2020年10月1日10,804 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】♯26 信頼関係が崩壊!? あることがキッカケで私のコマンドを無視するように…【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。今回のお悩みは、以前はできていた呼び戻しができなくなってしまった…というお悩み。相談者さんは、あることがキッカケで愛柴の信頼を失ってしまったのが原因ではないかと考えていますが……。果たしてその原因と解決策とは?

今月のお悩み:呼び戻しやアイコンタクト…できていたことをしなくなりました。

1歳・男の子

 

6ヶ月の時から週1でしつけ教室に通っています。

 

家庭での世話、しつけは私がメインでしていますが、一度はできていたことができなくなっています。

というか、“できるのにしない”という状況です。  

 

月齢9ヶ月のころした去勢手術を境に、「病院に連れ込まれた」という不信感からか、私の呼び戻しやアイコンタクトに知らんぷりするようになりました。

 

すでに去勢手術から3ヶ月が経っていますが、不信感が消えないようで、夫の呼び戻しには喜んで戻ってくるのに、私だと成功確率が20%くらいです。

 

シットやダウン、ステイも以前はしっかりできていたのですが、今は渋々です。

 

呼んだとき最高の笑顔で走り寄ってきてくれたときの信頼関係を取り戻すことができるのでしょうか。

 

「しつけ」と「トレーニング」は別。混同してはダメ。

柴犬

Happy monkey/shutterstock

 

できていたことが、できなくなる。今回のお悩みはよくあることです。

 

「家庭での世話、しつけは私がメインでしています」とありますが、“しつけ”と“トレーニング”は別のもの。

 

できなくなったという呼び戻しや、シット、ダウンは、しつけではなくトレーニングになります。

 

そこで今回は、“しつけ”と“トレーニング”を分けてお話しながら、呼び戻しができなくなった原因を探っていきたいと思います。

 

まず最初に、しつけとはなにか。それは、行儀や素行などを教育することです。

 

日々の生活に気をつけ、上手に環境を整えて積み重ねていくもので、焦っても成果がすぐに出るものではありません。

 

一方トレーニングとは、できることを増やしていくこと。

 

例えばシット(お座り)、ダウン(伏せ)など。もちろん、相談者さんが書いている呼び戻しやアイコンタクトもトレーニングです。

 

トレーニングは、教えればそう時間がかからずにできるようになるもので、みなさんご存知の通り、トリーツを使ったお座りやお手などの芸など簡単なものは、すぐにでもできるようになりますね。

 

相談のメールを読むと、トレーニンングは十分にしていらっしゃいます。

 

しかし、上手くいかない。そして旦那さんの成功率のほうが高い。「病院に連れて行ったせいかも?」という思い当たる理由もある。

 

この点を踏まえると、呼び戻しができなくなった原因は、旦那さんがしつけをせずに、たまにトレーニングだけをしているため、 “いいとこどり”をしているからかもしれません。

 

一緒に暮らす=「しつけ」をしながら過ごすこと

柴犬

Kate Camera/shutterstock

 

トレーニングにおいては“快刺激”が大切です。

 

快刺激とは、簡単に言うと「好きー!」とか「たのしい!」とか「気持ちいい!」と、犬が感じること。

 

よく、犬が言うことを聞いてくれないと悩むオーナーさんから「犬になめられている」とか「私は嫌われている」なんて声を聞きますが、そんなことを気にするよりはまず「自分は犬が楽しい、気持ちいいと思うことを与えられているか」をしっかり確認しましょう。

 

もしトレーニングで楽しさを十分に与えられていたとしても、一緒に暮らしていると“楽しい”以外のこともたくさん出てきます。

 

「家庭での世話、しつけは私がメインでしています」とあるので、おそらく旦那さんが外に働きに出ていて、奥さんの方が犬と一緒にいる時間がずっと長いのではないでしょうか?

