2020年8月10日6,390 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】♯23人間の子供が怖い!すれ違うだけでパニックに【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。

今回のお悩みは、小さな子供がパニックになるほど苦手というもの。いわゆるトラウマからくる問題行動は、どのように向き合えばよいのでしょうか。

今月のお悩み:小さい子がいるとパニックに!

1歳・男の子

小さい子供が苦手で困っています。

 

元々知らない人は子供・大人関係なく苦手だったのですが、相手が近付いてこなければ、すれ違ったり、同じ公園内で過ごしたりすることは出来ました。

 

しかし、1歳3ヶ月の時に私の実家に帰省し小学生や幼児に初めて会った際、普段聞いたことがない子供のはしゃぎ声や足音、オモチャの音などに怯えてしまい、キャリーの中でブルブルと震えが止まらず。

 

それがトラウマになってしまったようです。

 

それ以来、遠くで子供の声がするだけで吠えたり、すれ違うとパニックに。

 

首が締まってゲホゲホ言うほど引っ張って、子供から逃げようとします。

 

どうにか克服する方法はないでしょうか?

 

トラウマの克服は相当な根気と忍耐が必要

柴犬

UvGroup/shutterstock

 

小さい子供が苦手な柴犬は多いですね。

 

<普段聞いたことがない子供のはしゃぎ声や足音、オモチャの音などに〜>とありますが、何かに慣らそうとする場合、慣らしたいものをたくさん体験させることを、子犬の頃からします。

 

なぜなら、成犬になってからですと対する犬や人に怪我をさせたり、最悪の場合、命に関わることになってしまう可能性があるためです。

 

この子が経験したのは1歳過ぎ。本気を出せば相手を大怪我させることもある成犬です。

 

そしてこの場合は、小さい子供が対象ですので、怪我をさせるリスクがグッと上がります。

 

そして、1歳を過ぎた“子供が苦手な犬”と、小さい子供とを直接合わせて慣れさせるのは、ほぼ不可能でしょう。

 

元々苦手な状態だったのに、1歳3ヶ月の実家での経験で、ググッとネガティブな方に確定されてしまったと思います。

 

人間も、トラウマがあれば克服には根気と忍耐が相当に必要ですよね。また程度によっては改善されない場合もあります。

 

犬の場合も同じ。

 

もし本気で克服してあげたいのなら、少しでもトラウマを軽くしてあげようとする努力と忍耐力、知識が必要です。

 

そしてその忍耐を支えてくれる犬への本当の愛情がなくては、とても難しいでしょう。

 

「ちょっとやってみよう」くらいの気持ちでは、効果はほぼ出ません。

 

綿密なプランが必要ですし、期間も何年もかかるかもしれません。

 

それでも模索しながら、トラウマからの脱却トレーニングを続ける必要があります。

 

そのくらいトラウマの克服は難しいということです。

 

トラウマ克服への第一歩。まずはじっくり観察して

柴犬

by gretel/shutterstock

 

トラウマ克服に取り組むにあたり、もう一度よくあなたの愛柴を観察、分析してみてください。

 

・他に怖がっているものがあるか?

・怖がっているときに攻撃的になるか?

・逃走するか?

 

また、パニックの度合いも観察してください。

 

<首が締まってゲホゲホ>とありますが、そこではパニックの度合いは図れません。

 

パニックになった時、おしっこをちびったり、ウンチをちびるかどうかや、体の強張り具合などをこと細かに観察しましょう。

 

すでにパニック反応が繰り返されてる場合、癖になっていることも。

 

つまり、大して怖くもないけど吠えているなど、気持ちが入ってない感じの場合もあります。

 

日々しっかり、パニック度合いや態度を観察することが大切です。

 

このとき、「怖いのかな」など犬の気持ちを推測する必要はありません。あくまで、行動だけに目を向けて。

 

また、犬の行動学や知識、経験などと正しく照らし合わせるため、プロの方に頼るのも良いでしょう。

 

これ以上、パニックが悪化しないために

柴犬

UvGroup/shutterstock

 

実際に触れてみないと、僕がこの子をトラウマから開放することは不可能。

 

ですが、これ以上悪くならないためのアドバイスはすることができます。

 

