いつまでも子犬のように小さくて愛くるしい豆柴。室内飼いにも適したサイズで大人気です。
でも、豆柴を家族として迎える前に、ぜひ知っていただきたいことがあります。豆柴の特徴や歴史、飼い方などの基本情報を紹介していきます。
豆柴(まめしば)のルーツ・歴史
豆柴が繁殖されるようになったのは1950年(昭和25年)頃で、半世紀以上の歴史があります。京都の柴犬愛好家が「樽井荘」の犬舎号で、小さな柴犬に「豆柴」と名付けて繁殖したのが始まり言われます。
日本犬保存会が1934年(昭和9年)に定めた「日本犬標準(スタンダード)」では、小型犬に分類される柴犬の体高は、オス38cm~41cm、メス35cm~38cmとされています。しかし、それよりも小さい柴犬は、戦前から日本各地の山間部で飼われていました。小型の柴犬は「小柴」「尺柴」と呼ばれ、小さな獲物を追う猟犬として重宝されていました。
1991年(平成3年)頃から新聞、雑誌、テレビなどのメディアに取り上げられ、豆柴の名前は広く知られるようになります。人気が出て豆柴が高額で取引されるようになると、残念ながら悪質な繁殖をしようとするブリーダーも出てきてしまいました。
柴犬をポメラニアンなどと交配させたり、近親交配を繰り返して異常を起こさせ、無理やり矮化(わいか)した子犬を産ませたり……。さらには、適切な量の餌を与えず、未熟に成長した柴犬が豆柴として売り出されることもあると言います。
ペットショップなどで「小柴」と表示されて高額で売られていたのに、成犬になったら標準サイズの柴犬に育ったというトラブルがよく起きているようです。
豆柴(まめしば)の血統書
日本犬保存会(通称:日保)は、「柴犬を矮化し小さくするという行為は柴犬を正しい姿で固定化し、後世に伝えるという本会の主旨を根底から覆すもの」として公認せず、「豆柴」と明記した血統書は発行していません。
また、ジャパンケネルクラブ(JKC)でも、「豆柴」は販売上の商品名であり、犬種標準(スタンダード)から外れていて健全性に欠ける場合があるとして、血統書に犬種名として「豆柴」とは表記しないとしています。
よって日保とJKCでは、小型の柴犬はスタンダードから外れた「柴犬」として登録されます。
しかし、天然記念物柴犬保存会(通称:柴保)では、体高が30cm程度にとどまるものに対しては「小柴」という部門を設けて登録をしています。この会が理想とするのは、縄文時代の遺跡で発見される犬の骨格に近いこと。
遺跡では標準的な柴犬よりも小型の犬が見つかっているため、小型の柴犬は異常な矮化ではなく、もともと存在する性質であると考えました。「小柴」部門の犬は標準サイズの柴犬とは交配せずに保存し、体は小さくても理想的な柴犬には称号が与えられます。
「豆柴」のスタンダードを柴犬とは別に定め、「豆柴」と明記した血統書を発行する団体は、2018年5月現在、日本社会福祉愛犬協会(KCジャパン)と日本豆柴犬協会(JMA)のみです。
豆柴(まめしば)の特徴
豆柴は小型でありながら、素朴な気品と体力を持つ柴犬の性質をそのまま受け継いでいます。世界で初めて豆柴を公認した日本社会福祉愛犬協会の豆柴犬種標準書(スタンダード)から、豆柴の特徴を紹介します。
サイズ
オス/体高30~34cm(通常の柴犬は38~41cm)
メス/体高28~32cm(通常の柴犬は35~38cm)
小型ですが丈夫で引き締まった体をしています。
頭
正面から見ると柴犬に比べ、やや丸みを持っています。額は広く扁平で、狭いものやシワのあるものは好ましくないとされます。ストップ(額段)は柴犬に比べてやや深く、豊かに張った愛らしい頬をしています。
耳
小さくて三角形で、少し前に傾くようにしてピンと立つ「立ち耳」です。厚みのあるものが良いとされます。
目
力があるやや緩やかな三角形。色は濃い茶褐色が理想とされます。
口
オスはやや短めで、ふっくらと丸みがあります。メスはオスよりもやや細めですが、しっかりとした力強さを持ちます。
鼻
