【取材】耳が遠くなった不安で胃腸炎や分離不安に…14歳のネロを支えるのは、いつだって家族の愛。#2
平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。
この連載では、レジェンドたちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただきます。
今回は、福岡に暮らす14歳のネロちゃん。愛柴にとっていいことは、若いころとシニアでは変わる……そんな当たり前だけど大切なことを気づかせてくれる取材でした。
ネロちゃん プロフィール
年齢&性別
14歳の男の子
体重
19kg
大好きなこと
食べること、オーナーさんと一緒にいること
既往歴
子犬の頃から肝臓の数値が悪かったものの、病院の指導で手作り食に変え、数値は正常に。
7カ月で去勢手術。
10歳頃、片方の前足に関節炎のような症状が出るが、分量に注意しながらヒアルロン酸やグルコサミンを含むサプリを継続して与えたところ、症状は改善。
13歳になってから耳が遠くなり、不安から胃腸炎や不眠などの症状が出る。
できるだけ一緒に居ることや、不安を和らげるサプリを与えたことで、現在では落ち着いて暮らしている。
野犬の子が勇ましい番犬に
オーナーの田村さんとネロちゃんとは、どんな出会いだったのでしょうか。
「山の近くに住んでいた頃、近所に“パトラ”という賢い野犬がいたんですが、あるとき、ウチの縁の下で3頭の赤ちゃんを産んでたんです。2頭は里親ボランティアの方に引き取っていただいたんですが、この子だけウチで育てることにしました」
パトラ(『フランダースの犬』に出てくる主人公の愛犬・パトラッシュ)の子だからネロ(『フランダースの犬』の主人公)なんですね(笑)。
「はい(笑)。家のすぐ裏が山だったので、イノシシやウサギ、サルも出てました。この子は外で飼っていたので、よく吠える勇敢な番犬に育ちました」
でも、今はすっかり落ち着いていて、本当にお利口ですよね。
「10歳頃に引っ越しをして、家の中で飼うようになったんです。それからは勇ましい感じはなくなり、吠えることもなくなりました。引っ越した直後は、私とずっと一緒に居られるのが嬉しくて、眠たいのを我慢して起きてることもあったんですよ」
子犬みたいなかわいさですね。大好きで甘えてくれるのは嬉しいことですが、その反面、田村さんが一緒でないと不安になり、最近では少し大変なこともあるそうです。
いつも一緒にいたい!
引っ越し前は忙しくて中々一緒に居られなかったこともあり、現在はネロちゃん中心の生活を送っているという田村さん。
「この子は人に預けたりできないんです。馴れた人が一緒に居てくれても、私も一緒じゃないとだめみたいで。私がどこかに行ってしまうんじゃないかと、お風呂やトイレまで見に来たりもするんですよ」
最近、耳が遠くなってきたネロちゃんは、不安からくる胃腸炎など様々な症状が出たことがありました。
どこにでもついて回るというのも、不安からくる症状の一つでした。
「カウンセリングを受けたら、耳が聞こえないことへの不安からだろうと言われましたが、胃腸炎を繰り返したり、落ち着きがなく眠れなかったり、床を掘ろうとしたり、ついて回ったり。
また、普段は吠えない家の中で吠えることもありました。なので、私のベッドの横で少しでも安心して寝られるように、部屋の模様替えをしました。
それから、不安を和らげる『ジルケーン』というサプリを1日2錠与えところ、2、3日で効果がありました。今は1錠に減らしていますが、変わらず落ち着いています」
ネロちゃんが落ち着いてからはベッドも元の場所に戻したそうですが、普段の気遣いだけでなく、生活全体をネロちゃんに合わせて送られているんですね。
気になる食生活
肝臓のための手作り食から始まったネロちゃんの食生活。シニアになった今はどんなものを食べているのでしょうか。
「手作り食は1年くらい続けました。牛・豚・鶏をローテーションし、お芋などと一緒に調理して作り置きしていました。
