2020年11月26日10,749 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】♯30 拾い食いが悩み。おやつを使わないしつけ方法を知りたい【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。

今回は散歩中の拾い食いについて。パピーなら拾い食いは当たり前ということ、そして拾い食いを悪化させるのは人間だと言うことを頭に入れながら、よりよい対処を学びます。

今回のお悩み:散歩中にすぐ拾い食い。おやつでのしつけは肥えてしまいそうなので、おやつなしにしつけたい。

1歳未満・男の子

散歩に行くと拾い食いをして困っています。

 

毎回食べないか常に下を見ているのですが、うんちを取ってる隙に何かを咥えてしまいます。

 

毎回、口から無理やり取っているのですが、獣医師に相談したら「無理に取らず、食べそうになったらおやつで釣ってくださいね」と言われました。

 

ですが毎回おやつをあげての散歩だと肥えてしまうのではないかと心配です。

 

また楽しく散歩をさせてあげたいのに、こっちも神経質になってしまって、散歩は楽しいと教えてあげたいのにもどかしくて困っています。

 

拾い食いは「犬に原因」がある場合と「人に原因」がある場合が

柴犬

Ekaterina Brusnika/shutterstock

 

1歳未満の拾い食いは、ある程度は仕方ないと思います。

 

犬の口は人間の手と同じ。口でいろんなことを覚えますし、いろんな情報も手に入れます。

 

すべてストップとはいきません。今、何ヶ月齢かはわかりませんが大人になれば落ち着いてくる子がほとんどです。

 

しかし、中には落ち着かない子もいますし、オーナーさんの対応によっては拾い食いが悪化していく場合もあります。

 

拾い食いは、犬に原因がある場合と、人間に原因がある場合があります。

 

犬に原因があるといっても、元を正せば人間に原因があるのですが、ここではわかりやすく犬の方ということにしておきます。

 

<犬に原因がある場合>

・食異常

・餌が足りていない

・食欲が旺盛過ぎる

・既に拾い食いで“快感”を得てしまった

など。

 

食異常は食べられないものでも食べ続けるなど、食に対する異常性のこと。もっと小さい時に出るか、もしくは遺伝によります。

 

こういう病的なことを書くとすぐ「うちはこれじゃないか」と飛びつく人がいますが、可能性はかなり低いと思ってください。

 

あなたの目の前の犬の拾い食いは、おそらく異常ではありません。

 

餌が足りていないのは、オーナーさんがフードの量を間違ってしまっているケースです。これが意外と多いので、今一度、体重や犬種に合わせてきちんと計算、確認しましょう。

 

食欲が旺盛とされる犬種(ラブラドールやビーグルなど)は、他の犬種に比べて拾い食いが癖になってしまう場合が多いです。

 

拾い食いで既に“おいしい経験”をしてる子は、暫くは“落ちてる美味しいもの探し”をすると思います。

 

拾い食いはオーナーさんの対応次第で悪化する

柴犬

UvGroup/shutterstock

 

次はオーナーさんが原因で悪化してしまうパターンを紹介します。

 

一言で言えば、犬が何かを拾った時に“騒いじゃう”オーナーさんは、拾い食いを悪化させます。

 

「犬に怒っちゃダメ」とよく聞くかもしれませんが、怒ってなくても大きな声を出したり、慌てて口に手を突っ込んだりなど、犬がピクッとするようなことをするのはよくありません。

 

僕の経験から言っても、こちらから与えたものより、犬が自分で見つけたものの方が執着心が強いように思います。

 

犬が宝物を見つけたような気持ちになっている時に、オーナーさんがピクッとする何かをすれば、犬は「奪われる!」と反射的に感じます。

 

「奪われる!」と思えば、犬は奪われないように唸ったり、より強く噛んだり、「奪われる前に飲み込んでしまえ」といった行動に出るのは当然。

 

それを繰り返し経験していれば、「すぐに唸る」「咥えて逃げる」「すぐに飲み込む」犬になるでしょう。

 

獣医さんは、こうならないように「無理にとらず」とアドバイスしてくださったのです。

 

拾い食いがひどくなる場合、犬だけ、または人だけ、どっちかだけに原因があることはほとんどありません。

 

2つの原因が合わさりひどくなっていきます。そして、それを改善させることができるのは“人の方から”だけ。

 

ですので、騒いでいるのであればまずはそれをやめてください。そこからがスタートです。

 

まずは「ついて」ができるように練習を

柴犬

WildStrawberry/shutterstock

 

おやつと交換に口の中のものを出してもらうだけでもOKですが、おやつを与えるタイミングによっては、拾い食いが強化される可能性もあります。

 

根本的な解決をしたいなら、お散歩を大切に考えましょう。

 

・まずは、拾い食いをさせない、しないお散歩を目指す。

 

・それでも拾ってしまう時はあるので、その時の解決方法を見つけておく。

 

