2019年11月26日34,527 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】#6 迎えた2頭目が先住犬を追いかけ回して噛むんです【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。今回のお悩みは、新しく迎えた子が先住犬に噛み付いてしまうというもの。“多頭飼いあるある”とも言えるこのお悩みですが、果たして有効な解決策とは!?

お悩み:先住犬を追いかけ回して噛みます

2ヶ月・女の子

我が家に来てから二か月ほどの柴犬なのですが、先住犬(柴犬オス4才)を追いかけ回して噛みます。先住犬はとてもおとなしい子で怒ったりせず、ただただ逃げては自分のサークルに隠れてしまいます。

噛むのは先住犬だけでなく、飼い主の私のことも興奮すると噛んでしまいます。

 

今やっている対処としては、噛んだ瞬間「痛い!」と声に出して叱っています。もちろん、噛んでストレス発散出来るようなオモチャも与えていますが、なかなか噛み癖が治りません。

 

先住犬や人間を噛まないようにさせるにはどうすれば良いですか?

よろしくお願い致します。

 

先住犬がストレスをためないよう「ひとりの時間」を作ってあげて

柴犬

MitchyPQ/shutterstock

 

今の月齢が2ヶ月なのか、家に来てから2ヶ月なのかで取り組み方が変わってきます。

 

もし成犬を迎えた場合で、お家に来てから2ヶ月ということであればトレーナーに早急に相談したほうが良いと思います。

 

多頭飼いは楽しさ倍以上増ですが、大変になるのも倍以上になる場合があります。まずは先住犬のストレス度合いをきちんとチェックしましょう。

 

体重の増減、食欲の増減、自己主張の仕方の変化など、飼い主さんにしかわからない変化もたくさんあると思います。

 

ストレス度合いが高いかなと感じているのであれば、1頭飼いだったときと同じようにひとりでゆっくりと過ごせる時間を作ってあげてください。

 

あとから迎えた子とすぐに仲良くなった場合も、後から来た子をハウスに入れるなどして少しは1頭飼いだった頃の生活に戻してあげると良いかと思います。

 

仔犬が噛むのは、大人になるために必要なこと

柴犬

Zuzule/shutterstock

 

もし月齢が2ヶ月のパピーだとしたら、この噛み癖は仕方ないところが多分にあります。

 

仔犬は噛む事でいろいろなコミュニケーションをとります。人間の赤ちゃんが手でいろいろな物を掴む事と同じだと思ってください。

 

この時期に全て噛むことを禁止してしまうと、大きくなってから口を使ってじゃれ合う加減が分からない犬になり、人や他の犬と上手に遊ぶことが出来なくなる可能性が出て来ます。

 

つまり、この子が先住犬の子を噛むのは、この子からしてみたら必要なコミュニケーション手段です

 

そのコミュニケーションに対して、先住犬がどの様に対応しようと、基本的には犬同士に任せてください。犬同士のことは犬同士に任せるのが大切です。

 

今は逃げているようですが、どこかで変わる可能性もあります。その2頭にしかわからない駆け引きもたくさんあるでしょう。

 

ケガや命に関わるような行動だけはオーナーさんが止めて、あとは先住犬のストレスに気をつけながら2頭を合わせる時間を作ってくださいませ。

 

噛まれても反応しない!スルー耐性を身につけて

柴犬

MitchyPQ/shutterstock

 

飼い主さんが噛まれたとき、まず「痛い」と言って叱るのはやめたほうがいいと思います。噛まれて痛くても、無反応でいることのほうが大切です。

 

癖になっていれば話は別ですが、噛んでもつまらなければ噛むのはやめます。

 

相談者さんがどんな感じで「痛い」と言ってるのかはわかりませんが、パピー相手に本気で怒りを爆発させて「痛い」と言っている人を僕は見たことがないので、怒りのオーラ満載で怒ってはいないと仮定して話します。

 

となると、パピーの柴犬にとって、相談者さん=“ちょっと噛むと反応してくれる楽しいおもちゃ”になっているのかもしれません。

 

「いや、だって痛いんだもん。反応するのは仕方ないでしょ」と言う飼い主さんがいますが、たとえ痛くても、パピーが相手だと我慢が必要だと思って下さい。

 

また、噛みたい欲求をおもちゃで発散させる場合は、必ずオーナーさんがおもちゃを持って遊んで下さい。「ぽいっ」と渡さず、一緒に遊びましょう。

 

