【特集】柴を介護する#21 犬の「認知症専門外来」ってどんなところ? 飼い主の負担が減り愛柴との時間がもっと楽しく!
特集『柴を介護(あい)する』シリーズでは、いつかはやってくる我が子の老後に備え、老犬介護の情報をお伝えしています。
柴犬の平均寿命は15歳を超えるというデータもあり、長生きをしてくれる一方、歳を重ねるごとに食事などに介助が必要になることもあります。飼い主さんと愛犬の暮らしをサポートする『Dyplus(ディプラス)西麻布』で認知症専門外来を担当する小澤真希子先生に、老犬の食事の選び方や介助の方法をうかがいました。
目次
老犬ホーム開業のきっかけは20歳の犬の世話
「柴犬は認知症になりやすい」と聞いて、愛柴の老後が心配な飼い主さんもいますよね。
20年前の研究では柴犬と日本犬系MIXに認知症が多いという結果でしたが、最新の研究では柴犬が特別に多いわけではないことが明らかになりましたが、それでも認知症になった愛柴を介護している飼い主さんは少なくありません。
Dyplus(ディプラス)西麻布で認知症専門外来を担当している小澤真希子先生に、柴犬の認知症の特徴をうかがいましょう。
小澤先生:
「柴犬が認知症になりやすいとは言えないものの、私が動物病院で診察する認知症の犬の中では柴犬が少なくないのです。
鳴き声が大きくて甲高いので、飼い主さんの悩みが大きくなりがちなのでしょう。他の犬種は症状があっても我慢できてしまう範囲なのかもしれません。
認知症でトラブルになる柴犬は16〜17歳で、飼い主さんも高齢の方が多いのが特徴です。
夜鳴きや寝たきりの介護はご家族に負担がかかるので、認知症の介護はご家族だけで支えるのは難しいもの。
病院などのサポートを適切に使っていただけたらと思っています」
老化が原因で認知症のような行動が見られることもある
「認知症の診断は、認知症と決めつけないことから始まります」と小澤先生。
高齢期の愛犬が今までと違う行動をすると認知症を疑いたくなりますが、老化が原因になっていることも。
以下の5項目は認知症の症状に思われがちですが、決めつけるのは早計です。
[老化と認知症の両方に見られる行動]
□歩き続ける
□円を描くように歩き続ける
□家具や部屋の隙間で行き詰まってしまう
□家族への反応が変化する
□排泄習慣が崩れてトイレの失敗が増える
小澤先生:
「これらが1つだけであれば老化の可能性もあります。
視力が落ちてうろうろすることもあれば、関節炎のためトイレシートで踏ん張れず失敗することもあるからです。2つ以上重なると認知症の疑いが強まります」
認知症の研究は始まったばかりで、正確な診断が難しい場合も。
正確な診断を受けて適切な治療につなげるためには、かかりつけ病院のみならず、『認知症外来』を設けているなど、認知症に詳しい動物病院の受診をすすめています。
認知症だから夜鳴きをするわけではない
認知症の柴犬が問題になりがちなのは、夜鳴きや徘徊です。ただし、認知症になったからこれらのトラブルが起きるわけではありません。
小澤先生:
「夜鳴きをするのは認知症になったからとは限りません。実は認知症にはいろいろな病気がからんでいます。
私の経験では、深刻なトラブルを起こす犬は、認知症に加えて別の病気を患ってしまっているケースが多いですね。
そのため、認知症の症候(特徴的な症状)が出ているか確認し、除外診断(他の病気の可能性を除外する診断)を行うことが、認知症の診断の決め手になります」
よくあるのは、皮膚炎の痛みやかゆみを訴えて鳴いているパターン。
認知症になると毛づくろいや耳をかくなど、これまで自分自身でできていたケアができなくなるため、鳴いてアピールするのです。また、飼い主さんがケアしてあげていたとしても皮膚炎を起こしやすくなるそう。
まずは皮膚炎を治療して、認知症単独の症状を見極めることが診断の一歩になります。
認知症外来では飼い主のカウンセリングが重要
認知症は血液検査などの客観的なデータで診断できる病気ではありません。
犬の状態から判断するためには、飼い主さんからの情報が大きな手がかり。小澤先生は初診のカウンセリングに少なくとも60分はかけるそうです。
小澤先生:
「飼い主さんからしっかりと日常生活の様子をうかがいます。
たとえば不眠や夜鳴きの問題であれば、1日の睡眠のパターンを聞いて原因を探っていきます。
夜中に起きて必ず排泄をするなら、老化や病気で尿意があって起きたり、排泄を要求して鳴いたりしていると予想できますよね。
客観的に情報を得ながら診察し、認知症と要求(問題行動)と身体疾患を分けていくのです」
このカウンセリングを受けるだけでも、飼い主さんの心の負担が軽くなるそう。
「原因がわからないから不安になるので、原因がわかるだけでも飼い主さんのストレスが減りますよ」と小澤先生。
もし愛犬が認知症と診断されたら
認知症と診断された後、小澤先生が担当するDyplus(ディプラス)西麻布の認知症外来ではどのような治療を行っていくのでしょうか?
