2020年3月2日9,411 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】#12 病院が怖くて大暴れする元保護犬。どうすれば慣れる?【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。

 

今回のお悩みは、1年前に保護犬を迎え入れたオーナーさんからのお悩みです。

とにかく病院が嫌いで、行くたびに大暴れしてしまうそう……。すでに5歳になるというこの柴くん。病院恐怖症を克服する方法はあるのでしょうか!?

 

お悩み:病院がとにかく怖い、元保護犬。診察室に入ったとたん大暴れします…

男の子・5才

保護犬を迎え入れてもうすぐ1年。病院が怖くて困ってます。

 

診察室に入るまではおとなしくしているのですが、中に入ったとたんにそわそわ。

 

体温を計るために押さえた瞬間から大暴れをし、病院の外にまで聞こえるような大きさで悲痛な声をあげます。

 

現在、二週間に一度病院に行っているのですが、全く慣れる様子はありません。

 

うちの愛犬の負担が少しでも軽くできるように、対処方法を教えてください!!

 

苦手を克服するには「キライの核」だけ考えてはだめ

柴犬

Enna8982/shutterstock

 

保護犬を迎え入れると幼少期の細かいことがわかりませんので、実際一緒に暮らしてみてはじめて知る性格や苦手なことなどありますよね。

 

苦手なものを少なくしたり、克服するためには、“嫌なことのコア(核)”を中心に、それに関連するものも一緒に考える必要があります。

 

この子の場合は、診察がコア。とすると……

 

<診察が嫌い→病院が嫌い→病院の近くに行くのが嫌い→病院に連れていかれるから、車に乗るのが嫌い>

 

と、コアを中心に苦手なものが広がっていると考えることができます。

 

この考え方を、まずは頭に入れておいてください。

 

「おとなしい=緊張」という可能性も!

柴犬

ikate25/shutterstock

 

この子は“診察室に入るまではおとなしい”ので、おとなしさの理由を気にしてあげないといけません。

 

人は犬を見るとき、どうしても“おとなしい子=良い子”と見てしまいがちですが、おとなしいことが必ずしもよい精神状態だとは限りません。

 

“おとなしい=リラックス”であれば、理想的。

 

しかし犬は、怖くて緊張していてもおとなしくなります。

 

そこで、待合室で緊張しているかどうか観察しましょう。

 

緊張度合いを調べるために、トリーツを食べさせてみてください。

 

(ただし、そばに他の犬がいるなど、病院で無暗にトリーツを使うのは危険な場合も。獣医さんや看護士さんの許可をもらい、まわりに十分に注意してから試してください)

 

トリーツを食べるなら、緊張はMAXではないでしょう。

 

ただし中には例外もありますので、食べる、食べないだけで判断するのはNGです

 

ほかにも以下のような点を観察してみてください。

 

コマンドの効き具合がお家と同じか、もしくはそれに近い状態か?

→同じであればリラックスしている。

 

長い待ち時間の場合、どんな体勢か?

→伏せていれば、リラックスしている。

 

また、抱っこをしているなら、

犬のカラダの力の入り具合は?

→どこかに力が入っているなら、緊張度している。

 

これらの項目で総合的に判断しましょう。

 

ポイントは、普段と比べて違うかどうか

 

“普段”を作るために、日常でしっかりコマンドの練習やスキンシップをしておくことがとても大切です。

 

もし、診察室で緊張状態であれば、リラックスできるように練習を。

 

ここで、先ほどのコアの考え方の出番です。

 

病院へ入る前も緊張しているのであれば、そこでもリラックスできるように。

 

病院の近くにきただけでも緊張するようなら、そこでもリラックスできるようにと、どんどんとコアから遡って練習をします。

 

緊張する場所と緊張が見られない場所の境目をなくしていく感覚で取り組むのです。

 

もう5歳。根気よく取り組むことが大切。

柴犬

MitchyPQ/shutterstock

 

取り組み方の例としては、以下のようなことをやってみてくださいませ。

 

