2024年9月1日7,571 ビュー View

『十二歳』ーアキナ山名とおまめのラブい日々#25

お笑いコンビ「アキナ」の山名文和さんは、2020年6月9日に愛柴のおまめを迎えました。保護犬施設からやってきた彼女は、当時8歳。

長年夢みてた“柴犬ライフ”を、ようやく実現した山名さん。おまめとどのように出会い、どんな生活をおくっているのでしょうかー。

アキナ山名と柴犬おまめの最高にラブい日々を、山名さんご本人が綴っていきます。

#25は、おまめが12歳になりましたー。

『十二歳』ーアキナ山名とおまめのラブい日々#25

僕は７月で44歳になり、その月末におまめは12歳になった。

幼い自分が僕を見たらもうおっさんで、今の自分が見たら意外とそうでもない。若手の劇場に出ればおっさんで、NGKに出ればまだまだ若手。自分の位置が溶け込む場所に寄って変化する芸歴になった。

鼻息荒くして年齢など関係ないと言えばそんなものはどこかに飛んでいき、立ち止まって静かに息を吸えばもうこんな年かと思ったりもする。

自分の現在地を想うと、やっぱりまだまだで。やりたいことがたくさんあって、なりたい自分は程遠い。

撮影:山名文和(アキナ)

カーネル・サンダースは、ケンタッキーフライドチキンの経営を始めるに辺り1009回断られ1010回目でようやく賛同する人間が現れ今の原型が出来た。その時、65歳だったと。

かっこよすぎる。

いやいや、かっこよすぎる言うてるけどそれまでの日々どんな想いやったかわかる？　そこ感じんと、結果だけ見てかっこよすぎるて浅はかやん。なに、お前。

ってなるかもしれない。

でも、どうせ生まれてきた意味がないのなら、好きなことをとことんやり続けたい。

人生は思い出作り。

と、教えてもらった時、そうでありたいと強くおもった。遠い未来に怯むことなく目先のことだけぼんやりとうららかに見つめていたい。やめていきたい事があって、続けていきたい事があって、これからやりたいことがまだまだあほほどある。

撮影:山名文和(アキナ)

「青春」という言葉は仏教用語らしい。

青い春。青年から大人になる過程の頼りなくも愛おしい時間。世の中のことなど何もしらないまま、なりふり構わず、自分の行動を顧みることもなく、一人で生きていけると息巻いた。本当は色んな人にもたれかかっていた。にもかかわらず、それらをないことにして強がった十代後半から二十代半ば。

その後には、季節になぞって三つの過程がある。「朱夏」「白秋」そして「玄冬」と続いていく。

「朱夏」は、五十歳半ばくらいまでのことを指すらしい。ギラギラと照りつける太陽の下、ばりばりと働くとき。「白秋」は六十歳辺りからそれまで実った人生を有意義に過ごす時間。そして「玄冬」八十歳以降の次の生命への準備。

僕は今まさに「朱夏」

それなりに成熟した自分の芯を武器にこの世界で踊る、踊る、踊る。躓き、擦りむき、立ち上がる。一時の感傷に耽る暇などない。誰もしらない小さな喜びに満足している時間もない。誰かの人生を覗いて話す余裕もない。朝は希望に起き、昼は努力に生き、夜は感謝に眠る。少ないけれど幾らかの人に守る約束だけをすれば、顔をぱんぱんに膨らませて走るのみ。走る、走る、走る。

そう、

踊る、踊る、踊る

の感じに僕は先ほどこっそりハマって、走る、走る、走るで締めくくりたくなった。自分で書いていても、スピード感が出てきて文章にリズムが生まれてきている感じがして、今皆様も軽やかに読めたんじゃないでしょうか。

このことを踏まえて、もう一度。

僕は今まさに「朱夏」

二周目、ありがとうございます。

撮影:山名文和(アキナ)

おまめが十二歳ということは、だいたい六十過ぎ。彼女は「白秋」に突入。どんな犬生が実っていますか。寂しいこと苦しいことたくさんあったでしょう。四年前、夜になると施設で毎晩遠吠えをしていると職員さんに教えて貰ったあの日。預かる日、「夜は注意してください」と言われてから、優しいあなたは一度も夜に遠吠えをしません。

ただ今となっては、出掛けるのがわかると、絶対に連れていけと遠吠えしますね。むちゃくちゃ愛おしい。過去の寂しかった夜など全て忘れて、今この家でゆっくりしてくれていたら、僕は非常に嬉しい。そして、あと三十年生きてくれたら完璧だと僕は思っています。