この二段構えで考えます。

 

拾い食いをさせないお散歩は“ついて”を教える必要があります。

 

“ついて”とは、オーナーさんを追い越さない状態で、横に寄り添って歩くこと。

 

グイグイ引っ張ったり、右や左に自由に行かせていると、犬が拾い食いしやすいだけでなく、車に轢かれるといった危険があります。必ずマスターしてください。

 

ここからは想像ですが、普段の散歩では、愛柴に匂いを嗅がせてあげて、犬のペースで好き勝手にお散歩する感じではないでしょうか。

 

そのお散歩では、拾い食いは増えます。

 

オーナーさんは姿勢を正してまずはしっかりと歩いてください。犬に合わせて止まる必要もありません。

 

堂々としっかり歩き、歩くペースを自分の方に持ってきてください。

 

このとき気をつけなければいけない部分がすごくたくさんあるため、説明しようと思うと膨大な文字数になってしまいます。

 

ですのでここでは詳しく書きませんが、身の回りで上手に綺麗にカッコ良くお散歩している方がいらっしゃったら、その人のマネをしてください。

 

それだけで、大きく変わる人は変わります。

 

犬に“ついて”を教える場合は、トレーナーさんにお願いして一緒に練習してください。

 

練習の仕方はオーナーさんの体力や現状がどうなのかで始めるレベルが変わってきますので、トレーナーさんと一緒に進めていくのがベストです。

 

拾い食いをしたら「ゆっくり」「静かに」対処する

柴犬

Vagengeim/shutterstock

 

拾ってしまった時の対処は、こちらがつかむのが難しいもの、つかむとちぎれたりして飲み込みやすくなるものの場合は、おやつと交換でも構いません。

 

しかし、それ以外のものはゆっくりと口の中から出すようにしてください。

 

大きな声、早い動きは避けて、とにかくゆっくりと。

 

これで上手くいくようであれば、執着もたいしたことはありません。ゆったり対処していれば、ひどくなる恐れは1つ減ります。

 

このような時のために“アウト”、“出して”の練習をしておきましょう。

 

愛柴が好きな、長さのあるおもちゃの片方を噛ませて、「アウト」もしくは「ちょうだい」と言葉をかけます。

 

言ったあと口から離してくれたら、それがたとえ偶然でもおやつをあげてください。

 

練習する時は必ずリードをつけましょう。練習中にどこかに行ってしまうことを防ぎます。

 

先にも書きました通り、自分で求めたモノのほうが執着がつよい傾向があります。

 

こちらから与えたものでアウトができなければ、自分で拾ったもののアウトは難しいでしょう。

 

しっかりとお家でアウトの練習を頑張ってください。

 

ウンチをしている時は、お座りしたまま待てをさせれば解決します。

 

もしできないのであれば、お座り、待てのトレーニングを。

 

これら基本のコマンドはできなくても困ることがないかもしれませんが、意思の疎通も増えますし、ケジメもメリハリもできます。

 

おやつがないとやらない“芸レベル”だと、大人になるにつれ社会化や慣れの影響、エネルギーの溜まり具合ではできないときが多いかもしれません。

 

もしおやつなしでは出来ないとあらば、一度トレーナーさんに見てもらうと良いと思います。

 

犬を擬人化するのはやめ、正しい知識を学んで

柴犬

thirawatana phaisalratana/shutterstock

 

最後に気になったことをひとつ。

 

ご質問に「肥える気がして」とありますが、おやつは太るものばかりではありません。

 

“おやつ”という言い方をするからそのように考えてしまうと思うのですが、ご褒美です。食べられて嬉しければOK。

 

好きな野菜があればそれをカットしたものでも大丈夫ですし、犬用の野菜チップスなるものも売っています。

 

ご褒美の定義で言えば、“褒めるだけでOK”な場合もあります。

 

今回のご質問者さまに限ったことではないですが、なぜか犬のことになると“頭がカチコチ”になる方が多いですね。

 

そして「犬も大事な家族!」と言う割には、犬への知識を得ることをせず、考えもせず、言われたことだけをやりがちです。

 

そしてその少ない知識で犬を擬人化や擬子供化してしまう。

 

それでは、犬とすれ違いを生むばかり。

 

犬には人間に似ているところもたくさんありますが、的外れなところを擬人化するのは危険。

 

あなたの愛柴も世界に1頭、あなたも世界に1人だけ。そしてそこには絶え間なく“時間”が流れています。

 

1年前、もっと言えば1週間前のアドバイスだって、今も有用とは限りません。

 

変化していく動物2頭以上(犬と人)への“ずばり”のアドバイスや答えはどこにもありません。

 

オーナーさんが日々あれこれ考え、努力して作っていくものです。

 

ぜひとも頭を柔らかく、知ろうとする意欲を保ちながら犬へ添い遂げてくださいませ。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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