・長時間、緊張する場所にいてトリーツを与える。

・オーナーも共にリラックスする。

・もし可能であれば遊ぶこともする。

 

このトレーニングを経て、全ての場所、場面で緊張が解けてから診察に入ることができるのがベストです。

 

獣医さんの協力も必要ですし、時間もかかります。

 

緊張の見極めもありますのでとても難しいと思いますが、がんばってください。

 

また、病院には2週間に一度行っているそうですが、5歳で苦手なものを克服しようとしたら、正直そのペースでは足りないと思います。

 

上に書いた取り組みに“長時間”と書きましたが、これは本当に長い時間だと考えてください。

 

よく、しつけを指南する本やwebに「〜なるまで」や「〜なったら」とさらっと書いてありますが、そこに行けるまでは、字面からはイメージできないほど相当に長い時間がかかります。

 

特に苦手な何かに慣れさせる、リラックスさせるとなると“何日間も連続で”取り組まないといけない場合も多いです。

 

病院で触られるのが怖いなら、家での接し方を見直して

柴犬

MitchyPQ/shutterstock

 

診察室では、「体温を計るために押さえた瞬間から大暴れ」とありますが、お家での足拭きや爪切り、シャンプーやブラッシングなどのケアをしているときはどうですか?

 

もし、そこでも唸ったり噛み付いたりしてきているのであれば、そこから直していく必要があります。

 

子犬でしたら、診察やトリミングのことも視野に入れてタッチやケアの練習も含めたトレーニングをしていけるのですが、この子の場合は4歳と大人になってから迎え入れていますので、問題の解決には根気よく取り組まないといけないかもしれません。

 

お家でのことと病院でのことはつながってない様に感じますが、普段からの接し方で変わります。

 

オーナーさんが全く関係ないと思っているところに原因が転がってる場合もあります。

 

お散歩の仕方やお家での接し方、ハウスができる、できないなどなど……じつに色々なことが、問題行動へと繋がっています。

 

もし病院以外の行動にも、少しでも問題を感じているのであれば、その問題にもきちんと向き合っていく必要があると思います。

 

病院を変えることで解決することも

柴犬

MitchyPQ/shutterstock

 

また、過去にあった例として、動物病院を変えたら病院が大丈夫になった子もいます。

 

獣医師との相性もありますので、動物病院を変えてみるのも選択肢の1つとして考えてもいいかもしれません。

 

ただし、最初はダメでも慣れさせることに一生懸命に取り組んでくれる獣医師や動物病院であれば通い続けるのも大事です。

 

病院に何も用事がなくても、寄っておやつをもらうことも、好きになる流れの1つです。

 

もし、診察が大丈夫になるように協力してくれるいい獣医さんと巡り会えたら、オーナーさんもしっかりと日頃の練習や接し方を学んで、獣医師さんの協力が無駄にならないように努力することも必要です。

 

諦めるしかないのか、自分と自分の犬を導いてくれるトレーナーさんを探すのか、それとも獣医さんを変えるのか。

 

いずれにしてもオーナーさんの労力と時間はとても必要になります。

 

一番大切なのは自分(オーナーさん)が学んで、しっかり犬を導いてあげることです。

 

自分の犬について、犬全般についてはもちろんですが、動物病院やトレーナーなど含めた犬を取り巻く環境を整えることも、オーナーさんが学んでいかなければならないことだと思います。

 

犬が歳を重ねれば、病院に行く回数は自ずと増えます。

 

もし本気で暴れることを直したいのなら、問題を軽く見ず、トレーナーの協力のもと時間をかけてでも取り組んでください。

 

あ、ちなみに大声をあげるのは柴犬特有と言えば特有のものなので、声自体を小さくすることは不可能かなと思います。

 

あれはあれで「柴犬だな〜」と思うところです。ちょっと大げさなんですよ。

 

もし愛柴の声の大きさで、「すごく嫌なんだ」と思っている飼い主さんがいましたら、大げさなんだということも踏まえてみてあげてください。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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