【取材】人間が怖くてブルブル震えていたのがウソのよう!愛が少しずつ心をほぐし、今では「なでて」と甘えるまでに #7ライナ・レオナ
“保護犬と家族になって感じた幸せ”をテーマに、元保護犬を迎えた柴オーナーさんに愛柴との出会いから、家族になっていくまでの過程などを伺う特集「保護犬と家族になって」。今回登場するのは、黒柴のライナちゃんとレオナちゃん。オーナー・度会(わたらい)さんご夫婦の深い愛情に包まれ、保護当時と比べものにならないほど優しく穏やかに変化した表情にも驚きです!
ライナちゃんレオナちゃんプロフィール
年齢&性別
◆ライナちゃん
2019年1月に迎えた、現在4歳の女の子
◆レオナちゃん
2020年6月に迎えた、現在2歳の女の子
保護されていた理由
◆ライナちゃん
ブリーダーの飼育放棄
◆レオナちゃん
ブリーダーが劣悪な環境下で飼育していたため
保護団体がレスキュー
性格
◆ライナちゃん
家に迎えた当時は甘えん坊だったが、レオナちゃんが
来てからはお姉さんモードが発動。姉御肌に。
◆レオナちゃん
おっとりマイペースで天然。
劣悪な環境からのレスキュー
埼玉県にお住いの度会さんご夫妻が実の娘のようにかわいがって育てているのが、黒柴のライナちゃんとレオナちゃん。
愛らしい姿は本当の姉妹のようですが、じつは2頭とも元保護犬。時期も場所も違うところで保護されたのです。
まずは、パパさん&ママさんの元に1年半早くやって来たお姉さん犬・ライナちゃんとの出会いから伺いました。
「引き取ったのは、ライナが1歳になるちょっと前。もとはブリーダーの繁殖犬だったんですが、生後半年くらいで強制的に妊娠させられて、流産、手術をしたみたいなんです。それで“もう役に立たないからいらない”となって…。
個人で保護活動をやられてる方が引き取り、ネットで里親を募集されてたのを見て、うちに迎えました」(パパさん)。
小学生の頃に犬を飼っていた経験があり、「大人になったらまた飼いたい」と思っていたというパパさん。
保護犬情報サイト『ペットのおうち』でライナちゃんを見つけ、すぐに連絡。翌日には保護施設がある山梨まで会いに向かったそう。
一方、妹犬・レオナちゃんとの出会いは…。
「レオナももともとはブリーダーのところにいて、時期が来たら売られる予定の子だったんです。
でも、ブリーダーの方が“左目が小さい。これでは売り物にならない”と思ったみたいで、“もういらない”と飼育放棄をされて…。
保護団体がレスキューしてくださった時には、ケージがたくさん重なった中のひとつにいました。
精神的にかなりひどい状況だったようで、ケージの奥でブルブルブルブル震えていたんです。
ほとんど栄養をも与えられていなくて、いろんなところの毛がハゲてピンクの皮膚が見えている状態でもありました」(ママさん)。
その実際のレスキューの様子を保護団体がFacebookにアップしていて、それを目にしたパパさん&ママさんは心を痛めたと言います。
「衝撃でした。ワンちゃんってこんなに震えるんだ…って。
きっと心のキズは深いだろうとは思ったんですが、あの目を見ていたら一度会ってみたいという気持ちになって、お問い合わせをさせていただきました」(ママさん)。
ちょうどもう1頭を迎えてライナちゃんに姉妹を作ってあげたいと考えているころでもありました。
レオナちゃんがライナちゃんと同じ黒柴だったことはまったくの偶然だったそうです。
決め手は犬同士の相性
保護犬を迎え入れる前には1週間から1か月ほどの“トライアル期間”が設けられているのが一般的。
「でも、ライナは初めて会いに行った時から、ずっと私にべったりで(笑)。
保護されていた方から“普通はトライアルをやるんだけど、ちょっと様子が違うからこのまま預かってみる?”と言ってもらって、そのまま連れて帰って来られたんです。
帰りの車の中でライナは助手席にお座りして、もうすっかり相棒って感じでした」(パパさん)。
前出のとおり、ライナちゃんを保護していたのは個人で保護活動をされている方だったため融通が利いたのかもしれません。
実際、レオナちゃんを迎える前には約2週間のトライアル期間がありました。
「そのころには先住犬のライナもいたので、基本的にお試し期間はあったほうがいいな、と思っていましたね。
でも、最初にライナを連れてレオナに会いにシェルターへ行った時、ライナがレオナを見て“ワン!”って吠えてしまって、保護されてまだそんなに経っていなかったレオナが“怖ッ!”って顔をしてたので、トライアルをやってもらえるかな…(汗)って、心配になりました。
その後、シェルターの方がライナとレオナが同じ空間で一緒にいる時間を作ってくださって、“最初は吠えてましたけど、今は落ち着いて過ごしてるのでトライアルをやってみませんか”と言っていただけてトライアルに至った感じです」(ママさん)。
こうして始まったトライアル期間。おうちでのライナちゃん&レオナちゃんの様子は…?
