2021年7月29日40,030 ビュー View

【取材】“介護できる幸せ”を教えてくれた19歳目前の愛息子。毎日のアイコンタクトで体調と愛を確かめて。#13じょん

平均寿命が12〜15歳と言われる柴犬。そこで我らが『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。
今回登場してくれるのは、14歳のとき突然前庭疾患で倒れ、4年前から介護が必要になった18歳と11ヶ月のじょんくん。手探りから始まったという介護生活の全てをママさんが教えてくれました。

じょんくんのプロフィール

柴犬

年齢&性別

18歳の男の子 2021年8月7日で19歳に。

体重

5.6kg(若い頃は8kg)

大好きなこと 

お散歩、車に乗って流れる景色を見ること。

既往歴

・14歳で前庭疾患と診断、数ヶ月後に寝たきりに。現在はアンチノールと発作緩和の薬を服用中。

 

柴犬らしさ全開だった青年期を経て訪れた変化

柴犬

 

ご夫婦のお嬢さんに見初められ18年前にやって来た柴犬、それがじょんくん。

 

じょんくんは「これぞ番犬!」というべき柴気質。14歳まで病気や怪我とはまったくの無縁でした。

 

しかし14歳の1月、朝の散歩へ行く直前に突然倒れ、前庭疾患と診断。そこから立ちあがることができなくなり、数ヶ月で寝たきりに。

 

そこから試行錯誤の介護の日々が始まったのです。

 

「実は倒れてから2週間後くらいに、一度立ち上がれるまでに回復して、以前ほどではないものの歩けるまでになりました。

 

ただ後ろ足の力が日に日に弱るのを実感し、『アンチノール』というサプリを飲ませるように。

 

実際に足腰に力が戻るのを実感したので、これは効いていると思い、今も続けています」

 

その頃は立ち上がる時に介助したり後ろ足を支えることができるハーネスを取り入れたり、ご主人が塩ビパイプなどで車椅子を自作するなどの工夫を試みたそう。

 

「SNSで知り合った柴オーナーさんに作り方を教えてもらい、じょんの体に合うよう何度も作り直しました。

 

その後さらに足腰が弱ったので、再び体に合う車椅子探しに奔走し、『テンシノワ』という犬の車椅子専門店さんとご縁が。今はそこでお借りした車椅子を使っています」

 

お散歩が大好きだったじょんくん。寝たきりになったあとも、「なんとか大好きな散歩をさせてあげたい」というママさんの思いが運んできたご縁でした。

 

右往左往しながら最善を探して

柴犬

 

前庭疾患の発症とほぼ同時期に認知症の症状も出始めたじょんくん。

 

室内でくるくる回っては倒れる状態に陥り、介護生活は想像以上の大変さでした。

 

「白内障で目もほとんど見えず、歩いては倒れるを繰り返していたので、最初は部屋の中に子ども用ビニールプールを置いて、そこをじょんの居場所にしていました。

 

排泄は外でしかしない子だったので、まだ自分で体を支えられるうちは、日に何度も抱えて外に連れ出し、腰を支えながら用を足させていましたね。

 

オムツをつけ始めたのは、お漏らしが増えた3年前くらいから。

 

これも最初は人間用のオムツにしっぽ用の穴を開けてみたり、アレコレ試したものの、結局ペット用マナーバンドとオムツの併用に落ち着きました。

 

オムツだと覆う部分が広くかぶれの原因になるので、うんちのタイミング以外はマナーバンドだけにしています」

柴犬

 

食事もさまざまなやり方を模索。

 

「体調の良い時は抱きかかえ、スプーンで食べさせていました。体調が悪く、起きあがるのが辛そうな日はシリンジで。

 

水も抱っこしながらお皿で飲ませます。

 

しかし最近は飲み込む力が弱くなったので、今はカリカリをミキサーで粉々にし、それをお湯でふやかし、冷ましてからあげるように。

 

フードだけでも水分が取れるようにと考えた末なんです。

 

じょんは昔からオヤツをあまり食べない子で、フードもライフステージに合わせたドライフードのみ。

 

今も食欲は衰えていないので、食事の時間は朝6時に1回目、午後3時に2回目、夜8時過ぎに3回目。

 

色々試したのですが、このサイクルだと夜に3〜4時間は寝てくれるんですよ」

 

ぐったりな介護生活を前向きに考えられたきっかけ

フレンチブルドッグ

 

寝たきりになった当初は、動かない体にじょんくん自身がパニックになったのか、連夜大きな声で夜泣き。

 

睡眠が取れないことによる介護疲れを感じていたそうです。

 

「ギャンギャン吠え続けるので、ご近所迷惑にならないか不安だし、私も眠れないし。 

 

