2020年7月29日13,308 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】♯22 まだ3ヶ月の豆柴。噛みつきがひどくて困ってます【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。

2週間前に飼い始めたという、まだ3ケ月の豆柴オーナーさんからの「噛みつきがひどい」というお悩み。これは、柴犬ならではの持って生まれた性質なのだそう。果たしてその解決策とは。

今月のお悩み:飼い始めたばかりの豆柴の噛みつきがひどいんです

1歳未満・男の子

2週間前に飼い始めた3ケ月の豆柴です。

 

甘噛みがひどくて、キバを剥き出しにして唸りながら飛びかかってきたりして、息子も私も血を流しています。

 

頭を撫でようとしても頭を左右に振って唸って噛んできます。

 

噛んだら無視をする、ケージに入れるというのもやってみましたが、ケージに入れると興奮して鳴くし飛び上がって出ようとするしで、困っています。

 

マンションなのであまり鳴かれると困るので、ケージで興奮するときはクレートに入れたりもしますが……。

 

噛みグセをなおして、普通に触れるようになりたいです。

 

クセではなく、生まれつき「噛む素質」を持った子です。プロに頼んでください。

柴犬

Earth Point/shutterstock

 

まず最初に、まだ3ヶ月の時点でキバを剥き出しにして唸ったり、本気で噛んできたりする場合は“噛みグセ”ではなく“噛む犬”です。

 

クセは何かを繰り返し行ったり、印象的なことが起こった後に出てくる行動。

 

生まれたばかりの3ヶ月齢くらいの場合、これまでの経験からクセがついてしまったとは考えにくいので、先天的な性格と考えられます。

 

つまり、この子は“噛む素質”を持った子なんです。

 

柴犬は本来、この噛む素質を持って生まれてくる子がほとんど。

 

当然、この素質を強く持った犬を飼う場合、初めての人は手を焼きます。

 

元々の性格が、人と暮らす上で辛い影響を及ぼすときは、プロの手が必ず必要。

 

なぜなら後天的なクセよりずっと強く、深く心の根っこにあるものだから。

 

毎日との犬との接し方、過ごし方、1日の過ごさせ方など、“素質”と向き合う時は多くの時間と観察、技術と知識が必要。

 

もし、今まだこの状態が続いているのであれば、ぜひプロの方を頼ってくださいませ。

 

間違ったやり方だと関係が悪化! プロに頼るときの注意点

柴犬

August_0802/shutterstock

 

もしプロに頼んだ場合、リードを強く引く、押さえつける、ひっくり返す、マズルを握るなど、ネガティブなトレーニングをするトレーナーさんであれば、しっかりと最後までネガティブなトレーニングをしてもらいましょう。

 

そうすることで犬の抵抗がなくなってから、もしくは弱くなってから、オーナーさんがトレーナーさんに付き添ってもらいながらトレーニングします。

 

大事なのは、犬が穏やかになるまで、途中で諦めず必ずやり切ること。

 

ネガティブなトレーニングの例をひとつ挙げると、“ひっくり返す”があります。

 

このトレーニングは、ある子には有効ですが、ある子には全く逆の効果があります。

 

しかしそれ以上に、途中でやめると、噛む子はもっと酷くなりますし、関係性が築けていない人と犬では、関係がもっと悪くなります。

 

たとえそれまでの関係性が良好でも、悪くなる可能性が高いでしょう。

 

ひっくり返すのは“安心”を犬に伝えるためです。

 

決して“人が強い”ということだけを伝えるためではありません。

 

また、短絡的な暴力を振るうためのトレーニングでもありません。

 

抵抗が激しいと予想される場合は、絶対にしてはいけないことです。

 

そしてひっくり返すのは、しっかりと犬の状態、犬との関係を見極めてから。

 

ひっくり返し方にも

 

・力の入れ方

・押さえるところ

・触り方

・ひっくり返してる時間

・抵抗してきたときの対処

 

などなど。ほかにも挙げるとキリが無いほどポイントがあります。

 

これらを組み合わせてトレーニングしなければ、成功しません。

 

ひっくり返すという行為は、犬にとって襲われてることと変わりありません。

 

それを“安心だと伝える”作業ですので、いろんな前提が必要となってくるのです。

 

噛むからひっくり返す、なんて安易なことは、絶対にやめましょう。

 

無視やケージに入れるのは無意味。噛むことは治らない

柴犬

Benoist/shutterstock

 

激しく噛む、吠える、トイレを間違えまくるなど、人が問題を深刻だと捉えた場合、激しく厳しいトレーニングで直そうとしがちです。

 

しかし、実際はその逆。

 

問題がひどい場合、絶対に人は激しくなってはいけません。穏やかにおおらかに力強く。

 

柴犬の場合、

 

激しく噛む→激しいトレーニングをする→失敗する→より激しく噛む→できていた事(足拭きやリード付けなど)ができなくなる

 

という、悪い流れになってしまっているのをよく見かけます。

 

相談者さんのように無視をする、ケージに入れるは対処であって、噛む素質に対しては意味をなさないことがほとんど。

 

全体的な経験値や、エネルギーの発散がうまくいっているかなど、今のその子の状態を見極めて接し方、環境、飼い方などを変えていくことが先決です。

 

この子の月齢でしたら、まだまだ変わる可能性が高いです。

 

ぜひ、信頼できるプロの方にお願いすることを強くお勧めします。

 

柴犬の性質をよく理解して迎え入れて

柴犬

Anastasiia Cherniavskaia/shutterstock

 

相談者さんの愛柴の場合、柴犬本来の素質がそのまま出ている感じです。

 

この子は決して特別ではありませんし、悪い子でもありません。

 

これから柴犬を飼われる方は柴犬のポジティブ、ネガティブ両面の特徴をしっかりと頭に入れて迎え入れて欲しいと思います。

 

ペットショップやブリーダーさん、売り手側の“売り文句”に惑わされず、パピーのいっときの可愛さに惑わされず、しっかりと判断しましょう。

 

柴犬は洋犬とは、その性質が大きく違います。

 

柴犬を調べて、どういう目的で作出された、存在してきた犬種なのかをしっかり理解してください。

 

そのあたりについては、前回の記事「♯21 最近、ドッグランで他の子と上手に遊べなくなりました」で詳しく説明しているので、一読ください。

 

素晴らしいこの犬種を誤解のないよう捉えて欲しいと切に願います。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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