【取材】迎えるまでに超えたたくさんのハードル。家族になって知った喜びは、その何倍にも大きくて… #3はな
“保護犬と家族になって感じた幸せ”をテーマに、元保護犬を迎えた柴オーナーさんに愛柴との出会いから、家族になっていくまでの過程などを伺う特集「保護犬と家族になって」。今回は推定2歳、迷子犬として警察署に保護されたはなちゃんを取材しました。出会ったときは痩せっぽっちだったはなちゃんですが、今では美味しいごはんに愛と言う名の栄養もたっぷりともらい、安心しきってヘソ天で寝るまでに…!
はなちゃんプロフィール
年齢&性別
推定2歳で迎え入れた、現在6歳の女の子
保護されていた理由
迷子で警察に届けられた。
性格
最初は怖がりだった。今は車でおでかけとひなたぼっこがマイブーム。
迷子のはなちゃん
オーナーさんがはなちゃんと出会ったのは、ご主人が勤める警察署。迷子犬として保護されていました。
警察では一時預かりだけなので、1週間程で愛護センターに送られたそう。
「センターに送られた後も、主人は“はな”のことが気になって仕方がなく、ついに“引き取ろう!”となったんです。
ただ、いつかは犬を飼いたいと思っていたものの、すぐにというわけではなかったので、そこから話し合いが始まりました」(はなちゃんママ=以下「」内同)
犬を飼うならちゃんとしなければ!という思いが強かったオーナーさん夫妻。何度も話し合いを重ねたそうです。
「まず、大変そうなことを想定してみたんです。それでも飼えるなら飼おうと。
最初に考えたのは散歩のことでした。共働きなので、仕事をしながら朝晩1時間くらい散歩の時間が取れるのか。
それからお金の問題も。食事やワクチンに、ケガや病気の治療費など。保護犬だから病気を抱えているかも⋯とも考えました。
そして旅行なんかも、これからは犬と一緒に行けるところ、期間も短く負担が少ないところになりますよね」。
犬が好きだからこそ、楽しくて嬉しいことからではなく“大変なこと”から考え始めたオーナーさん夫妻。
感銘を受けるとともに、「飼いたい!」から入り、両親と健康な愛犬に頼りっきりの我が身を反省しました⋯。
ちなみにオーナーさん夫妻が特に大事にされている散歩は、“自分たちの体調が悪くても毎日行けるか?”というところまで考えられたそう。
「犬にとって散歩は色々な刺激を受けられる大切なもの。でも犬は自分で自由に出歩けないから、そこだけはちゃんとしてあげたいと思って」。
未来の愛犬のことをこんなに考えてくれるオーナーさんと出会えて、はなちゃんも遠回りした甲斐がありましたね。
迎え入れるまで
はなちゃんの迎え入れを決めたご夫妻。それからの手続きは?
「まず愛護センターに行き、誓約書などにサインして、しつけ教室に通いました」
誓約書には「販売目的でないこと」「避妊手術をすること」「一生責任を持って飼うこと」等の項目があったそうです。
「避妊手術はセンターの方でしてもらうこともできたのですが、そのためには数カ月待たなければなりませんでした。
私たちは早くはなを引き取りたかったので、自分ですることにしました」。
避妊手術に限らず、ワクチンや治療のことなど、どちらが何をするのか、譲渡の際はきちんと確認しておいた方が良いですね。
しつけ教室はどんな内容だったのでしょう。
「座学のしつけ教室は必ず参加するようになっていて、初めて犬を飼う人向けの基本的なことを教わりました。
それと、保護犬の中には逃げ出してきた子もいるので、また逃げないように気を付けたり、犬が人を噛むことの怖さなども教わりました」。
一度飼い主から逃げた犬は、また逃げやすい傾向にあるのだとか。首輪が取れないよう2つ着けるなど、普段から対策しておくと安心です。
そして人を噛んでしまうことは、犬にとっても深刻な問題。犬は悪くないような状況でも、被害者が出れば飼育できなくなるケースもあります。
どちらもオーナーとして絶対に気を付けないといけない、とても大切なことですね。
「それから、犬と一緒に参加するしつけ教室にも通いました。この教室は希望者だけでした。
クレート(ハウス)トレーニング、屋内や屋外でのトイレの仕方、散歩のさせ方に、マッサージまで教えてもらえました」
初めての方でも安心して保護犬を迎えてほしい。そしてずっと大事にしてあげてほしい…。
愛護センターの方の思いや努力が、譲渡後のていねいなケアに表れています。
オーナーさんもそんな思いに触れ、はなちゃんが元気になった姿を写真に収め、お手紙と一緒にセンターに送りました。
このセンターには、ほかのオーナーさんからも写真やお便りがたくさん届いているそうです。
ついに我が家に!