「最初はおたがい“なんだ、なんだ?”って感じでしたね。
レオナはおうちで過ごすのが初めてだったので、“ここはなんだ?”って、テレビにも興味津々でした(笑)。
そんな感じでレオナがいろいろ探索しているのをライナが見守っていて、そのうち“わんプロ(※ワンちゃん同士がじゃれ合ってプロレス状態になること)”も始まったんです。
それもちゃんとお姉さんであるライナが手加減していたりして、結構早い段階でおたがい姉妹っぽくというか…気を許し合っている感じでした」(ママさん)。
これが決め手となって、レオナちゃんも度会家の一員に。パパさん&ママさんと黒柴姉妹の生活がスタートしました。
ちなみに、“ライナ”“レオナ”という名前は、プロ野球・埼玉西部ライオンズ(球団マスコットキャラクターが“レオ”と“ライナ”)ファンだったパパさんがつけたそうです。
元保護犬だからこその気遣いも…
一緒に暮らすうえで、気をつけたことがいくつかありました。
「とくにレオナは音に対してすっごく敏感で、ちょっとした音…普通に物を置く程度の音にもビクッとしていたんです。
なので、生活音もなるべく小さくするように気をつけて胃ましたね。やっぱり家の中は一番安心できる場所であってほしかったので」(ママさん)。
劣悪な生育環境によってできてしまったレオナちゃんの心のキズは、ちょっとやそっとの期間で癒えるものではありませんでした。
「最初はちょっと触るだけでもビクッとしていて、ブリーダーさんのところで何かしら虐待のようなことをされていたのがわかるような状態でもありました。
だから、ライナとはすぐにじゃれ合っていたんですけど、私たちにはそんなにすぐ近寄って来てはくれませんでした。人間を警戒している感じでしたね」(ママさん)。
ママさんよりもさらに警戒が強かったのがパパさん。
「おそらくブリーダーさんが男性だったんでしょう。とくに私のところにはなかなか来てくれなくて、結構最近のことなんですよ。なでさせてくれるようになったのも。
だから、本当になついてくれるようになるまではまだまだ時間がかかると思っています」(パパさん)。
人間を怖がるレオナちゃんをさらに追い詰めるようなことがないよう、パパさんは無理に距離を詰めることはしませんでした。
「逆にライナが私にベッタリなので、あまり“レオちゃん、レオちゃん”になってしまうとヤキモチを焼くんですよ。だから、レオナとはいい距離感を保ちつつ…という感じでいました(笑)」(パパさん)。
そんなパパさんのおおらかさと、ママさんのやさしさはレオナちゃんの(もちろんライナちゃんにとっても)救いになったことでしょう。
小さな変化が喜びに
「ライナちゃん&レオナちゃんと家族になれたな、と思えた瞬間は?」という質問に、パパさんとママさんは…。
「私がふとんに入って、パカっと掛けぶとんをめくると、ライナが入って来て一緒に寝るようになったんです。
初めて会った時からベッタリではあったんですけど、一緒に寝るまでの感じではなかったので、ふとんに入って来てくれた時は“あー、いいな”と思いましたね」(パパさん)。
今では同じ枕を使って抱き合うようにして寝ているというパパさんとライナちゃん。そして、心のキズが深かったレオナちゃんも…。
「私がお昼寝をしていた時に、気がついたらレオナが私の体にアゴを乗せて一緒に休んでいたんです。その時は“え、初めてこんなに近づいてくれた!”ってうれしかったですね。
あと、最近は私が帰ると“遊んで、遊んで!”ってシッポを振って飛びついてくるんですよ。
手を洗いに行ってもずっとついて来たりするのを見ると“心を開いてくれたのかな”ってうれしくなります」(ママさん)。
それだけではありません。じつは、かなり警戒していたパパさんに対しても…!