肝臓の数値が落ち着いてからは、『アカナ』のドライフードを、鶏・魚・ラム・牛など、メイン食材が異なる4種類のローテーションであげていました。
ローテーションにするのは、バランスや飽きのこともありますが、同じものを食べ続けるとアレルギーになるかもしれないと聞いたからです。
今は、『アカナ』のシニア用と、朝は水分の多い『ブッチ』(3種のローテーション)に、私が飲んでいる自家製スムージー(豆乳と自家製ヨーグルトに、いちご、パイナップル、桃、みかん等を入れたもの)もほんの少しあげています。
市販のおやつはあまりあげていません。その代わりリンゴを一年中あげています。
その他、季節の果物も少し。最近では寝る前の水分補給として、すりおろしたリンゴをあげたりもしています。
基本的には、食べても大丈夫なもので、食べたそうにするものをあげているのですが、とにかくよく食べます(笑)」
今の食生活がネロちゃんに合っているようで、かかりつけ医からも「今のままを続けてください」と太鼓判。
ちゃんとケアした上で、食べたいものをモリモリ食べれば、犬も人間も元気になりますよね。
食事以外で気を付けていること
耳が遠くなるなど、若い時との違いも出てきたネロちゃん。食事以外ではどんなことに気を付けているのでしょう。
「耳が遠くなったので、声は聞こえにくいのですが、手を叩く音は聞こえます。なので、散歩やオシッコに行くとき、ご飯のときなどは、手を叩くのが合図になっています。
また、寝ているときはマットや周りを叩くなどしてから起こします。いきなり身体に触れるとびっくりしてしまうので。
それから、以前は月に1回、車で30分かけてシャンプーに行ってました。車に乗るのも大好きだったので。ですが脚が少し弱くなり、車に乗るのが負担になってきたんです。
そこで、家から近いかかりつけ病院のトリマーさんに変更し、頻度も2カ月に1回にしました。行かない月は爪切りとお尻絞り(炎症を防ぐため、肛門腺に溜まった分泌液を絞り出すこと)をやっています。
あとは、いつも様子を観察してますね。ウンチの量や色、硬さ、オシッコの色など、何か変化があれば、素人判断せず、すぐにかかりつけ医に相談しています。
また、血液検査を年に1回、調子が悪い時はその都度行なっています。そして、何があっても良いように、エリザベスカラーとハニカムマット、介護補助服は常に用意しています」
愛犬の負担は減らして、自分が手を掛ける。そして何かが起こる前から備えをしておく。忙しい日々の中では難しいことですが、見習いたいレジェンド習慣です。
人間の都合ではなく、犬に合わせた暮らし
ネロちゃんの長寿の秘訣はなんだと思いますか?
「特別なこと、変わったことは言えませんが、愛情と、よく観察すること、そして今は無理をさせないことでしょうか。
ゆっくり、のんびりして、たくさん寝る。散歩のときも、ウンチさえ出れば、あとはネロがしたいことを一緒にするようにしています。ボールで遊んだり、日向ぼっこしたり、ただ風に吹かれたり。
たくさん歩かせるとか、お出かけするとか、以前はネロのためになっていたことも、今は違うと切り替え、ネロのしたいことにこちらが合わせる生活になりました。とにかく今は”ネロファースト”です。
と言いながら、やっぱり日々の生活もあるので(笑)、お留守番などお願いすることもあります。そんなときはちゃんと頑張ってお利口にしてくれるので、お互いに持ちつ持たれつ、という気持ちで暮らしています」
特別なことや、良かれと思って色々やることが、必ずしも愛犬のためになるわけではありませんよね。
それよりも、愛すること、よく見ること、したいことを尊重すること。そんな普通のことの方が、愛され続けたその子にとっては、何よりも特別で大切なものになるのではないでしょうか。
撮影・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
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