2020年12月16日7,519 ビュー View

【取材】16歳の今も血液検査はすべて正常!元気の秘訣は旅行中も欠かさない朝晩のルーティン #8ユキチ

平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。

そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。

今回は16歳4ヶ月のユキチくんの登場です。血液検査もすべて正常値、健康そのものだというユキチくんの健康の秘訣とは!?

ユキチくんプロフィール

柴犬

年齢&性別

16歳4カ月の男の子(※12月現在)

体重

12kg

大好きなこと

お散歩、寝ること

既往歴

・パピー期より目に軽いアレルギー症状があり、目やにが出やすい。

・15歳の時にホットタオルで目やにを拭こうとした際に角膜を傷つけてしまい、点眼薬で治療。

 

運命の出会い?

柴犬

 

ユキチくんが、兵庫県にお住いのユキチくんパパ(いさやま)さん家族に仲間入りしたのは、16年前のこと。

 

67歳にしてインスタグラムでユキチくんの日常を投稿しているオーナーのユキチくんパパ(いさやまさん)が、当時を振り返ってユキチくんとの出会いを話してくださいました。

 

「じつは、柴犬を飼うまでに半年くらい家族会議をしました。

 

というのも、家族4人の好きな犬種が違っていたんですよ。

 

私は鼻がシュッと伸びたシェットランドシープドッグ、息子はビーグル、娘はコーギーを飼いたくて。

 

柴犬を飼いたがっていたのは女房だけだったんですね。

 

でも、結局は“誰が世話をするんや”って話になって、女房の意見が通りました。今考えると、半分くらい私も世話してるんですけどね(笑)」

 

飼うのは柴犬と決定してからも、半年間ペットショップとブリーダーを渡り歩いたというユキチくんパパさん一家。

 

運命の赤い糸をたぐり寄せたのも奥様でした。

 

同じ兵庫県内のあるブリーダーさんのホームページで奥様がお気に入りの子を見つけ、さっそくその子に会いに行くことに…。

 

「今でも覚えてますけど、その子には“4番”という番号がつけられていましてね。

 

生後40日くらいの、すごくやんちゃで落ち着きがない子だったんですよ。

 

それで女房が“ちょっとイメージと違う…”となったんですね。その時、比較のためにその4番の子と同じ小屋にもう1頭いて。

 

その子がジーーッとこちらを見ていたんですよ。で、落ち着きもあるし、“この子がいいんじゃないか”ということになったんです。

 

あの時の視線で決めた、と言っても過言じゃないですね。まさに赤い糸をたぐり寄せた瞬間だったと思います」

 

それからは、ユキチくん中心の生活になりました。

 

「この16年間、2泊3日以上の旅行をしたことがないんですよ。

 

つまり、旅行といえば1泊2日までなので、そんなに遠くには行けないです。

 

決まって関西圏。必ず車で行って、犬を連れて行く。どこにも預けられないんですよ、分離不安症みたいになって」

柴犬

 

旅行中は、自家用車の3列シートの最後列を倒して平らな空間を作り、そこにユキチくんが普段愛用しているマットを敷くなどして、寝る場所を作ってあげているのだとか。

 

最近では、『忠臣蔵』の舞台としても有名な赤穂市へ。思い出をたくさん作ってきました。

柴犬

 

「旅行先でも、夜、食事を終えたら散歩に連れて行かないといけないし、朝もみんな寝てる時間に私だけ早起きして散歩に行くんでね。

 

もう、ゆっくりできないんですよ(笑)。だから、旅行は1泊が限界。2泊は厳しいかな」

 

長寿の秘訣は1日2回の散歩

柴犬

 

旅行先でも朝夕の散歩を欠かさないユキチくん。16歳になった現在も、しっかりと自分の足で歩いています。

 

「長寿の秘訣のひとつは、散歩だと思うんですよ。

 

雨の日は本人(ユキチくん)が行きたがらないんでお休みすることもありますけど、365日ほとんど毎日、朝夕に散歩してますからね。

 

それと、うちは相当古い家で、敷地内に母屋と離れがあるので庭もわりと広いんです。

 

日中は家の中と庭を自由に出入りできるようにしてるので、たぶんストレスがないんですね。それもいいのかな、と思ってます」

柴犬

 

2〜3年前までユキチくんは自分の首で家の扉を開けていたため、何度か首を痛めて病院へ。

 

痛み止めの薬を飲んで治療する…ということを繰り返したのだとか。

 

そこで、パパさんは思い切った作戦に出ました。

 

「庭に出るには、玄関の網戸を開けなければいけない。それを自分で開けるとなると、また首に負担がかかる。

 

そこで猫に使うパタンってなる小さいトビラ(ペットドア)をつけようかと思って探したんですけど、いいのがなくて。

 

