2020年12月4日7,316 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】♯31 成犬になったら甥っ子に唸る、吠える、噛みつこうとするように…【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。

今回は、遊びに来てくれる幼い甥っ子たちに、愛柴が唸る、吠える、噛みつこうとするなどの問題行動をするようになったというオーナーさんからのお悩みです。子供が苦手な柴犬は多いもの。同じような悩みを抱えるオーナーさんはぜひ参考にしてみてください。

今回のお悩み:1歳を過ぎた頃から甥っ子に唸る、吠える、噛みつこうとするように…

1歳・男の子

小学校2年と5歳男児の甥っ子が毎週末のように遊びにきます。

 

うちの犬は子供が苦手ではありますが、飼い始めた時からずっと一緒にいるので、今までは何事も無く生活出来ていました。

 

しかしここ数ヶ月、我が家に来れない時期があったこともあり、1ヶ月ほど前から子供が犬の近くに行ったり、子供がオーナー(私)の隣にいると唸る吠える、噛みつこうとするようになりました。

 

子供達が大きな音を立てたり大騒ぎをするので、かなり苦手になったようです。

 

子供をなるべく近づけない、子供達だけにしない、犬をケージに入れるなどはしていますが、居間で一緒にいることも多く、子供達はそれでも犬に近づこうとします。

 

このままではいつか本気噛みしてしまいそうで悩んでいます。

 

お互い近づけさせないだけの対処しか出来ないでしょうか? 子供達にも何かやれることはありませんか?

 

犬の精神的成長はあっという間。いつまでも子犬のころと同じだと思ってはダメ

柴犬

Akbudak Rimma/shutterstoc

 

パピーのころは大丈夫だったが、1歳を過ぎたことから唸る吠える、噛みつこうとする……。

 

こういう相談は、成長期の犬の勢い、成長スピードにオーナーさんが追い抜かれてしまったと僕は捉えています。

 

犬は2歳〜3歳くらいまでは精神的な成長をします。

 

特に1歳ちょっと過ぎくらいまでは、心の変化はとても大きいもの。

 

1歳になるまでのほんの数ヶ月は、オーナーさんが思っているよりもずっと、成長の幅が大きい時期なんです。

 

そんな犬が大人へと成長する時期と、甥っ子さん達が遊びに来られなかった時期とが重なってしまったのも、この状況を作ったひとつの原因かと思いますが、会っていなかったことの影響はそれほど大きくないでしょう

 

ずっと一緒に暮らしていても唸られたり、噛まれたりすることも多くあります。

 

ただ一緒にいるだけで、犬に噛まれなくなるわけではありません。

 

細かいところに気をつけてコミュニケーションを取ったり、犬の変化を敏感に察知してあげることが必要な柴犬がたくさんいます。

 

その子の生まれつきの性格、オーナーさんの性格や犬への知識、経験などによっても、やるべきこと、気をつけるべきことが大きく違ってきます。

 

もちろん、コミュニケーション方法に気をつけなくても全然大丈夫な犬もいますし、トレーナーさんに頼んだり、しつけ教室に通わなくても自然と出来ているオーナーさんもいますが、それはそれ。

 

いまあなたの目の前にいる柴犬が、今までの接し方、暮らし方、しつけ方の答えです。

 

「あの家の犬は」「あのお家は」などと他の犬と比べず、まずは今の愛柴を受け入れ、いつかお互いストレス無く好きなように暮らせるよう、さまざまなことを考えながら、気をつけながら接しましょう。

 

柴犬は「オーナーさん1人だけがいればいい」子が多い。オーナーさん以外の人間には警戒心が高くなる

柴犬

MitchyPQ/shutterstock

 

子供が近くにいくと唸る、吠えるのは、犬が甥っ子さんを嫌いになってしまったからでしょう。

 

柴犬が大きい音を立てる存在を嫌うのは珍しいことではありません。

 

ポイントはこの「嫌いになる」という気持ちの流れを把握すること。

 

子供がオーナーさんの隣に居ると唸ったり噛みつきそうになるというこの行動に、「嫌いになる」要因の一つが隠れていると思います。

 

一緒に暮らしていくうち、犬はオーナーさんとの“群れ”の感覚を強めます。これは、犬に必ず芽生える感覚。

 

そして野生では、自分の群れと他の群れが仲良く過ごすことはありません。つまり、“甥っ子たち”という他の群れと仲良くすることは、本能的に難しいことなのです。

 

さらに柴犬という犬種は基本、自分の生活に最低限のものだけを選択する癖があります。

 

ですので、「オーナーさん1人がいればいい!」となりがちです。

 

そのような心境なのに、大きい音を出す嫌な存在がテリトリーに入ってくる。

 

しかも自分の群れの一員・オーナーさんに近づこうとする。

 

だから警戒、威嚇の流れが出るのです。

 

このような子の場合、オーナーさんがそばにいないときや、自分のテリトリー外にいるときは唸ったり、吠えたりといった威嚇行動を取らない子が多いものです。

 

こうなってしまった根本的な原因としては

 

・4ヶ月齢までの社会化期に適切な経験をさせていない

・日頃の生活の中でのオーナーさんとの心の距離感が間違っている

・犬の成長に合わせてケジメやメリハリのついた生活をさせていないため、全体的な生活バランスが崩れている

 

などが考えられます。

 

運動、食事、睡眠。この3つが満たされていないと問題行動が出やすい。

柴犬

UvGroup/shutterstock

 

犬の成長へ大きな影響を与えるものが、時間印象です。

 

例えば社会化期に「いろんなことに慣れさせましょう」や「パピーパーティーに行きましょう」などと言われますが、1〜2回やったくらいでは全然変わらない子もいます。

 

むしろ、そのときの印象が悪ければ、苦手になったり怖くなったりするもの。

 

悪い印象ができてしまった場合、良い印象を与えることで改善を試みますが、どのくらいの長さや回数で改善するかは、犬の性格、月齢、印象の深さによって全く変わってきます。

 

また、この短絡的な方法では、トラウマを解決できない場合の方が多いこともご了承ください。

 

それでも今の状況を少しでも改善したいなら、運動、食事、睡眠。まずはこの3つを必要最低限満たしましょう。

 

吠える、唸る、噛みつきが出る子は、運動・発散が足りていないケースが多いためです。

 

また、甥っ子さんたちに問題行動を取ったときは、愛柴を怒って静止させるのではなく、アイコンタクトの練習やお座り、伏せ、待て、おいでの練習をたくさんしましょう。

 

コマンドがしっかり入るようになれば、犬が感情のままに行動することも少なくなってきます。

 

犬も人も同じ。嫌なことをされたら怒って当然

柴犬

UvGroup/shutterstock

 

子供達にも何かやれることはありませんか?」とありますが、甥っ子さんがなにかをして関係を改善することは難しいでしょう。

 

苦手な相手からは、基本的に何をされても嫌なものです。

 

愛柴の近くで騒いでもいいですが、これ以上、お子さん達のことが苦手にならないよう、騒ぐときは愛柴を必ずケージの中に入れておくようにしてください。

 

またお子さんたちには、犬はかわいいだけ、触って撫でるだけの“わんちゃん”ではないこと。 うるさいことが嫌いなこと、嫌なことをされたら怒るのが当然だということを、どうか教えてあげてくださいね。

 

そして、それでも犬はとても大切で可愛いくて、人間の方から嫌いになることは決してしちゃいけないことを伝えてください。

 

犬のせいで大きな事故や怪我をすると、そんなふうに思うことも難しくなるので、愛柴と接するときは少し慎重に見てあげて、一歩ずつ改善していく感じで取り組んでください。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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