【取材】跳ぶ!走る!19歳8ヶ月!健康寿命の秘密は家族の大らかな対応と鮭ごはん #11 さくら
平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。
そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。
今回ご紹介するさくらちゃんは、なんと19歳を超えても跳んだり走ったりと、かくしゃくたるシニア犬です。
寝たきりにならない健康寿命を伸ばし続けるさくらちゃん。オーナーさんに元気の秘訣をうかがいました。
目次
さくらちゃんのプロフィール
年齢&性別
19歳の女の子
体重
8kg
大好きなこと
気が向いたときに家族とふれあうこと、鮭ごはん
既往歴
・3歳2カ月のときに避妊手術。
・3歳の夏、急に元気がなくなり、夏バテと診断。抗生物質を飲み始めて翌日には回復。
・7歳で背中の脂肪腫を切除。
・19歳になる2日前、徘徊のようにぐるぐる回りながら息が荒くなり急に倒れる。
「うちに来る?」と聞いたら「うん」と返事をした
玄関の段差を跳んだり散歩で走ったりと、19歳とは思えないほど元気なさくらちゃん。
2021年8月には、なんと20歳を迎えます。元気の源を探るべく、オーナーのNさんに、出会いから現在までを振り返ってもらいましょう。
「黒柴の子犬をペットショップで見かけて、当時は子育て真っ最中で余裕がなかったのにどうしても迎えたくなりました。
父が亡くなって間もないころで、寂しい気持ちもあったんでしょうね。
子犬を抱っこして『うちに来る?』と聞いたら『うん』って言葉をしゃべって返事をしたんですよ!
家族には笑われましたけど、それがさくらとの出会い。
うちに来てからは母のことが大好きになり、父がさくらにのりうつっているかもと思ったほどです」(Nさん=以下「」内同)
さくらちゃんはすくすく成長し、Nさんの3人の子どもたちの良き遊び相手に。
成犬になるころには13kgまで大きくなりました。
太っているわけではなく、もともと大きめで骨太なタイプ。シニアになってからだんだんやせてきましたが、今でも8kgを維持しています。
「昔、庭で飼っていたときには、犬小屋の上に乗って近所を見張るような番犬らしいタイプ。
でも子どもたちと留守番中に脱走したりと、肝心なときには番犬らしくないところもあったんですよ。
ボールやフリスビーで遊ぶのが大好きで、ジャンプしてキャッチするのが得意! さくらは持って生まれた体が強い気がしますね」
夏バテや下痢などの一時的な不調はありましたが、病気らしい病気にかかったこともなかったとか。
Nさんはさくらちゃんの子犬がほしい気持ちがあったものの、他犬が苦手なのであきらめて3歳のときに避妊手術を受けました。
2頭目と“柴距離”を保ちながら室内暮らしへ
さくらちゃんの子犬は断念したNさんですが、心のどこかに多頭暮らしへの憧れがあったとか。
そこでさくらちゃんが7歳のときに、2頭目の黒柴のふぶきちゃんを迎えることにしました。
「ふぶきと出会ったのは母が亡くなった後、寂しい気持ちもあって迎えました。
ケンネルコフにかかっていたので、治療の間はさくらとの接触を避けるために室内で飼っていたんですが、さくらだけ外なのがかわいそうになって、ふぶきが完治してから2頭とも室内飼いに。
最初は部屋の端と端につないで、様子をみながら少しずつ距離を縮めたんですよ。
食事や散歩などの順番はさくらを優先することでうまくいきましたが、期待したほど仲良しにはならず。今でも“柴距離”を保つ仲です(笑)」
これまでも暑い日や寒い日はさくらちゃんを室内に入れていたので、住環境が変わってもすぐになじんだそう。
シニアに差しかかる年齢のときに室内暮らしに変えたのはちょうどよいタイミングだったのかもしれません。
室内暮らしに変わってから、さくらちゃんはソファが定位置になりました。
「さくらは散歩や遊びで鍛えているせいか筋肉ムキムキで、それが今の長生きにつながっているんじゃないかと思います。
19歳になる2日前に倒れたときはもうだめかもしれないと覚悟しましたが、動物病院で抗生物質の注射を打ってもらったら翌日に復活!
家を出ていた子どもたちも駆けつけたのに、今では笑い話です」
神経質なさくらと大らかな家族の組み合わせ
さくらちゃんは家族のことが大好き。以前はNさんやご主人、お子さんたちが帰宅するたびに叫ぶような声をあげて喜び、おなかを見せて「なでて!」と甘えていました。
その一方、「イヤなものはイヤ」とはっきり言う性格で、神経質なところもあるとか。
「動作がのんびりゆったりになって喜びの表現が減ったのは寂しいですが、私にくっついて甘えるのは変わりません。
でもイヤになると怒って噛んでくることもあります。歳をとっても丸くなるどころか、とがってきたかな(笑)。
シャンプーや足拭きも苦手なのでほとんど洗っていませんが、さくらはにおいが少ないので助かっています。
こんな調子で『ま、いっか』『しょうがないか』と大らかに対応していたのが、さくらのストレスを減らせて長生きにつながっているのかもしれないと思います」
動物病院や他犬も苦手なので、待合室での滞在が短時間で済むように混雑を避けるなど、さくらちゃんの心に負担をかけない工夫をしています。
「洋服が嫌いなので防寒対策には困りました。
でも孫が使わなくなった前開きのスリーパーを見つけて、これなら素早く着せられると思って活用しています。
着せるときはイヤがるけれど着せた後は落ち着いています。着ていることに気づいていないのかも(笑)」
教えておけばよかったことは室内トイレ
今までを振り返って「やっておいてよかった」と思うことは、意外なことに思いつかないそう。
「すべてが今につながっていると思います」とNさん。逆に「やっておけばよかった」と思うことは、室内トイレを教えること!