■慣れさせようとして無理に子供に会わせない。

追い込まれた犬は本気で反撃に出ます。

 

大事故につながりますので、決してノープランでの接触や接近は避けてください。

 

■子供の声などがする動画を探し、音量を少し大きめでかける。

愛柴に音声を聞かせるために、スマートフォンやタブレットを犬の近くにわざわざ持っていったりしなくて大丈夫です。

 

自然とどこかから聞こえてくる感じにしてください。

 

もし、動画の声に震えるようであれば“そのくらいでもダメ”ということなので、トラウマとしては重度かもしれません。

 

しかし人間社会で生活している以上、子供の声は避けては通れないもの。

 

なので、がんばって慣らしていく方向で考えるべき。

 

つまり、音声を聞かせ続けます。

 

音の大きさや種類を変更して、犬が過度の緊張にならない程度、(難しいですが)ちょっと警戒しているかな程度から始めましょう。

 

その状態でいつも通りの生活を送ります。

 

もしかするとストレスから下痢をするかもしれませんが、下痢の程度がひどかったり、またどんどん酷くなる傾向でなれば続行します。

 

こうして、子供の声の音声が常に周りにある状態でも、犬がなんともなくなってきたら聞かせるのを止めます。

 

ただ、本当の子供の声とスマホから流れる音声では、全然違う風に聞こえているかもしれません。

 

さらに、過去の経験から憶測すると、“子供の姿が見えて”音がすると、怖いと感じるのかもしれません。

 

それでも、どのくらいで緊張するのか、怖がっているのかを知るには、一度試して見る価値はあると思います。

 

基本のトレーニングで愛柴に自信をつけてあげて

柴犬

chuck hsu/shutterstock

 

“慣れる”以外のアプローチも必要です。

 

まずは、基本的なトレーニングをしっかりと。

 

オーナーさんについて歩くこと、お座り、伏せ、待て、おいで。この5つを楽しくできるようにトレーニングしてください。

 

そして、生活の中でいつも使うようにしてください。

 

無理矢理に服従させるのではなく、オーナーさんとこれをやっていると“いつも通り”という、精神的な支柱を作ってあげるためです。

 

また、トレーニングの方法にもよりますが、トレーニングに成功することで犬に自信が芽生えます。

 

自信がつくと、嫌なことがあっても我慢したり耐えたりが、少しずつできるようになります。

 

我慢している間はパニックになりません。

 

ですので、我慢している間にオーナーさん主導で、子供のいない道に進路を変えるなど、パニックにならずに避ける動作ができるようになります。

 

トレーニングをすると、人と犬との信頼関係が築ける

柴犬

August_0802/shutterstock

 

トレーニングをすることで、人から犬へ、何かを伝えるパイプもできてきます。

 

オーナーさんは、犬への接し方が上手になります。

 

犬への接し方が下手だと、いざという時には全く何も伝わらないばかりか、真逆に伝わってしまう場合もあるので、とても大切なことです。

 

そしてなにより、トレーニングでは何かが“できるようになる過程”にこそ、とても大切なものが含まれています。

 

おやつが無くても犬がオーナーさんと結ばれる感覚。信頼関係。絆。

 

それを人が、そして犬も知ることができれば、取り組む課題の程度や大小も正確に見極めることができるようになるでしょう。

 

問題行動を解決したいなら、まずは人間が成長する。それが犬を正しく導き、幸せにする

柴犬

oana2711/shutterstock_

 

問題行動に向き合うときには、以下の3つを個別に見ていきます。

 

(1)犬のみ

(2)人のみ

(3)犬と人の関係

 

たとえば

 

・犬に問題はないが、オーナーに問題があり、犬がオーナーのことを信じ切れていない。

 

・犬ももう少しいろんな経験が必要。だけどオーナーも学びと経験が必要。関係性はまだまだ浅い。

 

など。

 

たとえ今がどのような状態でも、問題を改善していくには人の成長が不可欠です

 

まずは人から。人が犬を導き、精神的に引っ張っぱり、開放してあげる。

 

その流れを作ることができれば、その犬は多少怖いものや苦手なものがあっても幸せに暮らせます。

 

ぜひ今、悩んでいることにいろんな方向から真剣に向き合って、あなたの愛柴を少しでも楽にしてあげてくださいませ。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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