「今では、朝、私がクローゼットで着替えているとレオナが“なでろ”って、頭でクイクイッと腕をつつきに来るんですよ。これはほぼ毎日です(笑)」(パパさん)。
小さな変化の積み重ねを見守る喜び。それが保護犬の里親にはあります。
「特別なことや難しいことは何もしていません。ただただ家族として接し続けただけです」と言う愛情いっぱいの言葉が印象的でした。
保護犬も選択肢のひとつと知ってほしい
ワンちゃんを迎えるにあたって、最初から選択肢は“保護犬”一択でした。
近年、数多くの保護団体や施設がSNSで保護犬の情報を公開しているのを目にして、「この中から1匹でも多く救いたい」という気持ちからだそうです。
そして、保護犬について知りたい方、里親になることを検討中の方にもぜひご覧いただきたいのが、今ではもう本当の姉妹犬にしか見えないライナちゃん&レオナちゃんのかわいすぎる写真が満載のInstagram( @lina_and_leona)。
「インスタをやっている理由は、私たちが思い出として残したいというのもあるんですけど、保護犬に対する考えがちょっとでも変わってくれたら…というのもあります。
やっぱり“保護犬って大変なんじゃない?”って思われてる方は多いようなので」(ママさん)。
日々の更新は元保護犬だということを押し出してはいませんが、インスタのプロフィール欄にはレオナちゃんがレスキューされた時の動画のリンクが貼られています(※動画の中では保護団体の方に仮名で“つぶらちゃん”と呼ばれています)。
「この動画を見てから、我々のインスタの写真を見てもらえると、レオナがどれだけ変わったかが伝わると思います。
今のレオナを見るとみんな“どこのブリーダーさんから迎えたの?”って言うんですけど、“保護施設から引き取って、愛情をかけることでここまで心を開いてくれたんだよ”っていうのを伝えたいなと思います」(パパさん)。
「とくにレオナに関してはなんですけど、レスキューされた時のひどい状況を動画で見ているので、今、喜んでいたり、幸せそうな姿を見ると、本当にうちに迎えてよかったなと思います」(ママさん)。
保護犬に理解と興味があるのであれば、「保護団体のSNSをチェックしたり、譲渡会に足を運んだりして、実際にワンちゃんと接してみてほしい」とパパさん&ママさんは願っています。
譲渡後であっても飼育の相談に乗ってくれる保護団体は多くあるそうです。
「個人的には、保護犬を迎える動機はなんでもいいと思っています。
“この子がかわいいから”でも“救って幸せにしてあげたい”でも。
ワンちゃんを迎えるのはペットショップやブリーダー以外にもあるんだよ、ってことをもっと知ってもらいたいです」(パパさん)。
保護犬との出会いも“縁”。条件が合わなかったり、希望者が多数で希望のワンちゃんと縁が結ばれないことも時にはあります。
実際、ライナちゃんを引き取る際には保護施設から“一戸建ての自由な環境で育ててくれる人”という、なかなか厳しい条件を提示されたそうです。
「私の場合はたまたまそれをクリアできてたのでよかったんですが、もし断られたとしても“それはこの子が幸せになるため。意味がある”と受け止められる方が保護犬の里親に向いているような気がします」(パパさん)。
おおらかな心で、無償の愛を──。これこそが一番大事なのかもしれませんね。
取材・文/ 永野ゆかり
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