『見せない一面』ーアキナ山名とおまめのラブい日々#18
お笑いコンビ「アキナ」の山名文和さんは、2020年6月9日に愛柴のおまめを迎えました。保護犬施設からやってきた彼女は、当時8歳。
長年夢みてた“柴犬ライフ”を、ようやく実現した山名さん。おまめとどのように出会い、どんな生活をおくっているのでしょうかー。
アキナ山名と柴犬おまめの最高にラブい日々を、山名さんご本人が綴っていきます。
#18は、おまめと子供とー。
『見せない一面』ーアキナ山名とおまめのラブい日々#18
夏の間、おまめは、すっかり寝床に来なかった。恐らく敷布団が暑かったんだろう。来たとしても、ものの五分ですくっと立ち上がりぶるると身体を震わせてからのそのそ寝室を出ていった。ため息混じりの横顔を幾度と見た夏。
ある夏の朝。開け放した寝室の隣の部屋でおまめがむくっと起き上がった。気配で起きた。入っては来ない。暫く目が合い、やがて廊下を歩いてそそくさと玄関に向かっていった。
「散歩いこか。そっちいくと長なるから先いっとくで」てな具合。
後から追いかけると玄関扉に張り付くように立って待っていた。
相当トイレに行きたかったんだろう。
こういう催促は初めてで嬉しかった。
夏の間は少しでも時間が遅くなると、ほとんど歩かなくなる。照りつける太陽が路面を熱くしてしまう。犬の体感温度は人間よりも幾らか高くなる。そんなことも解っているんだろうか。
「今のうちにいっとかんと、私歩かんようになるからお互いちょっとはよ起きよか」とでも。
まだ涼しい風が吹く朝の道を、それでもできるだけ日陰を選んでおまめと歩く。
子供が生まれて始まったルーティン。急に突然びたんと立ち止まり、てこでも動かなくなる時間。ゆっくりとこっちを見てくる。
「さあ、私の身体を撫で回してください」の時間。
散歩中、だいたい三回ある。ひとしきり身体を撫で回して満足すると、それまでの時間が鬱陶しかったのか、また身体をぶるんぶるんと震わせて歩き出す。
子供が生まれ、おまめは慣れてくれただろうか。
恐らく慣れるどうこうより寂しく感じている気がする。
おまめからしたら遊んでる時間が、半分になったから。
いつからか、ご飯を食べているとテーブルの下にやってくる。ご飯が欲しいのも勿論あるが、僕たちの足元に居たいような気もする。
幼い頃、弟が生まれる日、僕は泣き叫んだそうだ。お母さんを取られると思ったんだろう。少しずつそれにも慣れた。僕の記憶は、弟を両親に隠れてとびっきりあやしたこと。両親の前では弟を可愛がる自分を見せることが出来なかった。どうにも恥ずかしかった。普段見せない表情や声色を見られるのが恥ずかしかった。友達の前で初めてハットを被った姿を見せるのに似ているかもしれない。もしその姿を両親が見たら「お兄ちゃん偉いなあ。遊んであげてんの? あんた? お父さん? 文和がしっかりお兄ちゃんしてやるわ」「ほんまやな。文和、お兄ちゃんしてんのか?」こんなことを言われたら何を返せばいいのかわからない。「うん! 僕な、弟大好き。だから守ったるねん!!」こんな返しできるはずがない。だから兄という自覚が芽生えだした自分をさらけることは決して出来なかった。皆でリビングに居るときは、弟が遊ぼうと言ってきても素っ気ない返事をした。二階に上がり二人きりになった瞬間、思う存分僕なりの優しい兄に変身した。
夜中。ふと目を覚ます。いつも泣き出しそうな時間に子供はまだ寝ているようだ。妻は横でぐっすり眠っている。どうして目覚めたのか。気配がしたのだ。暗がりの向こうで何か動いている。耳を澄ますと「キャッキャッ」と子供の声がする。ご機嫌だ。