ノイローゼになりそうで、何度も心が折れそうになりました。

 

でも今は嫁いだ娘が来てくれたり、夫が有給を取って世話をしてくれます。

 

家族全員で支え合うことで一番辛い時期を越えられました。

 

今となっては、介護によって家族の絆が強くなったと思っています」

 

今のように“介護ができる幸せ”を心から感じたのは1年前から。そのきっかけとなったのが、妹犬の死でした。

 

「じょんには13歳のそら、15歳のみんとというチワワの弟と妹がいて、去年のじょんの誕生日前日に、みんとがお空へ旅立ちました。

 

みんとは体調が急変して亡くなったので介護もできず…、そのことで初めて介護できるありがたさを痛感しました。

 

それまでは“してあげてる”という思いがあったけれど、みんとの死がきっかけで、“介護することで無償の愛をもらっている”という感覚になったんです。

 

これはみんとが最後に教えてくれたことですね」

 

SNSでのつながりも大きな支えに

柴犬

 

SNSではフォロワーがたくさんいるじょんくん。それも介護生活の大きな支えになっているそう。

 

「介護ノウハウはSNSで繋がった人に教えてもらうことも多いんです。

 

時には寝たきりのじょんがかわいそうだと批判されることもあるけれど、それ以上に、私やじょんの支えになっている素敵な方が多い。

 

最近はなんと、長与千種さん主催のマーベラスのリングに上げていただいたんですよ! 

 

長与さんとInstagramで出逢え、じょんを応援したいと言っていただいて。

 

リングに寝そべるじょんはまるでチャンピオンみたいで、すごく良い記念になりました。

 

こんなご縁に恵まれるのもじょんのおかげ。毎日いろんな人に支えられて生きてくれていることに感謝しかありません」

 

「きっとこういう応援がじょんの生きる力になっている」と語るママさん。SNSという場所のパワーを改めて感じるエピソードです。

 

厳選を重ねた介護グッズに囲まれて

部屋

 

じょんくんは様々なグッズの力を借りて、体に負担の少ない寝たきり生活を送っています。

 

「床擦れ防止のために、起きている時は頻繁に姿勢を変えるほか、体重を分散できる『ユニチャームペットプロ』のベッドマットを使っています。

 

あとは時々立ち姿勢をとらせてあげたいので、『リラクッション』という犬介護用のビーズクッションを取り入れています。このふたつは本当に買って良かった!」

 

介護への努力は惜しまないママさんですが、唯一後悔していることも。

 

「まだそこそこ歩けているうちから、車椅子の練習させておけば良かった。

 

歩けるうちに慣らしておけば、もっと体が馴染んで上手に使えたかもと思うので。

 

もし車椅子を検討しているオーナーさんがいるなら、早いほうがいいと思います」

 

最近は発作が酷いじょんくんですが、発作を落ち着かせる術も介護生活の中で徐々に身につきました。

 

「発作は主に眼振なんですが、ひどい時は数十分に1回の頻度で襲ってきて。毎日飲んでいる発作緩和の薬では追いつかないんです。

 

まず右の手足がバタバタし始め、首がまっすぐに伸びて顔が左に90度傾き、眼振が始まります。

 

最初は戸惑ってただ見守るだけでしたが、ある時、電気の光に反応して発作が起きることが多いことに気づいて。

 

試しに電気を消し、手で目を覆うと落ち着いたんです。

 

それからは発作が起きると目を覆い、無理のない範囲で首を元の位置に戻しています。

 

今はなるべく夜も早めに電気を消し、不便でも薄暗くして生活しているんですよ」

 

発作のない日は1日もないので、今は必ず誰かがそばに付いているそう。

柴犬

 

また、目が見えないじょんくんを安心させるためのテクニックも見つけました。

 

「急に触れるとビクッとするので、体に触れる前に必ず名前を呼ぶようにしています」

 

また体調を確認するため、毎日必ず目を見ているというママさん。

 

アイコンタクトをとりながら、「今あたたかい、今息をしてくれてる、今抱きしめることができる、今この瞬間生きてくれている。それが何より嬉しい」といいます。

 

「今までも愛おしいと思っていましたが、介護によってその感情が増しています」とも。

 

そして最後にそっと、こう教えてくれました。

 

「介護って、看取ることの覚悟をつくる準備期間だと思うんです。

 

だからこそ、出来なくなったことを探して悲しむのではなく、出来ることを探す。

 

そして、今得てるものの大きさを噛み締めることが大切なんじゃないでしょうか」。

 

ママさんは今日も、じょんくんの目を見て、彼と過ごせることの尊さを噛み締めています。

柴犬

 

 

取材・文/横田愛子

 

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