ひとり遊びは、場合によっては所有欲や独占欲が変に伸びてしまったりするためです。人と遊ぶことが大好きな犬に育てることを目標に、いっぱい遊んであげてください。

 

多頭飼いは甘くない。しっかりと愛柴の「まとめ役」になろう

2頭の柴犬

leungchopan/shutterstock

 

多頭飼いの場合、オーナーさんは大きな枠組み(ルール)を作る必要があります。リーダーとして、1頭だけの時とはまったく違う、犬をまとめる感覚が必要になります。

 

ですので、1頭飼いの時の「しつけ」が上手くいってないと、2頭目は大変手を焼きます。まずは自分と犬それぞれがしっかりと信頼関係を築けるようにしてください。

 

僕が見てきた多頭飼いのケースでは、先住犬のときは1対1だったため割と信頼関係が築けている場合でも、2頭目を迎えて1対2になることで、2頭目との信頼関係が浅くなってしまっている家が多い印象です。

 

信頼関係を築くためには、散歩はとても大切な時間。

 

1頭ずつ散歩させることが大切ですので、2頭目の子もしばらくはオーナーさんと1対1での散歩を頑張ってください。

 

1頭ずつと上手に付き合えたら、2頭をまとめるのもうまくいき、多頭飼いはとても楽しくなります。

 

間違った「叱り方」が、本気で噛む犬に育ててしまう

柴犬

taa22/shutterstock

 

ご質問に「叱る」というワードが出てきますが、月齢が若すぎるため、叱ってわからせるのはまだ無理な年齢です。また、迎えて2ヶ月となると、犬と人間の間にまだしっかりとした関係もできてません。

 

大きい声を出して「叱る」「怒る」という行為は、じつは犬のしつけの中では相当に場面、場所、その犬を見極めることが大切な行為であり、また最終手段として使うものです。

 

特に子犬の頃から「叱られてる」子は変なタフさが身に付き、下手をすると反抗して本気でかむ犬に育つ場合があります。

 

特に柴犬は、そちらの道に行ってしまうと一般的な飼い主さんでは手に負えなくなりますので注意が必要です。

 

僕が見てきた「本気で噛む柴犬」は間違ったしつけが原因で、そうなってしまっています。特に、しつけをする役目の人間が、見極めが甘い状態で痛みや恐怖心を煽るようなしつけをしてしまった結果、手に負えない柴犬に育ってしまったケースが多いと言えます。

 

「しつけ」ということを、人間が再考し、何がどのように影響するのかをしっかりと考えることが、子犬を迎え入れた時にはとても大切なことです。

 

面倒臭かったり、難しかったりするかもしれませんが、その子への愛情があればできるはず。

 

今後10年以上に及ぶ犬との生活には、飼い主の存在が大きく影響することを肝に銘じてください。

 

人間の言うことなんて、聞かなくて当たり前。犬は叱らず「ありがとう」の気持ちで接して

柴犬

leungchopan/shutterstock

 

犬のトレーニングでは、けして自分の気分が晴れたり、すっきりするという理由だけで、しつけ方法を選ばないでください。

 

怒りにまかせ犬を叱り、怖い思いをさせたり、痛い思いをさせれば、その場はそれでことが収まるかもしれませんが、人と結べたはずの強い信頼関係が結べなくなります。

 

「犬に人の言うことを聞かせるべき」と考えてしまうと、犬が聞いてくれないとイライラ、聞いてくれるとスッキリします。

 

これでは本来の犬との信頼関係は結べないので、そういう「しつけ」はおすすめしません。

 

オーナーさんは「言うこと聞いてくれたらありがとう」のスタンスでいてください。犬は、人間の言うことを聞く必要なんて、本来は全くないんですから。

 

人との生活の中では、犬にストレスをかけて言うことを聞かせなきゃいけない場面も出てくるかと思います。ストレスかけるのはイヤですが、仕方ありません。

 

その場合はなおさら、こっちの言うことを聞いてくれたら「ありがとう」です。

 

子犬を迎え入れたら「もう!」ってなって当然です。でも、その気持ちのまま犬と接したり、向き合うのはやめてください。

 

イライラしても、いったん落ち着いて平常心になってから、パピーとの時間を過ごして下さいませ。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

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