【取材】寝たきりのテツ・20歳を支える一途な愛。ヘトヘトな日も介護に向き合える原動力とは。#16 テツ
平均寿命が12〜15歳と言われる柴犬。そこで我らが『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。
今回ご紹介するのは、なんと今年9月に20歳を迎えた黒柴のテツくん。今年に入り頻繁にてんかん発作に襲われるようになり、ほぼ寝たきりの今も家族の細やかな介護を受けながら生きる姿はまさにレジェンドの風格満点です。
目次
テツくんのプロフィール
年齢&性別
20歳の男の子(2001年9月生まれ)
体重
10.3kg(若い頃は18kg)
大好きなこと
食べることと散歩。大のパパさんっ子。
既往歴
・1歳になる前に皮膚病を発症。投薬はせずフードを見直すなどで3〜4歳頃には症状が落ち着く。
・10歳頃にお腹に脂肪腫。また体のあちこちに腫瘍ができ経過観察に。尻尾の腫瘍は現在ピンポン玉程度の大きさ。
・13歳で馬尾症候群に。
・16歳で緑内障により左目を失明、その後2019年に右目も失明し全目に。また最初の膀胱炎もこの頃。
・2020年に初めてのてんかん発作。状態は一旦落ち着いたが今年6月から時々発作を起こすようになり投薬を開始。
・2021年19歳で前立腺肥大。
全盛期は18Kgの大型柴!丈夫な体を作ったのは毎日のロング散歩
いわゆるハイシニアと呼ばれる年齢になるまではアレルギー以外大きな病気もせず健康優良児だったというテツくん。
最近は10kgまでの柴犬も多い中、なんと18kgもあるガッチリとした黒柴だったそう。
「テツは元々夫の愛犬。テツが8ヶ月の頃夫と付き合い始め、その後結婚したことで家族になりました。
だからいまだにテツの1番は夫で、私のことはお世話係だと思っているんじゃないかな(笑)」(ママさん=以下「」内同)。
そう笑うママさんですが、子供の時から柴犬と暮らしてきたパパさん同様、ママさん自身も幼少から犬と暮らす生粋の愛犬家。
それゆえ今は寝たきりとなったテツくんに“かゆいところに手が届く”お世話をしています。
「実家で犬を飼っていた頃は、まだ雑な飼い方だったように思います。
フードの種類も少ないし外飼いが基本。それでも19歳まで長生きしてくれた子はいましたが、今思うともっとああしてあげればと思うことがたくさん。
だからテツには過去の経験を生かし後悔のないようお世話してあげたいんです。
それが今、介護が必要となったテツと向き合う原動力です」。
盲目になってからの工夫
悔いのないように。その気持ちからさまざな工夫をしてきたテツくんファミリー。
「左目が見えなくなると、あちこちにぶつかるようになったんです。
そこでプレイマットを家具に張り付けて怪我をしないよう工夫しました。
しかしその後、右目の視力まで失った時は、一瞬テツも戸惑い怖がった様子でしたが、数日で嗅覚や今までの感覚を頼りに普通に散歩できるまでに復活したんです」。
全盲になった18歳頃には足腰も弱り、自分で立って歩けなくなりました。
ですが17歳頃までは毎日3〜4時間くらいは散歩してましたね。もちろん、若い頃とシニア期では歩く距離やペースは変わりましたが。
ですのでテツの長寿の理由は持ち前の体の強さはもちろん、幼い頃からの長時間散歩もあると思います」。
さらに休日は半日かけてロングウォークを楽しんでいたそう。すごい体力です!