結局、網戸を下のほうをL字に切ったんです(笑)」

 

おかげで暖簾(のれん)をくぐるかのようにラクラクと家の中と庭の出入りができるようになったユキチくん。

 

「朝、外が明るくなってくるとひとりで庭に出て、門の下の隙間から外の様子をうかがってるんですよ。

 

ほんの数センチのわずかな隙間なので実際には外は見えてないはずなんですけど、鼻先だけ出して人の気配や匂いを感じてるんでしょうね」

 

歳を重ねるごとに周囲への興味が薄らぎ、体を動かすのが億劫になりがちですが、今でもユキチくんはお散歩が大好き。

 

こうして外の様子をうかがっているのは「早くお散歩に行きたい!」の合図でもあるそうです。

 

「それで、1回に20分から30分は歩きますからね。私も犬から健康をもらってる感じです(笑)」

 

16年間病気ナシ! ユキチくんの食事情

柴犬

 

ユキチくんのさらにすごいところが、この16年間大きな病気をしたことがなく、血液検査をしてもどの項目も正常値で内臓には一切問題がないことです。

 

毎日どんなものを食べて、健康な体を維持してきたのかでしょうか? 

 

「小さいころからずっと同じドライフードを食べてるんですよ。

 

じつは、生後数ヶ月の時にホームセンターに連れて行って、ペット用のカートに乗せていたら、そこから落ちちゃいましてね。脳しんとうを起こしたんです。

 

それで“これはヤバイ!”と、ホームセンターに併設された動物病院に駆け込んで助けてもらって、それ以来、そこがかかりつけの病院になってるんですけど、その時獣医さんに“こんなフードがありますよ”って教えてもらったのを、今もずっと食べ続けてます」

 

ユキチくんが食べているのは、成犬用の総合栄養食『Vets Plan セレクトスキンケア』。

 

こちらのブランドにはシニア犬用のフードもあるのですが、切り替えはしていないそう。

 

「ドライフードをお湯でふやかしたりもしてないですね。

固いままガリガリと食べてますよ。

 

ただ、人間と同じで夏場は多少食欲が落ちるので、茹でたササミなどをトッピングしてあげることはあります。

 

うちのはブロッコリーが大好きで、かぼちゃや大根も食べる。

 

それらをただ茹でて乗せてあげるだけで、完食しますね。

 

味付けもしてないのによく飽きないな、と思いますよ(笑)」

柴犬

 

これは16歳にして内臓に疾患がなく、歯も丈夫なユキチくんならではの食事スタイルなのかもしれません。

 

しかし、この健康な体を作り上げたのも、また“食事”。

 

ユキチパパさんは昔から「間食はさせない」と心に決め、おやつを与えることなく、ユキチくんの体調&体型管理をしてきました。

 

「昔、実家で飼ってた犬には、すき焼きのタレをごはんにかけてあげたり、タレに浸かったタマネギをあげたりしていて。

 

それがよくないことだなんて知らなかったんですよ。

 

もう30年も前のことなんでね。だから、ユキチを飼うことになって本を読んだら、“犬にネギ類や塩分はダメだ”って書かれていて、ビックリしましたね。

 

それで、塩分は控えさせよう、食べさせるのはドッグフードだけにしよう、と決めたわけです。

 

その結果、ここまで長生きしてくれているので、そうしてよかったな、と思います」

 

それでも最近は、お散歩に5ミリほどに小さく刻んだジャーキー的なおやつを持参して、坂を登りきった後などにごほうびとして与えることもあるのだとか。

 

口にふわっと味わいを感じる程度の量で、塩分過多の心配もなく、ユキチくんの歩く意欲をかきたてられるという、効果的なアイテムになっているようです。

 

おなかは絶対に見せません!

柴犬

オーナーのいさやまさんとユキチくん。

 

オーナーには従順な一方で、警戒心が強いことでも知られる柴犬ですが、ユキチくんは特に怖がりで、慎重な性格だそう。

 

「水が苦手で、水がある場所にはまったく寄りつかない」というのですから、雨の日に散歩に行きたがらないのも納得です。

 

そのほかも、家族以外の人からもらったものは口にしないなど、警戒心の強さを物語るエピソードは数知れず…。

 

「よくおなかを上に向けてゴロンと寝転がってる子がいますが、うちのは絶対にやりません。

 

“急所であるおなかを見せるのは、オーナーを信頼して甘えているポーズ”と言われているようなので、それをしないのはちょっとさみしいですかね(苦笑)」

 

最近、目専門の動物病院で診察を受ける際に口輪をはめられる苦い経験から、顔まわりを触られることには敏感になっているそうです。

 