「お父さんとお母さん寝てるからお姉ちゃんと遊ぼっか」
「うん。遊んで」
「なにする? 絵本読んであげよっか」
「ううん。お姉ちゃんの毛が触りたい」
「いいよ」
「鼻も触らせて」
「いいよ」
「かさかさだ」
「うん。まだ少し眠いから。日中には湿ってるよ」
「へえー!僕と全然違うね」
「こっそりそっちのベッドにあがるね」
「すごーい。そんなに飛べるの?」
「秘密だよ。お父さんとお母さんに。まだ見せたことないから」
「見せないの?」
「うん。すごいって言われたらなんだか恥ずかしいのよ。どんな顔したらいいのかわからないから」
「わかる。僕も本当はこうやって話せるけどもう少し後にしてる。」
「どうして?」
「徐々に見せないと勿体ないから。一気に見せるとすぐに慣れちゃうから」
「大人ってすぐになれちゃうからね」
「そう、困ったもんだね。キャハハ」
「眠くなってきた?」
「うん」
「じゃあ、また明日の夜中話そうね、秘密だよ、おやすみ」
「大丈夫。まだ話せること知らないから。おやすみ」
居てもたっても居られず、咳払いをして僕はトイレに立ち上がる。
おまめと子供を通り過ぎるとき、二人はすやすやと寝息を立てている。薄目を開けている二人を僕は見逃さない。
【プロフィール】山名文和(アキナ)
1980年7月3日生まれ。2012年、秋山賢太とお笑いコンビ「アキナ」を結成。
レギュラー番組を多数抱えるほか、『キンブオブコント』『M-1グランプリ』『THE MANZAI』で決勝進出を果たす。
愛柴は、保護施設から迎えたおまめ(10歳)。
おすすめ記事
-
世界でいちばん大切な柴犬が、アレルギーに立ち向かう物語【Ta-Taってなんだ?】
「柴犬は丈夫で、病気にもなりにくい犬種である」。
まことしやかに囁かれるこの文言ですが、ほんとうにそうでしょうか?
もちろん、犬種としての完成度がとてつもなく高い柴犬だから、そういった側面はあります。
でも、いざそれぞれの個体を見ていくと、丈夫で病気にもなりにくい、とは言えないような気もするのです。
実際に「病気にならない」などということはないし、飼い主はそのためにやるべきことがある。
今回は、柴犬に関わる方たちすべてに読んで欲しい、ある柴犬とその家族のお話。
ご本人からのレポートは、愛情たっぷりで示唆に富んだ物語でした。
※文章はご本人の了承を得て編集しています
エッセイ
※画像はすべてイメージです
※この記事は個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません -
【累計1億2000万食突破!完食率95%】「ココグルメ」は元気に夏を乗り越えたい全柴犬に食べてほしい!
みなさんは、犬も夏バテになることを知っていますか。とくに柴犬は、厚い被毛や水を飲まない性格などから注意が必要です。
夏バテと上手に向き合う秘訣は、なんといっても食事。
累計1億2000万食を突破し、完食率95%。フレッシュフードの王道といえる「ココグルメ」は、夏を元気に乗り越えたい柴犬にぴったりなのです!
「今だけ初回限定500円」のキャンペーン情報もありますので、最後までお見逃しなく!
(PR 株式会社バイオフィリア)
PR -
【取材】ハワイの柴犬に会ってきました!10頭が集結!
日本を代表する犬といえば、我らが柴犬。
ところが近年、世界中で柴犬ファンが増えています。そんな中「柴犬ライフ」が目をつけたのは、南の楽園ハワイ。柴犬オーナーが多く、定期的にオフ会まで開催されているとか。
そんな噂を聞きつけ、今回はハワイの柴犬たちを取材してきました!
