【取材】手作りの歩行補助機「クルクルマシーン」でストレス知らずな19歳。病院も介護グッズも、つねに最善を探す姿勢が長寿へと導いて。#37コロ
平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。 この特集では、レジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らすうえで大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただきます。今回登場するのは、19歳のレジェンド、コロくん。オーナーさんの手作りによる介護グッズなど、献身的な愛に包まれて過ごしているおじいワンです。
コロくんプロフィール
年齢&性別
19歳の男の子
体重
12kg(若い時は19kg)
大好きなこと
散歩、ひとりでボール遊び、食べること
既往歴
13歳で軽い膵炎になったほか、加齢による白内障、認知症など。
きっかけはセントバーナード!?
ある日、セントバーナードが主役の映画を観た中目さん一家。実物が見たいと家族みんなでペットショップを訪れました。
ですが普通のペットショップには当然そんな大型犬はおらず、代わりに夢中になったのがコロくんでした。
「犬を迎えるつもりはまったくなかったのに、みんなコロが好きになってしまって。でも毎日の世話や散歩、病気にお金のことなど、一生の責任を持つことになりますよね。
犬の知識もなければ一緒に暮らした経験もなかったので、閉店時間ギリギリまで悩みましたが、結局連れて帰ることになりました」(中目さん=以下「」内同)。
中目さんもご主人も、子どもの頃に猫とは暮らしたことがあったため、動物との生活が初めてというわけではありません。
それでも、毎日しっかり必要な散歩、驚くほど抜ける抜け毛、怖がって椅子の上に避難する息子さんなどなど、迎えて初めて分かる大変さがたくさんあったそう。
中目さんは“無知だったから”と仰いましたが、初めて犬と暮らすときは誰でも“想定外”に出くわすもの。それも含めて楽しめるくらいの余裕を持って迎えたいですね。
しばらくすると、お子さんたちも一緒に遊べるようになり、散歩も頑張ったおかげで、コロくんは体を動かすのが大好きな逞しい男の子に成長していきました。
ドライフードだけで食欲旺盛!
大型犬とはいかないまでも、かなりガッシリ体型のコロくん。やはり食欲も旺盛だったのでしょうか。
「食べるのが大好きで、食欲が落ちたことはほとんどありません。
フードのこだわりは全然なく、普通にホームセンターで売っている柴犬用のドライフードをあげていました。
何かしたことといえば、たまに飽きることがあるので、飽きたら違うメーカーのものに変えたくらいです。
変えるときも、フードの説明には“少しずつ慣らしてください”みたいな注意書きがありますが、一気に変えて全然大丈夫でした。
おやつは犬用のジャーキーとか煮干しとか、あと近所の方がくれることも多かったので、割と色々あげていました。
変わったものでは鶏の頭の水煮が好きですね。ホームセンターで缶詰で売っていて、そのままあげるとバクバク食べます」。
ずっとドライフードだけでよく食べていましたが、シニアになってからは、食べやすいようウェットフードをトッピングしていたそうです。
病気も少ない孝行息子
よく食べる子は元気な印象がありますが、コロくんもまさにそうで、病気らしい病気をしたのは一度だけでした。
「13歳の時です。後ろ脚が動かず、小屋から出てこなくなったことがありました。それでかかりつけ医に行くと、関節炎だろうと言われました。
そのことを友人に話したら鍼治療をすすめられたので、東洋医学を取り入れた別の病院に行ってみたんです。
すると診断が全然違い、そこでは膵炎と言われました。前の病院の血液検査項目が足りていなかったため再検査したところ、膵炎だと判ったそうです。
その日のうちに注射と点滴をしてもらい、点滴は1週間通って続けました。それで膵臓の数値は正常に戻り、症状も回復しました」。
これを機にこの病院がかかりつけ医になりましたが、とても良い先生で人気だったため、コロナ禍に入ると特に予約が取りにくい状況に。
ハイシニアになった今は、急な対応が必要な場合なども考え、年中無休で診察を受けやすい別の病院に変わっています。
因みに、仔犬の頃にペット保険を勧められたものの、当時はまだ普及していなかったこともあり、“犬に保険!?”という感覚で、加入しなかったそう。
そんなことを知ってか知らずか、膵炎以外ではほとんど病院にかかることがなかったコロくん。これも立派な親孝行ですね。
夜鳴き対策で病院探し
ハイシニアになって病院を変えたのは、診察が受けやすいからというだけではなく、こんな事情もありました。
「シニアになってすごく困ったことのひとつが、夜鳴きです。17歳の時に始まって、3カ月くらいは打つ手がありませんでした。
というのも、当時のかかりつけ医が薬よりサプリを推奨されていたのですが、サプリでは効き目がなかったんです。
夜鳴きが辛いのは私たちもでしたが、何より声が枯れるほど鳴くのが心配で、薬で対応してくれる病院を探しました。
最初は実家のご近所さんから“ウチも夜鳴きで薬を出してもらったよ”と教えていただき、その病院に行ってみました。
ですが、そこで処方されたのはてんかんの薬だったようで、脱力がひどくコロには合いませんでした。