しかし家族にはおなかも触らせてくれるので、ボディタッチでの体型チェックは可能。

 

腰まわりのくびれ方を中心にチェックして、ずっとベスト体重(14kg)をキープしてきました。

 

現在はやや細身の体重12kgで、加齢による後ろ足の衰えは多少見られるものの、健康そのもののユキチくん。“介護”とは、まだ無縁です。

柴犬

 

「それでも犬で16歳といえば、人間で80歳を超えているらしいんですね。

 

いつのまにか我々の年齢も抜かされちゃって(笑)。

 

お別れのことを考えるとさみしいし、ユキチの刺激にもなるかなと思って、“もう1頭飼おうか”という話はずっと前から出てるんです。

 

しかし、2頭目を飼ったことで元からいた犬が若返ったという話もあれば、元からいた犬が“オレはもういいんだ…”とすぐに亡くなってしまったという話も聞いたので、躊躇(ちゅうちょ)してるんですよ」

 

この問題に答えは出ず、未だ多頭飼いには踏み切れていないそうです。しかし、こんなことを思っているそう。

 

「柴犬はインディペンデント(独立、自立)というか、馴れ馴れしくない感じがするんですよね。

 

非常にいい距離感でいてくれるのが好きで、私は2頭目も柴犬がいいと思っているんです。

 

ところが、最初にあれだけ柴犬を推していた女房は、なんか違うんですよ。

 

今度は違う犬種も飼いたいみたいで」

 

家族会議はまだまだ続きそうです(笑)。

 

柴スタグラムに600いいね!

柴犬

桜の木の下で。

 

ユキチくんパパは、ユキチくんの日常や成長記録を毎日インスタグラム(@issa1982)にアップしていて、世界中の柴犬オーナー&柴犬マニアから「いいね!」をたくさんもらっています。

 

その数、ナント1投稿あたり平均600件!

 

「アメリカやフランス、スペイン領のマヨルカ島あたりにお住いの方からも“イイネ!”をもらいますね。

 

言葉が通じないので、コメント欄にハートマークをいっぱい打ってくれたりして(笑)。

 

私のほうも、柴犬の写真を見つけては位置情報を確認して“へぇー、こんなところでも柴犬が飼われているのか!”って見るのが楽しいんですよ。

 

このまえはモスクワから1000キロほど離れた、アフガニスタンとの境にあるような場所でも柴犬が飼われているのを発見して、ビックリしました」

 

ネット上とはいえ、柴犬つながりで世界を旅することは、若いころに地理の教員を志したこともあったというユキチくんパパにとっては大きな楽しみ。

 

世界中に柴犬好きな人々がいて「世界はひとつだ」と感じるんだそうです。

 

そんなユキチくんパパさんに、これからユキチくんとやりたいことをうかがってみました。

 

「神戸市(獣医師会)では、愛犬が16歳になると表彰してもらえるらしいんですよ。

 

うちは今年16歳になったので表彰してもらえるかと思ったんですが、“7月末現在で16歳”という規定があって、8月7日が誕生日のユキチは1週間遅くてダメだったんです。

 

それで来年に持ち越しとなったわけですが、これは何としても表彰状をとらせてあげたいですね。あとは、もう健康で長生きしてくれたら、それで…」

 

リモート取材中、パパのすぐそばに寝そべって、話を聞いているかのようだったユキチくん。

 

毛艶もよく、ユキチくんパパがちょっと動くたびに顔を上げたり、体を起こしたり…。

 

反応もよくて、とても16歳には見えませんでした。きっと長寿の勲章も得られるはず!

柴犬

 

最後に、“ユキチ”という名前の由来と、それにまつわるおもしろいエピソードをおうかがいしたので、そちらもご紹介します。

 

じつは、出身大学の創設者・福澤諭吉の名前から“ユキチ”と名づけたそう。

 

しかし大学の同期生から「偉大な福澤先生のお名前を呼び捨てにしとるんか!?」とツッコミが入り、「ちょっとまずかったかなぁ…」と後悔。

 

それ以降、「ユキチ」と呼び捨てにしにくくなってしまったんだとか。

 

「だから、私の中では本当は“ユキチくん”までが名前ってことになってるんですね。

 

ですが、当初“なんで出身大学の創始者の名前なんてつけるの?”と言っていた女房は、“ユキちゃん、ユキちゃん”なんて呼んでるので、参りました(苦笑)」

 

ちなみに、人から名前の由来を聞かれた時には「金運がよさそうだから(※福澤諭吉が1万円札の顔のため)」と答えていることも明かしてくれました。

 

ユキチくんが金運をもたらしてくれたか…は謎ですが、たくさんの思い出と幸せを運んできてくれていることは間違いないですね!

 

取材・文/永野ゆかり

 

 

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