

家の中では、滑り止めにフロアカーペットと肉球シールを使っています。包帯のように巻くタイプも試しましたが、そちらは嫌がったのでもう使っていません。

 

あと、狭い所に入り込んで動けなくなることがあり、最初はケージに入れていましたが、どんどんぶつかって行くんです。なのでケージは止めて、家中の隙間にクッションを突っ込んでいます。

 

それから食事や水飲み時の踏ん張りも利かなくなってきたので、お尻をついても大丈夫なように器を低めの位置にして、床には食べこぼしても掃除しやすい防水シートを敷きました」。

 

柴犬

 

フードは若い時と同じ『ロイヤルカナン』ですが、粒が小さく消化に良いものに。『dbf』のウェットフードや、体重を落とさないよう高カロリーな蒸しパンなどもあげています。

 

またオムツは1年かけて犬用も人用も試した結果、清潔さと手間を重視し、犬用のできるだけ安いものを毎回取り替える方法に落ち着きました。

 

そして最近始まったという夜鳴き。週に1回、島田さんが夜勤で不在の夜に、ご主人が一緒に寝ていても鳴いてしまうのだとか。まだ解決策はなく、これからかかりつけ医に相談されるそうです。

 

14歳まで病気知らず

柴犬

 

続いて、体質や健康面について伺いました。

 

「若い時は全然病気はしていません。ただ皮膚の痒みが出やすく、フードをアレルギー対策のものにしたりシャンプーを頻繁にしたり、今も時々薬を飲んだりはしています。

 

体調に変化があったのは14歳からで、最初は前庭疾患です。眼振と嘔吐があり、病院でも結構悪い状態と言われたので心配でしたが、ステロイドを2カ月程服用して回復しました。

 

その半年後くらいに、今度は散歩中に咳や息切れが出て、診察で僧帽弁閉鎖不全症という心臓の疾患だと判りました。

 

悪化すると手術が必要な病気なのですが、半年程かかって合う薬が見つかり、今もその薬で落ち着いています。

 

この時は散歩もドクターストップがかかりましたが、トイレを外でしかしないので、様子を見ながら少しだけ連れ出してさせていました」。

 

柴犬

 

その後15歳で2度目の前庭疾患がありましたが、1回目程は長引かず、同じようにステロイドを服用し2週間で回復。

 

しかし同じ頃に口周りを痒がるような動作があり、病院に相談したところ歯石を除去する“スケーリング”をすることになったそう。

 

15歳での全身麻酔は心配だったものの、40分でできるところまでやるという方法で、処置は無事に終わり、口腔環境も改善されました。

 

3回目の前庭疾患で⋯

柴犬

 

歯の悩みから解放されたときろうくんでしたが、次は眼に問題が。

 

「左眼がぶどう膜炎になり、目薬で落ち着いたと思ったらまた悪くなる、の繰り返しになってしまいました。

 

かかりつけ医は眼が専門ではなく、近くに眼科医もなかったので、県外の病院に行こうと思ったのですが、コロナの時期で行き辛くて。

 

それで何カ月か様子を見た後、コロナが少し落ち着き県外の眼科を受診したところ、治療は難しい状態だと判ったんです。

 

お医者さんと相談し、“目薬も負担になるので、症状が改善しないのなら目薬は止め、負担を減らして健康な右眼を大切にしましょう”という結論になりました」。

 

柴犬

 

その後、16歳になった頃に3回目の前庭疾患を発症。これまでの症状に加え、興奮するとバタンと倒れるようになってしまいます。

 

「心臓の病気もあり、虚血性か脳が原因かは判らないとの診断でしたが、家で静かにしていると何もなく、興奮したり息が上がると倒れるという傾向はありました。

 

それで散歩や遠出も難しくなって、この時を境に体力や足腰が衰えていったように思います」。

 

シニア期に療養が続くと気になる体力と気力の低下。かといってもちろん無理もさせられません。

 

かかりつけ医とよく相談して、島田さんのようにカートで外の空気を吸わせたり、体調の良いときに少し体を動かしたりと、生きる意欲を失わないようにしてあげたいですね。

 

17歳でまた元気に!

柴犬

 

試練が続くときろうくんに、またもピンチが訪れます。

 

「3回目の前庭疾患から半年後、16歳半頃に肝炎になりました。

 

この時は一気に元気がなくなり、ぐったりして“もう動きたくない”という感じで、嘔吐も少しあったと思います。

 

病院で“肝臓の数値的には危篤になってもおかしくない”と言われ心配しましたが、3日間の点滴と10日程の服薬で、何とか回復してくれました」。

 

治療中も家では自分でごはんを食べ、トイレもできていたというときろうくん。体力が落ちていたとはいえ、まだまだ底力があったようです。

 

また、同じ頃に4回目の前庭疾患を発症しましたが、そこまで重い症状はなく、ステロイドの服用で改善しました。

 

そして17歳になった今は、心臓の薬と、痒みが出た時に痒み止めを飲む程度で、定期検診の数字も問題のない範囲に。

 

それどころか、歩ける距離も少し増え、益々元気になっている様子。ときろうくんの底力、恐るべしです!

 

ときろうくんのバランスで

柴犬と家族

 

眼や口腔、心臓に肝臓そして前庭疾患と、数々の病気にも負けず17歳を迎えることができたときろうくん。どんなふうに接したら、そんな強い子に育つのでしょうか。

 

「独りでいたり、静かにしているのが好きという性格なので、あまり干渉し過ぎないようにしてきました。

 

とはいえ、夜は私たちの布団に入ってきたり、シャンプーや爪切りはサロンを嫌がり家でしかさせなかったりもするので、ときろうが望むバランスで関わるという感じでしょうか。

 

それから元々食が細かったこともあり、体に悪くなければあまり神経質にならず何でも食べさせてきました。食べる楽しみを感じてもらいたくて。

 

それも心臓以外は病気も克服して、元気でいてくれたからできたことなんですけどね」。

 

柴犬

 

看護師として働いている島田さん。病気の時はもちろん、日頃からよく観察され、ときろうくんが望むこと、そして体調の変化も敏感に感じ取られていたのだと思います。

 

行動も食事も、良いこと悪いことを一律に決めてしまわず、その時々の状況に合わせて“曖昧に”対応していく。

 

ずっと考え、悩み、心配し続けることになり、オーナーとしては大変ですが、愛犬にとっては理想的な接し方と言えるのではないでしょうか。

 

取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)

 

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