2021年6月8日6,022 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】#40 老化のせい?13歳でコマンドが入らないように【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。今回は老化で耳が遠くなったせいなのか、13歳を過ぎてから「待て」や「お座り」などのコマンドが出来なくなったというお悩みです。肉体的な衰えはどの柴犬にもやってくること。そのときに備え、若いうちからやっておくべきこともお伝えしていますので、若柴のオーナーさんもぜひ一読を!

今回のお悩み:老化が原因か、13歳頃から「待て」や「お座り」などが出来なくなりました。

14歳・女の子

耳が聞こえにくくなったり目が見えにくくなったせいなのか、13歳を過ぎたあたりから「待て」や「お座り」などのコマンドが出来なくなりました。

 

再び出来るようになる、何か有効なトレーニング方法はないでしょうか。

 

『ハンドシグナル』のすすめ

柴犬

cynoclub/shutterstock

 

老いによって、それまでできていたことができなくなると、ちょっと悲しい気持ちになりますよね。

 

でも犬は自分が可哀想だなんて思っていません。ですので、その子ができることの範囲内で楽しく暮らしていけるよう、オーナーさんが工夫してあげてください。

 

そのために役立つのが、ハンドシグナル。

 

犬は視覚より嗅覚が優れているとよく言われますが、実は嗅覚の使い方を知らない子が多いのです(使い方を教えると嗅覚の能力が発揮できるようになります)。

 

犬が物事を判断するのに、恐らくかなり優先的に使っているのが“視覚”。

 

そこで、コマンドを教えるとき、手の動作(ハンドシグナル)をつけて教えていくと、声だけで教える場合よりも学習が早くなります。

 

例えば「伏せ」では、手の平を上から下に動かす、「待て」は手をパーにして、手のひらを犬に見せるなど、声だけでなく手の動作もつけてコマンドを学習させましょう。

 

「体のむきや動き」も大切ですよ。それも視覚に入っていますからね。

 

視覚、聴覚が衰えた犬は「触覚」を使う手段も

柴犬

leungchopan/shutterstock

 

犬を観察していると、見えない場合は「聴覚」に集中します。

 

見えない、かつ聞こえない場合は「嗅覚」に集中します。

 

しかし犬におすわりや伏せなどの動きを覚えさせるとき、意図せず嗅覚に訴えかけていることもあります。

 

たとえばごはんやトリーツのニオイなんかがそうですね。

 

もしかすると「お座り」が聞こえなくても、ごはんのニオイを嗅げば座るかもしれません。

 

この子は視覚も聴覚も今は衰えていますので、ニオイをキッカケに「触覚」を使ってお座りを覚えさせる方法を試してみてください。

 

(1)ごはんのニオイをさせる。

(2)腰あたりを軽く触って座ったら、ごはんをあげる。

 

これで、視覚も聴覚も衰えた犬に「お座り」を教えることは可能です。

 

目の見えていた頃や、耳の聞こえていた頃の様にできるかどうかはわかりませんが、確実に覚えてくれます。

 

若くして視覚や聴覚を無くした子には、このように触ったり、犬が怖がらない程度の「振動を起こす」ことで導いてあげる場合があります。

 

しかし、とてもセンシティブなトレーニングになる場合がありますので、プロの方と一緒に教えていけると良いでしょう。

 

ただしこの方法は、視覚・聴覚以外が健康であることが条件。

 

老いとともに腰も弱ってきているなら、強く押すと痛みが走るかもしれません。

 

強く押さなくても、慢性的に腰に違和感を感じていると、触るのを嫌がられるかもしれません。

 

痛がるそぶりをするようなら、無理にお座りさせるのはやめましょう。

 

しつけよりもまずは健康第一に

柴犬

Callisu/shutterstock

 

相談者さんはシニアになってもお座りや待てをさせたいようですが、僕は老柴にそんなことをさせなくてもいいのでは、と思います。

 

もし、犬との生活の質を「人の言うことを聞く」ことに重点を置いていているのであれば、その考え方は疑問です。

 

なぜなら、犬の年齢と共に犬との暮らし方は変えていってあげるべきだと思うから。

 

若い頃なら、お散歩やご飯の時間をずらして生活にある程度緩急を付け、多様なメンタリティーを育ててあげることが大切です。

 

その理由は、旅行や災害、入院など、いつ起こりうるかもしれない不規則な事態に出くわしても、犬がストレスを抱えないようにしてあげるため。

 

しかしシニアになってきたら、逆に規則正しい生活を送ることをおすすめします。

 

気持ちや身体の準備ができている安定した生活は、身体の負担を減らしてくれます。

 

また、シニアではなくてもお座りや伏せなどは体の調子によってはできなくなる時もあるからです。

 

その時は無理をしないことが大切。しつけは健康の上にこそ成り立つものです。

 

犬が歳をとってからは、こちらからの要求はあまり出さず、その子の流れを大事にして一緒に暮らしていって欲しいと思います。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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