2019年9月26日13,461 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】#3 カタッ…小さな音にもブルブル!この怖がり、治らないの?【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。

今回は、“音への恐怖心”がひどいというお悩み。果たして小野流解決策とは?

お悩み:小さな音にすら飛び上がって逃げるほど「音への恐怖心」が強いんです

2歳・男の子のお悩み

うちの子はとっても怖がりです。
部屋の中で少しでも「カタッ」と音がなると飛び上がって驚き、音の鳴った方を見つめ、部屋から逃げていきます。風の音が強い日はご飯も食べれないくらい怖がりで、2階の寝室に籠ります。

よくいろいろなところに一緒にお出かけするのですが、お祭りに行くと太鼓や音楽の音を怖がり、この世の終わりのような鳴き声をあげてブルブルと震えが止まらなくなります。
この怖がりは治らないのでしょうか?

 

神経質な性格の柴犬のオーナーなら、同じような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。果たしてその解決方法は!?

 

恐怖心や恐れは、パピーのころの社会化不足が原因

柴犬

Jay Takayama/shutterstock

 

色々なことへの恐怖や不安や恐れは、社会化期と言われる時期に大きく起因していることが多いです。

 

この子の場合、「音」に過剰に反応しているようですが、他にも苦手なモノがあれば社会化が足りなかったのかもしれません。

 

社会化については長くなってしまいますのでここでは詳しく書けませんが、繊細な子には繊細な社会化トレーニングが必要。持って生まれた性格に合わせ、慎重にステップを組み立てていく必要がある子もいます。

 

“ライオンが自分の子供を崖に突き落とす”みたいな話もありますが、社会化とはそういうショック療法的なものではありません。

 

元々シャイで怖がりな子であれば、怖がらないラインやポイントを見極め、少しずつ刺激や誘惑などを強くしたり増やしてあげていかなければならないものです。

 

しかし2歳ということですので、社会化期と言われている時期はすでに終わっています。

ただし、改善できないわけでもありません。

 

実際にこの子を見てみないと程度はわかりませんので、改善までどのくらいかかるのか、どの程度の刺激の強さから始めたらいいのかなどは具体的にお答えできませんが、年齢的には、慣れさせるというより“学んでもらう”というアプローチが必要になります。

 

そして“学ぶ”には、プロの手助けが必要です。もし、飼主さん自身で取り組もうとするのであれば、知識、技術はもちろんのこと、手助けになり得る飼主になれているかどうか、関係性はどうかが大きく影響してきます。

関係性ができているかは「おいで」で分かる

柴犬

Pommy/shutterstock

 

自分と愛犬がどういう関係なのかを計る方法はいくつかありますが、いちばん簡単なものが、「おいで」です

僕は「おいで」は他のコマンドとは少し違うものだと考えていて、関係性全てが出ると思っています。

 

ご飯食べてる最中など、どんなタイミングであっても「おいで」が聞けたら満点。

 

なかなか来ない場合は「おいで」のトレーニングを頑張ってください。

 

飼主さんに向かって唸る、吠える、噛み付く場合も、犬の学習の手助けができる関係性ではないので、まずはそれを改善してください。

 

関係性などを変えたり改善するトレーニングは全く別のトレーニングになりますので、お近くのトレーナーさんやプロの方に教わると良いかと思います。

柴犬に自信をつけてあげると解決する場合も

柴犬

TOM KAROLA/shutterstock

 

もし、音以外にも怖がることがある場合。たとえば、側溝や階段、初めての場所、シチュエーションで動けなくなったり、いつもと違う様子になるなど……、そういった苦手なことがあれば、経験値を増やし“自己自信”をつけてあげると早い解決になる場合もあります。

 

身体能力的には全く問題ないのに、できるはずのことができない場合は、“心”の育み、成長ができていないのかもしれません。

 

苦手なことをひとつずつクリアにしていくことで、自分に少しづつ自信がついてきて、気持ちの面で耐えられたり、乗り越えられたりすることが増えてきます。

 

少し話はずれますが、“しつけ”とは“心を育む”ことだと僕は考えています。

 

苦手なこと、怖いことなどがあれば、それは“心”を強くするためのチャンスだと捉えてください。

 

もちろん社会化と同じく、繊細な子には細かなステップを考えてあげることが大事。また、本当に怖いものであれば、諦めることも視野に入れてトレーニングに取り組みます。

 

ステップを踏みながら、課題をクリアしていくことで自己自信がつき、今まで苦手だったものが、苦手なこと自体へのトレーニングをしていなくても平気になる子を、僕は何頭も見ています。

 

その子次第ですし、ケースバイケースの場合が多いのでやってみないとわかりませんが、もし音の他にも怖がるものがあれば、それも克服できるよう取組んでみてください。

 

犬を褒めるタイミング、強く出る場面、待つ間合いなど、細かいところが結構大事ですので、トレーナーさんやプロの方に直接アドバイスが貰えると確実かと思います。

怖がっても放置。吠えても怒らない!