小澤先生:
「認知症の初期であれば2〜3カ月に1回程度の受診していただきます。
進行して歩行や動作がおぼつかなくなってくると皮膚炎などのトラブルがたくさん出てくるので、身体のケアも含めて2週間に1回程度の通院をおすすめしています。
初診はDyplus(ディプラス)西麻布にお越しいただきますが、再診はオンライン受診が可能です。
遠方で通院が難しい場合、認知症外来ではオンラインで行動面のケアや介護の相談、睡眠薬やサプリメントの処方箋を行い、かかりつけでは身体的なケアを行う、という協力体制がとれます。
初診のときにかかりつけの動物病院の紹介状を持参していただくとスムーズです」
オンライン受診では、おむつの付け方やごはんの食べさせ方などの介護の方法をデモンストレーションしながらアドバイスしているそうです。
睡眠薬とサプリメントを組み合わせて治療を行う
認知症の症状によっては、薬やサプリメントも使うそう。
小澤先生:
「国内で承認された犬の認知症の薬がないため、今は海外で承認された薬を処方しています。
しかし残念ながらそこまで効果が高くないというのが実情です。
私は薬よりサプリメントを使うことが多いですね。マイルドに全体の状態を上げてくれることを実感しています。
配合された栄養素が老犬をいきいきさせることには役立っているのではないでしょうか。
認知症に伴う不眠や不安の症状には睡眠薬が使えるので、飼い主さんに日常の様子を聞いて処方します。
オンライン診療の場合は薬を郵送したり、かかりつけに処方を依頼したりしています。
薬やサプリメントは飲みやすさも重要。苦しいことをつづけるのは老犬の治療には相応しくないと思っています。おいしく食べて元気になるのが理想ですね」
睡眠薬を飲ませても効かなかったというケースもあります。その理由は、老犬になると量の調整が難しくなるため。
薬の作用は薬を代謝する酵素の影響などに左右されます。
若い頃は一定だった代謝が、歳をとると落ちたり逆に病気で高まっていたりするため、量の調整が困難になるのです。
また、どんな薬でも体が慣れて効きが悪くなるため、小澤先生は1カ月に1回程度は、薬の調整をすることを薦められています。
認証外来や老犬ケアを頼って楽しい時間を増やす
認知症は進行すると体の症状も出てきて、動作が鈍くなったり転んだりすることが増えます。
痛みしびれなどのつらい状態を緩和するために、Dyplus(ディプラス)西麻布では整体やリハビリテーション、鍼灸なども行っています。
小澤先生:
「姿勢が良くなると元気に歩けるようになり、運動すると脳も活性化されます。
すると好循環が生まれ、犬も生き生きとしてくるんです。
認知症の介護を家族だけで行うのは非常に大変なので、認知症外来や老犬ケアを行う施設を頼って、愛犬と飼い主さんがもっと楽しい時間を過ごしてほしいですね」
犬の認知症は社会的に注目され、Dyplus西麻布のように認知症外来を設ける動物病院や、老犬介護を行う老犬ホームのような施設も増えています。愛犬の柴犬が認知症になったら、“ひとりで悩まない”ことが大切です。
【施設DATA】
Dyplus(ディプラス)西麻布
Dyplus(ディプラス)西麻布では、医師をはじめ、理学療法士・ドッグトレーナーが「予防・健康」「マナー」「体づくり」「衛生・美容」「食事」「住環境」をサポートするオリジナルカリキュラムを提供しています。
住所:東京都港区西麻布4-22-7
電話番号:03-5464-1028
公式サイト:https://nishiazabu.dyplus-pet.com/
取材・文/金子志緒
おすすめ記事
-
世界でいちばん大切な柴犬が、アレルギーに立ち向かう物語【Ta-Taってなんだ?】
「柴犬は丈夫で、病気にもなりにくい犬種である」。
まことしやかに囁かれるこの文言ですが、ほんとうにそうでしょうか?
もちろん、犬種としての完成度がとてつもなく高い柴犬だから、そういった側面はあります。
でも、いざそれぞれの個体を見ていくと、丈夫で病気にもなりにくい、とは言えないような気もするのです。
実際に「病気にならない」などということはないし、飼い主はそのためにやるべきことがある。
今回は、柴犬に関わる方たちすべてに読んで欲しい、ある柴犬とその家族のお話。
ご本人からのレポートは、愛情たっぷりで示唆に富んだ物語でした。
※文章はご本人の了承を得て編集しています
エッセイ
※画像はすべてイメージです
※この記事は個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません -
【取材】ハワイの柴犬に会ってきました!10頭が集結!
