2021年12月6日6,897 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】#51 他の柴犬に噛まれて以来、犬が苦手に…。どうしたらまた他の子と仲良く遊べる?【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。今回のお悩みは、オフ会で他の柴犬に噛まれて以来、犬が苦手になってしまったというもの。トラウマを克服して、またお友達と仲良く遊べるようになるトレーニングを伝授します。

今回のお悩み:他の柴犬に噛まれて以来、犬が苦手に…

5歳・女の子

 

柴犬だけの集合写真でこれまで整列が出来てましたが 、あるオフ会で集合写真中に後ろから他の柴犬さんに本気で背中と太ももを噛まれて以来、仲良しの柴犬さんとも目を合わせなくなり、また写真撮影で整列が出来なくなりました。

 

前のように撮影したいのですが、どうすればいいか教えてください。

 

またお友達との遊びも出来なくなり、ひとりぼっちで遊ぶ回数が増えてきました。

以前のように遊んでほしいと願う飼い主です。

 

アドバイスよろしくお願い致します。

 

それは愛柴にとって幸せ?「もし自分が同じ立場だったら」で考えてみる

柴犬

panparinda/Shutterstock

 

トラブルの事前回避はとても大切です。愛柴の体も心も傷つけられないよう、飼い主さんがいつでも気にしておいてください。

 

イベントなど多くの人や犬が集まる場所では、愛柴の緊張具合によってはすぐに帰る、もしくはハウスに入れておくなど、犬の負担が最小減になるよう心掛けることがとても大切だと思います。

 

人間だけが楽しくならないよう、一緒に楽しめると良いですね。

 

さて、今回のご質問は“他の犬に噛まれてから他犬を嫌がっているので、どうにかして嫌がらないようにしたい”というお悩みとして考えます。

 

こういう問題は、“もし自分が同じことをされたなら?”と想像するとわかりやすいかもしれません。

 

あなたは知らない人がたくさん居るところへ勝手に連れて行かれ、なぜ集合をさせられるか理解していない状態のまま「動くな」と命令されました。

 

それだけでも大きな不安であり苦痛なのに、後ろから突然、思いっきり殴られたのです。

 

こんな経験、かなりの恐怖じゃないですか? こんなことがあれば、集合写真はおろか他人との距離すら取りたくなりませんか?

 

この経験で植え付けられたトラウマを克服できるかどうかは、性格によって大きな差が出るでしょう。

 

人によっては最悪、復活することができないかもしれません。

 

克服できる人、もしくは理不尽に暴力を振るわれた経験をしても平気な人は、きっとパワフルで体力、筋力ともに他人に負けない自信がある人だと思います。

 

そしてその強いメンタルと肉体を手に入れるに至るまでに、血のにじむようなトレーニングや怖くて痛い思いをたくさんしてきているはずです。

 

犬の場合、この強いメンタルを育むことができるのが、社会化期の時期に経験する“ただ楽しいだけではない、駆け引きがある遊び”です。

 

小さい頃から思いっきり犬と遊ぶことが楽しくて安心できるもであると学習できていれば、他の犬に噛まれてもある程度の免疫力みたいなものができています。

 

ですからたった1回噛まれたくらいでは、仲良しの子でさえ嫌がるほどの犬嫌いにはならなかったかもしれません。

 

嫌な経験をしたら、なるべく早く楽しい経験を上書きする

柴犬

Akim Lakeev/Shutterstock

 

嫌な経験をしたら、また同じ経験をする恐れがある場所・相手には近づかないようになる。

 

これはリスクを回避するという、動物として当たり前の行動です。

 

当たり前の行動を変えるためには、嫌な経験を超えるほどの楽しい経験や安心できる経験が必要です。

 

他の犬と楽しい経験をさせて嫌なイメージを取っていってあげるトレーニングをしてあげましょう。

 

時間が経てば経つほど、苦手意識は強くなっていく傾向があります。

 

今回の件に限ったことではありませんが、嫌な経験をしたらそのままにせず、できるだけ早く楽しい経験をその場所でしてから帰るようにしてください。

 

対犬の場合は、他の子と遊べるようになるまでそこにいた方がいいです。もしどうしてもその日が無理であれば、後日でもいいので、できるだけ早く前の状態に戻せるようトレーニングします。

 

仲良しの子がいるということですので、その子に協力してもらうと良いかもしれませんね。

 

犬嫌いを克服するトレーニング方法

柴犬

Akim Lakeev/Shutterstock

 

くれぐれも喧嘩に気をつけながら、お友達の犬にどんどん会わせてください。その時は室内で、ノーリードにしましょう。

 

そして、飼い主さんは何もしないで静観していてください。

 

決して「ほらほら、大丈夫よ」「怖くないよ、○○ちゃんよ」など変な声を掛けるのはやめてください。

 

心の問題ですので、この子自身が「大丈夫」と思わない限り、他の犬が大丈夫にはなりません。

 

声をかけたり、変にリードで誘導したりすると気が散ったり、変な関連付けをしたりしてしまい、犬が自分で考えて感じて克服することを阻害する恐れがあります。

 

「じーっ」と見るのもダメ。視界の片隅やチラッと見て様子を伺う程度にしてください。

 

お一人でしたら黙っていてもいいですが、相手の飼い主さんがいればお話をするなどして、人間もリラックスしている雰囲気を作りましょう。

 

トレーニングへの過度の期待はしない

柴犬

mannpuku/Shutterstock

 

ただし、1回で良くなると思わないでください。また、このトレーニングだけではよくはならないと思いながら行いましょう。

 

また、トレーニング相手は大丈夫になっても、他の犬は苦手なままかもしれません。その逆もあるかもしれません。

 

そして場合によっては何年もかかることもあります。

 

必ず最良と最悪、二つを結果を考えておいてください。

 

仲良しの子の協力が得られなければ、トレーナーさんなどプロに頼りましょう。

 

仲の良いコミュニティーに属しているのであれば、プロに頼らずとも会わせる犬がたくさんいるかもしれませんが、やり方を間違えるとトラウマがもっとひどくなります。

 

しっかりとトレーニングや犬の習性、現況を理解、判断した上で行うことをお勧めします。

 

嫌なものを平気にすることは、とても難しいことです。人でも、ゴキブリが苦手な人を平気にしたり、人見知りな人を社交的にすることはかなり難しいですよね。

 

愛柴の苦手なことも、深い心の傷になっているかもしれないと思ってしっかりと取り組んでいただきたいです。

 

いつかの相談でも書きましたが、犬は飼い主さんと思いっきり遊んだり、ゆっくりしたりできているだけで満足ですよ。他の犬と遊べなくても困っていません。

 

もし、飼い主さんが自分の愛犬と楽しく遊べないのであれば、愛柴の犬嫌いを治すよりもまずは、自分と犬との関係や絆をもっともっとレベルアップすることをお勧めします。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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