家族での話し合いや譲渡の手続き、しつけ教室を経て、はなちゃんがついにオーナーさん宅にやって来ました。
「第一印象は、痩せた雑種の子! という感じでした(笑)。来た時の体重は7kgくらいで、今より3kgも軽かったんです。
性格は、主人からは“大人しいよ”、愛護センターの人からは“やんちゃです”と正反対のことを聞いていました。
実際に会ってみると、最初はやっぱり怖がっている様子でした。ご飯も食べず、“私はこれからどうなるの⋯?”という感じで。
触ったり抱っこしたりは大丈夫ですし、震えたりもしていませんでしたが、緊張して気を張っているというか」。
「1週間くらいすると少しリラックスして食欲も出てきましたが、今度はしっぽをかじるようになってしまいました。
今思えば、迷子になって以来、環境の変化も多かったので、ストレスが溜まっていたのかなと思います」。
病院で診てもらい、薬も出してもらいましたが、病気ではなくストレスが原因との診断。3カ月もすると治まったそうです。
ほかに困ったことはあったのでしょうか。
「すごく困るようなことはありませんでしたが、首輪を着けるのを嫌がったり、あと爪切りも最初はすごく嫌がっていました」
愛護センターの方も手こずったというはなちゃんの首輪付け。どうやって解決したのでしょう?
「無理やり着けると余計に嫌がるので、まずお座りを憶えさせて、座った状態でご褒美をあげながら着ける、という感じです。3カ月もすると嫌がらなくなりました。
爪切りも同じ感じで、ご褒美作戦を続けていると、だんだん怒らなくなっていきました」。
嫌がる子に首輪やハーネスを着けるのは本当に大変ですよね。それも毎日2回、3カ月続けるとなると尚更です。
でも諦めずに続けたことで、はなちゃんも自分のためにやってくれているのだと少しずつ理解し、受け入れることができたのだと思います。
早く慣れてほしくて⋯
はなちゃんとオーナーさんとの距離もだんだん近づいて来ました。その後もオーナーさんは積極的なアプローチを続けます。
「私たちとの生活に早く慣れてほしかったので、たくさんしつけをしようとした時期もありました。
でも、あまり無理に追い込むようなやり方は良くないと思い、適度な距離感を保って、自分たちも楽しんで接するように変えたんです。
はなが嫌がることはやらず、外が好きなので、散歩を増やしたり、外で遊んだり。そんなことを続ける内に、だんだん打ち解けていきました」。
あなたのためだから!と懸命になり過ぎると、かえって距離が開いてしまう。人間関係と同じで、どんなに愛情があっても適度な距離は必要ですよね。
それからは、自然なペースで信頼が深まり、はなちゃんの行動も変わってきました。
「最初はぐいぐい引っ張って歩いていた散歩も、しつけ教室で教わった“おやつトレーニング”の効果もあり、楽しく並んで歩けるようになりました。
リードを短く持って“付け”と呼んで、できたらおやつをあげる、という感じです。
そして嬉しかったのが、ウチに来て半年くらいでしょうか、無防備な姿で寝ているのを初めて見た時です」。
出会った頃は、緊張とストレスでいっぱいだったはなちゃん。そんな彼女が心からリラックスして眠る姿は、想像するだけで幸せな気持ちになります。
これまで苦しんできた分、少しでも早く幸せにしてあげたい。そんな思いを少しセーブして、はなちゃんのペースに合わせたオーナーさん、大勝利ですね!
家族になって
オーナーさん夫妻との暮らしに慣れ、少しずつ変わってきたはなちゃん。でも、変わったのははなちゃんだけではありません。
「二人暮らしの家にはなが来て、夫婦の会話が増えましたし、家の中が明るくなりました。
忙しくて、以前なら“家事と仕事の繰り返し”みたいな寂しさを感じていたときも、はなに癒されて心が温かくなって。
好きだった写真も、はなを撮るのが楽しくて、もっと好きになったんですよ。
はなが来るまで感じたことがなかった気持ちや、想像以上だった喜びがたくさんあります」。
最初はご主人の強い希望で始まったはなちゃんとの暮らし。今では二人に欠かせない家族として、はなちゃん中心の生活になっているそう。
オーナーさんのように言葉で喜びを表せないはなちゃんも、この幸せそうな表情を見れば、どれだけ良い家族になっているか一目瞭然です。
最後に、これから保護犬を迎えたいと思っている方へメッセージをいただきました。
「成犬の子が多く、それぞれの背景もあるので、仔犬から育てるのとは違うこともあると思います。
でも、家族になってからの変化、特に心の変化を感じられることは、とても大きな喜びです。
愛情をたっぷり注いで、自分も楽しむことを心がければ、お互いに豊かな暮らしを手に入れられるのではないでしょうか」。
愛犬だけでなく、オーナーも楽しく、同じペースで変化していく。
元保護犬との暮らしを始めるには、いくつかのハードルがあります。でも、本当の家族になるために必要なのは、ただ「一緒に幸せになること」なのかもしれません。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
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