日本を代表する犬といえば、我らが柴犬。
ところが近年、世界中で柴犬ファンが増えています。そんな中「柴犬ライフ」が目をつけたのは、南の楽園ハワイ。柴犬オーナーが多く、定期的にオフ会まで開催されているとか。
そんな噂を聞きつけ、今回はハワイの柴犬たちを取材してきました!
海外取材 -
【インタビュー】お笑い芸人・ニューヨーク屋敷、「拒否柴」を掘る。
世界中の人々を魅了する「拒否柴」。彼らのすべてが詰まったその行動は、柴犬を語る上では外せません。そして拒否柴がここまで話題になるのは、“映える”ことも理由のひとつ。
では…拒否柴を「版画」にしてみたら、どんな作品ができあがるのでしょうか。
最近版画製作を始めた、お笑いコンビ「ニューヨーク」の屋敷裕政さんに、拒否柴を掘っていただきました! インタビューと合わせてご覧ください。
取材 -
「くっっっさ!」耳をほじった足が臭すぎてビクッとなる柴犬。最後足を隠してて笑う【動画】
今回登場するのは驚いてしまった柴犬たち。そうはいっても誰かにビックリさせられたとか、なにかアクシデントが起きたとか、そういうことが原因ではありません。全ての原因は彼ら自身にあったのです…!
-
ゆっくりゆっくり登場する柴犬に「外で見るんじゃなかった」「表情がいい」と爆笑【動画】
柴犬を下から見る…たったそれだけでいつも見ているものとは違う光景が目に飛び込んできます。つぶらな瞳はさらにつぶらに見え、モフモフのお顔はさらにモフモフに見えます。これはクセになる…!
-
【取材】「ときろう」が望むバランスで関わる。17歳まで元気でこれた秘訣は干渉し過ぎない距離感 #38ときろう
平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。 この特集では、レジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らすうえで大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただきます。今回登場してくれたのは、17歳のときろうくん。小さい頃から食が細かったため、何でも食べさせてきたということですが、そんなときろうくんの長寿の秘訣とは。
-
「オモチャ置いてきなさい」と言われた柴犬が最後にとった行動に爆笑【動画】
ふとした瞬間、柴犬から出てしまう人間っぽさ。特にちょっとイラッとした時なんかは、人間っぽさを隠す気などないように見えます。もしかして本当の本当は、中身は人間なんじゃ…?
-
【“既視感ゼロ”の柴犬グッズが爆誕!】ウ◯チ姿が愛おしすぎるコラボプロダクトがついに完成!
柴犬を心の底から愛している私たち。とくに柴スマイルやオコ柴、拒否柴は彼らの特徴があらわれていて大好き。
でもちょっと待て…もうひとつ、忘れてはならない愛おしいシーンがあったぞ。それは、背中を丸めて“ウンチなう”の姿だ。
そこで私たち柴犬ライフは、ドッグブランド「PEGION(ペギオン)」とコラボしてオリジナルの柴グッズを製作!
柴犬と暮らす人もそうでない人も、とにかく柴犬を愛してやまない皆さまへ。とんでもない柴グッズが爆誕です!
ストア情報
特集
-
柴犬(しばいぬ)の性格/基本情報
柴犬のからだの特徴や性格、歴史など基本情報をご紹介!
-
豆柴(まめしば)の性格/基本情報
豆柴のからだの特徴や性格、歴史など基本情報をご紹介!
-
子犬/はじめての柴犬(しばいぬ)
柴犬ビギナーの不安を解消!迎える前の心得、揃えておきたいアイテム、自宅環境、接し方などをご紹介
-
柴犬ライフ ストア
厳選&オリジナルの柴グッズが勢ぞろい!
-
【特集】新・家術〜進化型家電と、新しい愛情物語
愛犬たちとのかけがえのない生活をもっと楽しく快適に暮らすために。
-
【特集】レジェンド柴の肖像ー12歳を超えて
12歳を超えた柴犬を取材し、長寿の秘訣を探る。
-
【特集】保護柴と家族になって
-
【マンガ連載】こいぬと柴犬
「柴犬ライフ」オリジナル作品!
-
【連載】アキナ山名とおまめのラブい日々
山名さんご本人が綴る“柴犬ライフ”エッセイ。
-
【特集】柴犬のお悩み解決NOTE
ドッグトレーナーがみなさんのお悩みに応えます!
-
柴犬 病気辞典
獣医師監修のShiba-Inu Lifeオリジナル病気辞典。あなたの愛する柴犬を守るための情報満載
-
柴犬里親/保護犬情報
Shiba-Inu Lifeでは、保護犬を一頭でも多く救うための活動支援をしています。
-
SHIBA-INU LIFEとは
柴好きによる、柴好きのための、柴犬情報メディアです。その規模は、日本最大級!