海外取材 -
【インタビュー】お笑い芸人・ニューヨーク屋敷、「拒否柴」を掘る。
世界中の人々を魅了する「拒否柴」。彼らのすべてが詰まったその行動は、柴犬を語る上では外せません。そして拒否柴がここまで話題になるのは、“映える”ことも理由のひとつ。
では…拒否柴を「版画」にしてみたら、どんな作品ができあがるのでしょうか。
最近版画製作を始めた、お笑いコンビ「ニューヨーク」の屋敷裕政さんに、拒否柴を掘っていただきました! インタビューと合わせてご覧ください。
取材 -
「くっっっさ!」耳をほじった足が臭すぎてビクッとなる柴犬。最後足を隠してて笑う【動画】
今回登場するのは驚いてしまった柴犬たち。そうはいっても誰かにビックリさせられたとか、なにかアクシデントが起きたとか、そういうことが原因ではありません。全ての原因は彼ら自身にあったのです…!
-
ゆっくりゆっくり登場する柴犬に「外で見るんじゃなかった」「表情がいい」と爆笑【動画】
柴犬を下から見る…たったそれだけでいつも見ているものとは違う光景が目に飛び込んできます。つぶらな瞳はさらにつぶらに見え、モフモフのお顔はさらにモフモフに見えます。これはクセになる…!
-
【取材】「ときろう」が望むバランスで関わる。17歳まで元気でこれた秘訣は干渉し過ぎない距離感 #38ときろう
平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。 この特集では、レジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らすうえで大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただきます。今回登場してくれたのは、17歳のときろうくん。小さい頃から食が細かったため、何でも食べさせてきたということですが、そんなときろうくんの長寿の秘訣とは。
-
「オモチャ置いてきなさい」と言われた柴犬が最後にとった行動に爆笑【動画】
ふとした瞬間、柴犬から出てしまう人間っぽさ。特にちょっとイラッとした時なんかは、人間っぽさを隠す気などないように見えます。もしかして本当の本当は、中身は人間なんじゃ…?
-
【“既視感ゼロ”の柴犬グッズが爆誕!】ウ◯チ姿が愛おしすぎるコラボプロダクトがついに完成!
柴犬を心の底から愛している私たち。とくに柴スマイルやオコ柴、拒否柴は彼らの特徴があらわれていて大好き。
でもちょっと待て…もうひとつ、忘れてはならない愛おしいシーンがあったぞ。それは、背中を丸めて“ウンチなう”の姿だ。
そこで私たち柴犬ライフは、ドッグブランド「PEGION(ペギオン)」とコラボしてオリジナルの柴グッズを製作!
柴犬と暮らす人もそうでない人も、とにかく柴犬を愛してやまない皆さまへ。とんでもない柴グッズが爆誕です!
ストア情報
特集
-
柴犬(しばいぬ)の性格/基本情報
柴犬のからだの特徴や性格、歴史など基本情報をご紹介!
-
豆柴(まめしば)の性格/基本情報
豆柴のからだの特徴や性格、歴史など基本情報をご紹介!
-
子犬/はじめての柴犬(しばいぬ)
柴犬ビギナーの不安を解消!迎える前の心得、揃えておきたいアイテム、自宅環境、接し方などをご紹介
-
柴犬ライフ ストア
厳選&オリジナルの柴グッズが勢ぞろい!
-
【特集】新・家術〜進化型家電と、新しい愛情物語
愛犬たちとのかけがえのない生活をもっと楽しく快適に暮らすために。
-
【特集】レジェンド柴の肖像ー12歳を超えて
12歳を超えた柴犬を取材し、長寿の秘訣を探る。
-
【特集】保護柴と家族になって
-
【マンガ連載】こいぬと柴犬
「柴犬ライフ」オリジナル作品!
-
【連載】アキナ山名とおまめのラブい日々
山名さんご本人が綴る“柴犬ライフ”エッセイ。
-
【特集】柴犬のお悩み解決NOTE
ドッグトレーナーがみなさんのお悩みに応えます!
-
柴犬 病気辞典
獣医師監修のShiba-Inu Lifeオリジナル病気辞典。あなたの愛する柴犬を守るための情報満載
-
柴犬里親/保護犬情報
Shiba-Inu Lifeでは、保護犬を一頭でも多く救うための活動支援をしています。
-
SHIBA-INU LIFEとは
柴好きによる、柴好きのための、柴犬情報メディアです。その規模は、日本最大級!