どの毛色でも鼻は黒色です。小さくまとまっているのが良いとされます。
胸
充分に発達した力強い卵型。
背・腰
背から腰、尾の付け根までまっすぐなライン。
尾
太くて力強い、くるりと巻いた「巻き尾」か、背中に向かって鎌のように伸びる「差し尾」です。
四肢(前足・後ろ足)
後ろ足が前足よりも力強い構造を持ちます。
被毛
上毛と下毛のあるダブルコートです。上毛はかたい直毛、下毛はやわらかく密生した綿毛を持ちます。
毛色
赤・黒・胡麻(ごま)・白があります。赤・黒・胡麻は、あごの下から首、胸の下、お腹にかけて白い毛となる「裏白」が必須です。白は、純白ではなく淡いクリーム色をしています。
豆柴(まめしば)の性格
基本的には柴犬と同じですが、小型家庭犬として性格は明るくフレンドリーで、性質はシャイであってはならないとされます。
悪質なブリーダーの見分け方
人気のある豆柴は高額でも売れるため、豆柴に見える犬を無理やり繁殖させるブリーダーが増えています。悪質なブリーダーを見分けるポイントを参考として紹介します。
見学を拒否する
エサを充分に与えない、掃除をしないなど、劣悪な環境で飼育している可能性があります。「動物の愛護及び管理に関する法律」の第20条でも、犬の販売業を営む事業者は、あらかじめ購入希望者に犬の現状を見せて対面で説明することが義務づけられているので、見学の拒否は法律違反に当たります。もし見学をするつもりがない場合でも、見学が可能かどうかは必ず聞くのがよいでしょう。
親犬や兄弟犬を見せない
他犬種と交配させていたり、劣悪な環境で育てていたりする可能性があります。ただし母犬の場合は、出産前や出産後のデリケートな状態であるために対面を断るケースもあります。断られた場合は、その理由をきちんと説明してくれるかどうかが判断のポイントになります。
若すぎる子犬を販売している
「動物の愛護及び管理に関する法律」の第22条では、犬猫等販売事業者は、出生後56日を経過しない子犬や子猫を販売のために引き渡したり、展示したりしてはいけないと定められています。充分に育っていない小さすぎる子犬のうちに販売しようとする事業者は悪質である可能性が高いと言えます。
ワクチン接種をしない・接種の証明書を発行しない
ワクチン接種済みであると嘘をついたり、費用の面から獣医師に頼まずに自分で接種してしまったりする事業者もいます。証明書は必ず発行してもらうようにお願いしましょう。
豆柴(まめしば)の飼い方のコツ
豆柴は小型ですが、狩猟犬の性質を引き継いでいるので運動が大好き! 室内飼いをしていても、外へ散歩に連れて行ってあげましょう。
大きく育ってしまわないように、ごはんは少ししかあげない……というのは大きな間違い! モリモリごはんを食べたら通常の柴犬サイズになってしまったというのは、もともと大きく育つ性質を持っていたから。しっかり食べて、丈夫で健康でも小さいまま、というのが本来の豆柴です。体重や運動量から必要なカロリーを計算して、適切な量のごはんをあげましょう。
かかりやすい病気
豆柴は基本的には柴犬と同じく、皮膚病にかかりやすいのが特徴です。さらに、体が小さい豆柴は、特に「膝蓋骨脱臼」に注意が必要です。足を1本上げて3本足で歩いているようなら、できるだけ早く獣医師に相談しましょう。体が小さいほど発症リスクは高いと言われています。
うちのコ、「豆柴」じゃなかった……?
両親が豆柴ではなくても、小さな柴犬が生まれることがあります。その場合は豆柴ではなく、「豆柴タイプ」「豆柴サイズ」と呼ばれます。子犬のうちは他の柴犬より小さくても、大きく育つ可能性は充分にあります。
また、普通の柴犬から小さな柴犬が生まれるように、豆柴の両親から大きな柴犬が生まれる可能性もゼロではありません。
小さくて可愛くて、飼いやすいのが豆柴の魅力。でも、豆柴だと思っていたうちのコが、成長したら普通の柴犬サイズになってしまったら?
それでも変わることなく、愛情を持ち続ける。命あるものを家族として迎え入れるのならば、その覚悟を必ず持っていただきたいと思います。