柴犬

NIKON-T20/shutterstock

 

“怖がる”程度が、ブルブルしていてもオヤツが食べられるくらいか、(もしトレーニングしていれば)コマンドが聞ける程度なのか、どこかに籠ってしまっても触ることはできるのか、触ろうとすると噛んでくるのかなどでもアプローチの仕方は変わってきます。

 

犬がとても強い恐怖を感じている時は、つい何かしてあげたくなってしまいますが、恐怖の対象から避けられる環境を作ってほって置くというのが一番良い方法の場合も多いものです。

 

飼主さんは気にしない。普通にしてる。いつもと同じ。

 

これは犬が不安定になってる時はとても大切です。励ましたりするのは、もしかすると逆効果になっているかもしれません。

 

励ましたり褒めたりというのは、犬と飼主の関係性に寄るところが大きく、関係が良好でもその時々の犬の状態をみて声を掛けた方がいいのか、放っておいたほうがいいのかを見極めることが大切です。

 

また、怖がって吠えている場合は絶対、それを怒ることはやめてください。もし、どうしようもなければその場から立ち去る、遠ざかることをしてください。

 

今は無理だということをちゃんと受け入れて一緒に行動、生活をしてあげることが、怖いものがある犬にはとても大切なことです。

 

<お祭りに連れて行った>とありますが、この子にとってお祭りの音は、まだ刺激が強すぎたかもしれませんね。

ぶるぶる震えて失禁したりウンチを漏らしたりしていたら、相当怖かったと思ってください。

お祭りに行くなら、少しでも他の音に対しての改善がみられてからと、「ダメだったらすぐ帰ってくる」つもりで行ってあげたほうが良いかと思います。

 

ライオンの話じゃありませんが、より強い刺激で一気に慣れさせる“ショック療法”的な感じは、リスクが大きいので避けた方が良いでしょう。

細かい状態の見極め、適切なフォローが無いと、苦手なことがもっと嫌いになる可能性が高いからです。

まずは「運動」が何より大切

柴犬

otsphoto/shutterstock

 

柴犬の特長かもしれませんが、柴犬には大袈裟な子も多い気がします。ちょっとしたことで、この世の終わりのような声をあげる子もたくさんいる印象です。

 

それが、ただ単に大袈裟なリアクションなのか、本気かについても、しっかりとした見極めが必要。オーナーも、“鳴き声の大きさ”だけに惑わされないことが大切です。

 

柴犬は他の犬種に比べて全体的に神経質な傾向もあると思います。それが可愛い仕草にも繋がっていますけどね。

 

埃や蟻を凝視して追いかけるなんて他の犬種じゃなかなかしませんし、座ってジッと何かを見つめてることも、なかなか洋犬には見られない仕草。あのジッと何かを見ている時間、間(ま)になれば、だいたいの犬は臥せてしまいますから。

 

そんなことをする柴犬ですから、音に敏感になるのは当たり前と言えば当たり前かもしれません。まだパピーの柴の飼主さんはこの特長も含めて育てていってもらえたらと思います。

 

敏感、神経質なのに我慢強いところもあるので、結構ストレスやらフラストレーションが「溜まってんなー」と感じる子も多いです。

 

これは柴犬だけではなくどの犬種の犬にも言えることですが、まずは運動、食事、睡眠をしっかりととることが大切。

特に柴は、刺激が含まれている運動をしっかり毎日とること。

 

“運動>ご飯”と考えても良いくらい、本当に運動は大切です。

 

「ご飯食べないとかわいそう」と思ってしまう飼主さんは多いですが、それ以上に発散、運動できていない犬はかわいそうです。

とにかくストレス、フラストレーションは溜めないと考えて1日を過ごしてください。

 

それでも散歩に行けない日などが出てしまう飼主さんもいらっしゃると思うので、次の日で取り戻すように努めてあげましょう。特にこの相談者さんの愛柴のように若い子は尚更です。

 

怖がりな子でも元気な子でも、発散、運動が問題解決の糸口になることは多いですので、しっかりお散歩や運動をさせて毎日元気に過ごしてくださいませ。

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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