【取材】簡単なようで簡単じゃない「普通のこと」を積み重ねて15歳に #4けんしろう
平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。
そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただいているこの特集。今回は、15歳の男の子、もふもふ具合がたまらないけんしろうくんが登場します。
じつはたくさんの病気と闘ってきた、苦労人ならぬ苦労犬なんですよ。
けんしろうくんプロフィール
年齢&性別
15歳の男の子
体重
11kg (毎週量ってベスト体重をキープ!)
大好きなこと
食べること! 泳ぐのも好き
既往歴
・2歳で停留睾丸(睾丸が体内から陰嚢に下りてこない症状)の治療。併せて去勢。
・8歳のとき、歯茎にできた良性の腫れ物をレーザーで切除。
同じ年、棒状のガムで奥歯にヒビが入り抜歯。さらに麻酔前の検査で腎臓が悪いことが判明。
・同じく8歳頃、左耳が外耳炎に。
・10歳で股関節形成不全が発覚。ヘルニアの疑いも。
・10歳を過ぎた頃、肛門腺が炎症を起こす。それ以降、定期的に肛門絞りを行なう。
・15歳。上の歯茎が赤黒く腫れ病院へ。
破壊王!? から愛され犬へ
モコフワで優しそうなお顔のけんしろうくん。でも若い頃はパワフルに家の中を遊び回って大変だったそうで…。ママさんにお話を伺いました。
「家中の物を倒されたり壊されたり大変でした。じゃれついて噛む力も強くて、流血したこともあります(笑)。
色々対策しようとしましたが、結局は落ち着くまで待つことになりました」
どんなに教えても、やっぱり遊びたい盛りの子ども。大人しくしてくれない時期もありますよね。
大人になってからは、どんな性格だったのでしょうか。
「犬よりも人の方が好きで、特に若い女の人が大好きです(笑)。
井戸端会議を見つけると、自分から入っていって、一人ひとりのお話をじっと顔を見ながら聞いたりもしていました」
想像するだけでほっこりする光景です。さぞ皆さんに可愛がられたのでしょうね。
「はい。初対面でも犬好きの人が分かるみたいで、自分から “撫でて!”とグイグイ行って、たくさんの人に可愛がってもらいました」
人が大好きなけんしろうくんですが、犬が嫌いというわけではなく、散歩中に好きな子に会うとテンションが上がったりもするそうです。
ブレンドご飯で体重キープ
毎週の体重測定でしっかりベスト体重をキープされているけんしろうくん。
健康な体を作ってくれた食事は、ドッグフードと手作り食のブレンドが基本でした。
「仔犬の頃は市販のドライフードと、おやつにキャベツやサツマイモ、リンゴなどをあげていました。
大人になってからは、ドライフードに炊いた野菜を混ぜるようになりました。野菜は主にキャベツです。
8歳で腎臓が悪くなったとき、療養食としてオカラも入れたのですが、腎臓が快くなってからも、体重調整用にオカラは続けました。
ちょっと太りがちだったので。今はちょうど良い体重なので入れていません。
シニアになってからは、野菜だけでなく肉も入れています。
牛・豚・鶏を細かく切って焼いたものですが、煮たものより食い付きが良かったんです。
それからヨーグルトも好きなのであげています。
また、それまで時々あげていた煮干しは、硬いので止めました。
それと、最近あまり水分を摂らなくなったので、ヨーグルトの水分(ホエイ)や、かつおぶしを水に入れただけの“かつおぶし水”をあげています」
フードの食い付きや水分補給は、シニア犬オーナー共通の悩みですよね。
ママさんの場合は、本やオーナー仲間、そしてペットショップの食育系イベントなどからも情報を集め、色々と試行錯誤して、けんしろうくんに合った方法を見つけてこられました。
引っ越し先では案内役
10歳のとき、ご家族と共に今のお宅に引っ越してきたけんしろうくん。
ママさんも最初は心配だったそうですが、すぐに新しい環境に慣れてくれたそうです。
「10歳まではずっと同じところに居たので心配でしたが、戸惑っていたのは最初の数日だけでした。
人間よりもずっと早く順応し、散歩のときなど、入り組んだ住宅街で迷い気味の私を、家まで連れて帰ってくれたんですよ」
環境が変わっても手がかからず、本当にお利口ですね。
お家の中の変化にもすぐに順応できたのでしょうか。
「そうですね、1度階段から落ちてしまったので、階段は禁止にしました。その他は特に困ったことはなかったと思います。
ただ、引っ越したからというわけではないのですが、この頃に股関節が悪くなっていることが分かりました。
それで滑りやすいフローリングをマットにしたりしましたが、ちょっと対策が遅かったなと反省しました。
足腰の対策でいえば、ベッドから起き上がりにくそうにしていたので、同じ頃からベッドの下に高反発のマットを敷いています。
おかげでだいぶ起き上がりやすくなったみたいです」
先回りしてケアできていればと仰るママさんですが、何かきっかけがないと中々気付けません。
まだ愛犬の関節に問題がない読者の皆さんも多いと思いますが、病気やケガに備えておくことの大切さを教えてもらえるエピソードですね。
そして股関節以外にも、ケガや病気の多かったという10歳前後。
けんしろうくん受難の時代について、詳しく教えていただきました。
お口に耳に関節に…
まず、8歳のときに口腔と耳のトラブルに見舞われます。