「さくらは今でも室内でオシッコをしたがらないので、起きたらすぐ外へ連れて行くようにしています。間に合わなくて漏らしてしまうと『ごめんなさい』っていう顔をするんですよ。
室内トイレができれば我慢させなくて済んだと思います。ウンチのほうは肛門が緩くなったせいか、立つときなどおなかに力を入れた拍子にポロッと出ます(笑)。
しっかり硬さがあるから拾うだけで済むので問題ありません」
洋服と同じくオムツが嫌いなので、無理にはかせるよりもストレスをかけないことを最優先に考えています。「おしっこやうんちが出てしまっても、すぐ掃除をすれば済みます」とNさん。
「散歩のときに跳んだり走ったりする元気がありますが、急に動くと心臓に負担がかかりそうなのでほどほどのところでセーブ。
目が見えにくくなっているのも心配ですから。段差が大きいところも抱えて通っています。
さくらは抱っこが嫌いだから『抱っこされるくらいなら自分で跳ぶ!』と思っているでしょうけれどね」
安全対策として室内をすべりにくい床材に変え、階段を上らないように、すのことつっぱり棒でペットゲートをDIY。
家具の配置にも気をつけています。壁は若かりしころのいたずらの跡。
「最初に穴を開けたのは甥ですが、中の木をかじったのはさくら(笑)」と、思い出になるから不思議です。
大好物の鮭を中心にトッピングごはん
医食同源といわれるほど健康にかかわるごはん。さくらちゃんは子犬のころから同じメーカーのドライフードで、今は14歳以上のハイシニア用を食べています。
さらに家族のごはんと同じ食材をおすそ分けしてトッピング。
ドライフードだけでは食べなかったので始めたことですが、「高齢になっても好きなものがたくさんあるのはよかった」とNさん。
食べる意欲が体重の維持につながっているのでしょう。
「犬用おやつの代わりに人の食べ物をあげています。とくに鮭が大好物で、焼き始めると大騒ぎ。
水に浸して塩抜きしてから白米に混ぜて“鮭ごはん”にすることも。
パン、納豆、鶏肉、豚肉、おせんべい、ブロッコリー、うどんも好きですね。
ネギ類などの犬が中毒を起こすものを除いて何でもあげています」
最近の食事はドライフード7〜8割にトッピング2〜3割が目安。フードの量はその日のトッピングやおすそ分けの量に応じて調整。
食後に飲ませる10ccの豆乳が完食のモチベーションになっているようです。
「15歳のときに腎臓の数値が少し悪かったため、腎臓疾患用の療法食に切り替えた後も、フードだけだと食欲が落ちてストレスになっているようだったのでトッピングを続けていたんです。
18歳のときに動物病院にそれを伝えたら、『療法食にするなら他のものを食べさせてはいけないんです。
でもトッピングで食欲が維持できるなら、療法食をやめて普通のフードに戻しましょう』と言われました。
幸い普通のフードに戻してからも腎臓の状態は安定しています。さくらは食欲を落とさないことが健康につながったのかもしれませんね」
19歳の誕生日にはNさんがデコレーションしたケーキでお祝い!
さくらちゃんのうれしそうな笑顔から食事を楽しみにしていることがわかります。
「さくらは何でもよく噛んで食べる子で、歯みがきの代わりに牛皮ガムを噛ませていました。
動物病院から『噛むことは脳にもいいから続けましょう』と言われています。ドライフードも、今もふやかさずにそのまま食べさせています」
良き遊び相手だった子どもたちの願い
さくらちゃんの良き遊び相手だったNさんの3人の子どもたちのうち、長女と長男は結婚。
長男は結婚式の前に式場でさくらちゃんとふぶきちゃんと記念撮影もしました。
「子どもたちは『自分の子どもをさくらに見せたい』と常々言っていたので、長女と長男のその夢が叶って私もうれしいですね!
さくらは孫にくっついてやさしく見守ってくれました。末っ子もさくらに『オレも自分の子を見せたいから、もうちょっと待ってて』と言っているんですよ」
さくらちゃんは若いころのような感情表現は少なくなりましたが、ふとしたときには笑顔を見せてくれることもあるとか。
健康寿命の目安は自力で歩く・食べる・排泄することですが、家族にとってはかわいい顔を見せてくれることも大きな喜びです。
Nさんは「私が大ざっぱなので、さくらは自分でがんばって長生きしているんだと思います」と笑いますが、家族の愛情に支えられていることは間違いありません。
同居犬のふぶきちゃんも13歳を迎えてシニアの仲間入りをしていますが、さくらちゃんをお手本に元気いっぱい。
これからも“さくらふぶき”の2頭は、家族と一緒に幸せな日々を重ねていくことでしょう。
取材・文/金子志緒
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