 

そうあれば、旦那さんは犬にとって、“たまに楽しい刺激をくれる人”。犬と接する時間が短いので、愛柴にとって、楽しいこと以外のことは起こりません。

 

つまりこれが、“いいとこ取り”になっている状態です。

 

だから旦那さんの呼び戻しには喜んで応えるのかもしれません。

 

ですが、犬との信頼関係は、長い時間を共にしている人間のほうが深く太いものが出来上がります。

 

その代わりに、一緒にいる間は、犬に飽きられないための接し方、頼れる人になるための接し方をする必要が出てきます。

 

これが、しつけをする、ということなのです。

 

トレーニング以外の時間は、家の中でもメリハリのある生活を

柴犬

taa22/shutterstock

 

しつけとは、愛柴の安全、安心を第一に考えたルールを家の中でしっかり作り、メリハリのある生活をさせること。

 

生活にケジメがなく、甘やかされてワガママ放題、好き放題している子、つまりしつけができていない子は、トレーニングも上手くいきません。

 

犬にとってはいつも自分の思い通りになっているわけですから、自分のタイミングで動いてはいけない「おいで」なんて言っても聞けるわけがないのです。

 

たとえおやつを使っても、その時におやつ以外に興味があることがあれば、おやつは役に立たないでしょう。

 

メリハリやケジメをつけて過ごすためには、適度な距離感がポイントになってきます。

 

「ハウス」を上手に使えば、少しケジメがつき、生活にメリハリが出てきます。

 

トレーニングが上手くいかないと感じているオーナーさんで、普段はハウスを使っていない方がいればぜひ、オーナーさんが家にいるときもハウスをさせることをしてみましょう。

 

もし、ハウスができない場合は、ハウスの練習から始めてくださいね。

 

そしてハウスから出したときは、ダラダラではなく思いっきり遊んであげください。

 

遊ぶ一環としてトレーニングをするのもいいですが、必ず犬が楽しいと感じられるものにしてくださいませ。

 

待てができるのなら、オーナーさんが食事をしている際、一定の距離のところに“待て”させておくなど、ちょっとした我慢をさせてみましょう。

 

「よし」と開放したときに、犬にとってのオーナーさんの印象が変わります。

 

相談者さんができなくなったと悩む「おいで」は、コマンドを出した人との関係性が強く出るもの。

 

トレーニング以外でのメリハリのある生活でオーナーさんの印象を変え、トレーニングで楽しいをたくさん感じてもらえるようにすれば、自ずと「おいで」で愛柴が駆け寄ってくるようになると思います。

 

信頼関係を築くには、トレーニングをしていない時間の過ごし方が重要

柴犬

Kate Camera/shutterstock

 

このように、しつけとトレーニングはとても密接に繋がっているものです。

 

どちらかだけ一生懸命やっても上手くいかなくなる場合も多く、両方とも上手にバランスよくできているかが大切。

 

今回のご相談は、トレーニングは十分ですが、トレーニングをしていないときのどこかに、呼び戻しができなくなった理由があるんだろうと思います。

 

「おいで」は、呼ばれる前にしていた行動を全てやめて、オーナーさんのもとに来るということ。信頼関係が強くないとできません。

 

呼び戻しができるようになるために、これまで「オーナーさんのところに行ったら良いことがある!」と思わせる練習を繰り返し行ってきたと思います。

 

しかし今は、呼ばれた際に「あの人はニガテだな」とか「あの人に呼ばれたら、なんか嫌なことされるかもな〜」などの疑問・疑念が先に立ってしまっているかもしれません。

 

そんな時は、呼び戻しは一時的に封印して、今やっているトレーニング以外で、オーナーさんの印象を変えるようなトレーニングを行いましょう。

 

犬が楽しいと感じるトレーニングを、しつけ教室のトレーナーさんに教えてもらってください。

 

トレーニングは、息抜きや見方を変えるのも大切です。

 

犬が言うことを聞いてくれる時というのは、まずは犬が「楽しい!」「嬉しい!」「気持ちいい!」と感じていることが大前提ということを忘れずに、頭と気持ちをフル回転して楽しく取り組みましょう!

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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