「左上の歯茎に5mmくらいのできものを見つけて、病院に連れて行きました。診断の結果は良性で、レーザーで除去することにしました。
同じ年に、棒状のガムを噛んでいたら奥歯にヒビが入り、抜歯することに。
それは良かったのですが、麻酔前の検査で腎臓が悪いことが分かり、点滴を受けた後、療養食で治していくことにしました。
最初は病院の療養食だったのですが、経済的な負担も大きいので、自分でオカラや野菜を炊いてフードに混ぜる方法に切り替えました。
それからこれも同じ頃ですが、左耳が外耳炎になって、ちょうどお正月だったので、夜間救急病院に連れて行ったこともありました。
救急手当ての後、かかりつけの病院にしばらく通って洗浄し、治った後も、シャンプーのときなど定期的に耳掃除をしています」
どれも原因は違うようですが、ちょうど同じ時期に重なってしまったんですね。
そして10歳になると、関節にも悩まされます。
「あるとき、左前足を普段より上げるような、歩きにくそうな仕草をしていたので、病院で診てもらいました。
そのときは痛み止めの薬をもらって様子を見たのですが、その後に今度は後ろ足が震え、痛がるようになってしまいました。
また病院に行って詳しく調べてもらうと、股関節形成不全で、ヘルニアの気もあるとの診断でした。
完治は難しいとのことで、注射やサプリで症状を改善し、なるべく歩かないよう、散歩はカートに乗せて行くようにしました。
するとだいぶ良くなって普通に歩けるようになったのですが、また急に悪くなったらと思うと心配で、散歩にはカートを持って行くようになりました。
ガタガタの道も多いので、今はもう3台目です(笑)」
立派な体格のけんしろうくんとカートを操っての散歩、相当な体力と気力が必要だと思います。
ママさんは愛情で耐えられても、カートは2度も音を上げたんですね。
10歳を過ぎて
お口に耳、関節ときて、今度はお尻のトラブルが発生します。
「10歳を過ぎた頃、いつもお尻を気にするようになったので病院に行くと、肛門腺に炎症ができていました。
肛門は気にしていたものの、これまでは大丈夫そうだったので肛門絞りはやってなかったのですが、このことをきっかけに定期的に行なうようになりました。
ペットサロンで1カ月半〜2カ月に1回、肛門絞りと爪切りをやってもらっているのですが、ここは場所だけ借りてセルフシャンプーもできるので、シャンプーと耳掃除も一緒にやっています」
それからしばらくは特に問題のなかったけんしろうくんですが、15歳になった今年の2月、また歯茎に腫れが見つかります。
「ご飯の食い付きが良くないなと思って口の中を見たら、上の歯茎が赤黒く腫れていました。
年齢的に、体に負担のある検査をすべきか悩みましたが、信頼できる先生だったので、お願いすることに。
すると結果は良性で、無事に回復でき安心しました。
これまでに4つの病院にかかりましたが、今の病院は、先生の無理をしない方針が私たちに合っていると思いますし、病院嫌いなけんしろうには、待ち時間が少ないのもありがたいですね。
以前の病院も良い病院だったのですが、規模が大きくて毎回先生が変わったり(どの先生もちゃんと診てくれたそうです)、人気過ぎて待ち時間が長かったり、とても慎重で検査が多かったりと、少し合わないところがありました。
今の私たちには、この病院が合っていると思います」
かかりつけ医が大事だと分かっていても、良い病院に巡り合うのは中々大変です。
決して悪い病院ではないのに、けんしろうくんに合う病院を求めて4度目の正直。
良い病院に出合えたのは、運ではなくママさんの努力の賜物ですね。
大事なことは、普通のこと
最後に元気と長生きの秘訣を伺うと「特別なことは何もしてません」と笑われました。
レジェンドのオーナーさんに話を伺うと、かなりの割合でそういうお答えが返ってきます。
「食べるのが好きでよく食べたり、若い時は走り回ったり、泳いだり。今は散歩していても歩くより匂い嗅ぎの時間の方が長いんですが、したいようにさせています。
なるべく好きなことをさせて、ストレスがないようにしたのが良かったのかもしれません。
あと、人が好きで、いつも色んな人に可愛がられていたのも、幸せなことだったと思います。
今は急な暑さや寒さが気になりますね」
大変なことや細かな気遣いも、愛情があれば“普通のこと”になります。
愛犬が好きで大事だから、気負いもなく、日常のこととして普通にやる。
好きだからいつも見ていると、何かが違うときは、すぐに気になります。
痛がったりご飯を食べなかったりすれば、すぐに病院に行きます。
自分の体のことなら、こんなに早く動きませんよね。
そして普段と変わらない姿を見ても、変わらないままでいてくれるよう、やっぱりあれこれと気になってしまう。
お話を伺いながら、そんなママさんとけんしろうくんの温かな日常が、ありありと目に浮かびました。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
★「#レジェンド柴」で投稿お待ちしています!
柴犬ライフでは、取材にご協力頂けるとレジェンド柴を探しております!
12歳を超えた柴たちは、「#レジェンド柴」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。
編集部から取材のお声がけをさせて頂くかも!?
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