次に行ったのが、今かかりつけにしている年中無休の病院です。ここでは抗不安薬を出していただき、それでやっと夜鳴きが収まりました」。
現在のかかりつけ医はショッピングセンター内にあるため駐車場も多く、お昼休憩もないという、とても受診しやすい病院。
また、“今の薬はまだ入口の薬。症状が強くなってもまだ手はあるからね”と、オーナーの不安もケアしてくれるそう。
“良い病院だからずっとここで”と決め付けず、今の愛犬に必要なケアや受診の頻度など、“状況に応じてかかりつけ医を変える”という選択肢を持っておくことも大切ですね。
シニア対策グッズ
夜鳴き以外にも色々とお悩みが増えてくるシニア期。対策グッズ探しにも苦労されたようです。
「一番悩んだのが、足元の滑り止めです。滑り難さだけでなく、柔らかさ、撥水性、厚みなど、色々なものを試しました。
それで辿り着いたのが、軽トラックの荷台に敷いたりするラバーシートでした。『DCM』というホームセンターが作っているものです。
ヨガマットみたいな感触なのですが、滑り難さなどが全部ちょうど良くて、両面使えるところも気に入っています。
あと探したのがオムツです。身体が大きいコロには普通のLサイズは小さく、大型犬用は大き過ぎて。
探した中では、『イヌネル』と『ドギーマン』が割と大きめのサイズがあっていい感じでした。
オムツといえば、ウンチをキャッチできるパンツも自作して使っています。尻尾が上がると袋の口が開くような仕組みのものです。
売っているのもあるのですが、割と高いので自作してます。なかなかクオリティが高いんですよ(笑)」。
ハイクオリティのウンチキャッチオムツ、自作レベル高めです! しかも、中目家にはもっと大掛かりな“自作設備”が⋯。
日々進化するクルクルマシーン
後ろ脚が弱り、17歳から車椅子も使っているコロくん。自力で立てないことがストレスになり、座っているとリラックスできないようになってしまいました。
そこで登場したのが、自力でぐるぐると部屋を歩き回れる “クルクルマシーン”。
押す力が最小限で済むベアリング(軸を滑らかに回転させる部品)や、歩いた距離が分かるカウンターまで付いた優れ物です。
「YouTubeで見つけて作ってみたのですが、最初は1本のハーネスで吊っていたので、左右に蛇行して歩くコロは上手く歩けませんでした。
それで2本のハーネスで左右から吊ったり、ベアリングを付けたりカウンターを付けたり、毎日のように改良し続けて今の形になりました」。
車椅子もクルクルマシーンもない状態だと、上半身を叩きつけるように動こうとしてしまうため、ストレスだけでなく、身体も心配だったそう。
設備関係の仕事をされているというご主人の力作が、コロくんとご家族の大きな助けになりました。
このほか、床ずれなどを防ぐ『ユニ・チャーム』のマットや『アロン化成』のクッション、『ペティオ』の取っ手付き歩行補助ベスト、そして『富士通』の脱臭機も、シニア暮らしを支える重要グッズだそうです。
愛される“昭和犬”
病院探しにグッズ探し、そして自作設備まで、シニア対策に奔走している中目さん。いつも考えているのは、コロくんができるだけストレスなく暮らせること。
それはシニア対策に限らず、これまでもずっと大切にされてきたことです。
「コロは自立心が強く、自由に気ままに生きるのが好きなんです。散歩も人に連れられるのではなく、自分が前を歩いて、自分の好きな道を歩きたがります。
それから外にいるのも好きで、風や日の光を浴びたり、穴掘りをしたり。そういう犬の本能というか、自然な犬らしさを大事にして、自由にさせてあげたいと思ってきました。
それ以外は特に気を付けてきたこともないので、長生きの秘訣があるとしたらそういうところだったのかもしれませんね」。
コロくんが自由に好きなことをして生きていくためには、そうさせてあげられる環境が必要です。中目さんご家族も、仕事や育児で忙しい中、特に毎日の散歩の時間を作るのは大変だったそう。
そんなときに助けてくれたのが、仔犬の頃からよく行き来していたご実家でした。
「実家にはショートステイもロングステイもさせてもらい本当に助かっています。特に散歩は実家がなかったら十分にさせてあげられなかったと思います。
ちょうど私たちが忙しかった時に父が定年を迎えたので、父と母二人でよく面倒を見てくれました。
父は、コロがいることでご近所の方と仲良くなれた部分もあったみたいです。子供会みたいに“犬の会”があるような地域なので、みなさんコロを可愛がってくれて。
コロがいないととても心配されるので、実家にいない間は “無事です”と書いた安否確認プレートとコロの近影を置いています(笑)」。
中目さんはコロくんの生き方を“昭和の犬”と言われましたが、ご家族以外にもこんなに温かい人たちに囲まれて気ままに生きるなんて、“寅さん”みたいな良い犬生ですね。
いつも手をかけ気にかけ、時には心配させられても、そこに愛情が集まり、人の輪が広がっていく。ご家族や周囲の方々にとって、コロくんはそんな存在なのかもしれません。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
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編集部から取材のお声がけをさせて頂くかも!?
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