2021年11月11日5,918 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】#49 窓の外を散歩する犬に向かって吠えるのを止めさせたい【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。今回は、窓の外を通る特定の犬に吠えるのをなんとかしたいというもの。気管虚脱の病気を持っているそうなので、問題は切実ですが、果たして解決策はあるのでしょうか。

今回のお悩み:窓の外を歩く犬に向かって吠えるのをやめさせたい

6歳・女の子

気管虚脱の病気を持っていてなるべく吠えさせたくないのですが、窓の外を散歩する苦手な犬に向かって吠えます。

 

景色を見せないようにしたほうが良いでしょうか。

 

健康を第一に考え、外は見せないで

柴犬

MilaVista/Shutterstock

 

結論から言いますと、今は外を見せないようにしましょう。トレーニングより、まずは健康第一です。

 

今回のケースのように持病がある場合、環境が許されるのであれば吠える原因を避けてあげることが一番だと思います。

 

しかし窓の外を見せないようにするために、けして犬の生活の質を低下させたり、無理をさせてストレスをかけないこと。

 

ひとつの部屋に隔離したり、ハウスに入れっぱなしにするなどは絶対にしないでください。

 

またご質問の文章ですと、ある特定の犬にだけ吠えるということ。

 

であれば、その子の飼い主さんに事情を話して散歩コースを変えてもらうなどして、その犬を避けられるのであれば避けてあげてください。

 

ちなみに特定の犬がダメな場合、吠えつきに限らずどんな問題も解決は難しいです。ですので、特定の子に吠えなくなるようなトレーニングを頑張るより、こういう場合は避けるのが一番。

 

人間にもどうしても好き嫌いがあるように、犬にだって好き嫌いはあります。嫌いな犬と同居している場合以外は、関係の改善を試みるのはほぼ不可能と言えるでしょう。

 

景色を見せないことで犬のQOLは下がるのか?

柴犬

katsunori/Shutterstock

 

では、柴犬に景色を見させないことが生活の質を低下させるかどうかについて考えてみたいと思います。

 

外に対して敵対意識を持っている子、つまり番犬のような感じでいる子にとっては、外が見られないのはストレスになると思います。

 

しかし、犬が外を見ながら行きたそうな素振りで興奮している場合、外に行けないストレスがかかっています。

 

つまり、外に対して過度に反応を示す子の場合、外を見せても見せなくても、どちらにしてもストレスの要因になっている可能性があるでしょう。

 

尻尾を振る程度なら、外を見ていてもいいかなと思います。日向ぼっこが好きな子も多いですしね。

 

外に対して吠える原因は「元々の性格」や「社会化不足」、「飼い主との関係が悪い」など

柴犬

yuzu/Shutterstock

 

ではなぜ、外に吠えてしまうのでしょうか。

 

犬そのものにある大きな要因としては、神経質だったり臆病だったりといった性格、社会化不足です。

 

柴犬の場合、日本でずっと番犬として生きてきたので、元々の性質も大きな要因でしょう。

 

そして環境要因としてあげられるのが、人や犬が通る場所。ひっきりなしに人通りがある場所では、それに慣れてしまって吠えない子がほとんどです。

 

また飼い方にも要因があります。家の中で好き放題にさせていたり、飼い主さんとの関係が悪い、浅い、吠えるとわかっているのに対処や止めるための練習をしていないなどがあげられます。

 

外に吠えない子にするためには飼い主さんとのよい信頼関係を構築する

柴犬

leungchopan/Shutterstock

 

外に過剰に反応しないようにするためには、やるべきことがたくさんあります。

 

子犬なら社会化を性格、月齢に応じてしっかり行っていくこと。家に対するテリトリーの意識を軽くするため“飼い主がいるから安心”と犬が思えるように関係性を築いていくこと。

 

それでも吠えてしまった時のために基本的なアイコンタクト、お座り、伏せ、待て、おいでなどを練習しておくこと。

 

これらを行なっていれば大抵のことはクリアできます。なぜなら、大概は社会化不足とコマンドの練習不足が原因だからです。

 

性格は授かったものですので変えることはできません。しかし、たとえ子犬でも“臆病な”とか“陽気で物怖じしない”など、ある程度の傾向が分かるものです。

 

その傾向に合わせて社会化を進めていったり、環境を作っていけば、極端な子にはなりません。

 

しかし、その社会化の時期を逃してしまっている場合は、これから飼い主さんとの関係を改善し、環境を整えることで変化をつけていくためのトレーニングをします。

 

飼い主さんを信頼しているか、気持ちの良い上下関係か、楽しい相手なのか、怖い相手なのか。そういうところ全部引っくるめ、関係性をきちんと構築するのです。

 

関係性ができていてコマンドがしっかり入っていれば、外に吠えた時も愛柴の名前を呼んで呼び戻しをするだけで済みます。

 

コマンドが効かないようであれば、関係性を見直したり、コマンドの練習を増やしてください。

 

それでも改善しないなら「仕方ない」と結論付け、最終手段として環境を整えたり、要因となっているものを避けます。

 

トレーニングは何歳からでも遅くない

柴犬

Sam Walsh/Shutterstock

コマンドの練習は何歳からでも取り組めます。また、犬を蔑ろにしないトレーニングをしていくことで、犬との心の距離が近くなったり、安心してくれたり、仲が深まります。

 

問題が起きた時に使えるコマンドを日頃からしっかりと養っていくことで、いざという時に、犬の命すら守れることがあります。

 

特に柴犬の場合、力ずくでは問題行動を解決することはできませんので、無理やり何かをやめさせるのはやめましょう。

 

抱っこも力づくに入ります。抱っこで解決することは一つもないと覚えておいてください。

 

トレーニングしてきたことが全てです。ぜひ日頃の練習と発散をしっかりと行なってください。努力は裏切りません。

 

コマンドができると、犬のストレスを減らすことにもなりますよ。問題が有る無しに関わらず、ぜひしっかりトレーニングに取り組んでもらえたらと思います。

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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