一昨年から散歩コースを少し短めにしたものの、それでも介護ハーネスをつけ、寝たきりになるまでは近所の公園を1〜1.5kmもの距離を最近まで歩いていたそう。
「今もうちの子が赤ちゃんの頃に使っていたベビーカーに乗せ、30分から1時間は散歩に出ます。
歩けなくても外の空気が心地よいみたいで、きっと鼻からたくさんの刺激を受けるんでしょうね。
そのせいか認知症も出ず、散歩に行きたくなると鳴いてアピール。その要求に合わせ、日に2〜3回散歩に行くのが日課です」。
鳴き声に心乱れた日々も。今はその理由が分かって…
自力で立ち上がりにくくなって以来、テツくんは起きている間に鳴くことが増えました。
当初はなぜ鳴くのか分からず戸惑い、認知症を疑い病院で相談したことも。
「獣医さんには“認知症ではない”と言われ、じゃあなんでだろうと。
主人と意見をすり合わせた結果、体が自由に動かない苛立ちや何かして欲しいことがあるのを訴える要求吠えではないかということになったんです。
もし自分が寝たきりで動けなかったら、やっぱりして欲しいことを口に出しますよね。きっとテツも同じだろうと。
そう分かってからはトイレ? ご飯? 寂しいの? とどれが正解かを探りながら世話するように。
要求があるから鳴くと気付いて以来お世話自体はしやすくなりました」。
獣医師からは、あまりにも辛いなら睡眠導入剤を出しますよ、と言われたそうですが、あまり薬を飲ませたくないと思ったママさんは「要求があるなら、私が叶えてあげよう」と思ったそうです。
歳とともに甘えん坊に
若い頃は“THE柴”といった性格で、ママさんにはあまり甘えてこなかったそうですが、今は人恋しくて鳴くこともあるらしく....。
「歳をとって寂しがり屋さんになりましたね。
寝たきりになってからはリビングがテツの居場所ですが、人が離れると鳴くので、今は私がリビングで寝ています。
体に触れて寝ると安心しますが、私でダメな時は夫が添い寝係。
少し悔しいけど夫が来るとスッと鳴き止むんです(笑)。
テツは聞き分けがよく人にべったりじゃなかった分、今存分にわがままを言い甘えているのかも。
そう思うと甘えられてることが嬉しいし、甘えさせてあげたくなります」。
テツくんのために会社をやめ在宅勤務に
元々は企業にデザイナーとして勤めていたというママさんですが、テツくんが3歳のころにフリーランスに。今は在宅で仕事をされています。
テツくん中心の毎日の様子はどんな感じなのでしょう。
「昼夜逆転の時もあれば夜寝てくれる時もありバラバラ。
鳴いたらすぐ対応できるよう夫婦が協力して世話しています。
以前はご飯も朝晩の2回でしたが、今は食べたい時に食べさせるので、日によって3〜4回に。
フードはアレルギーがあったため試行錯誤した末、ナチュラルハーベストのシニア用に落ち着きました。
このドライフードを基本に、食べ飽きないよう馬肉や数種類のウェットフードを数日ごとに変えてトッピング。食欲は今も旺盛です」。
食事以外にも気を付けているのが、床ずれや膀胱炎の再発。
「実家の愛犬が寝たきりになった時、ひどい床ずれになり痛々しくて。
テツには辛い思いをさせたくないので、低反発マットなどを取り入れたり起きたタイミングで体勢を変えたりしています。
あと、膀胱炎はただでさえ再発しやすいんですが、テツの場合、排尿困難のため菌が繁殖しやすくて。
なので毎回、尿の匂いや発熱がないかしっかりチェックしています」。
テツくんの介護だけでなく、育児に仕事までこなすママさん。ヘトヘトになることもあるけれど、それでもテツの姿を見ると頑張れるそう。
「だって今この瞬間、彼は生きていますから」。
してあげていれば良かったことと、これから一緒にしたいこと。
これほど献身的な介護をするママさんにも、後悔していることがあるそうです。
「馬尾症候群と診断され、年齢とともに徐々に足腰は弱っていってましたが、18歳までは多少の介助が必要ながらなんとか自力で立っていました。
16歳頃に自宅のフローリングの上に滑らないようマットを敷いたのですが、今思うともっと早くからに滑らない工夫をしていれば、もう少し長く立って歩けていたんじゃないかと…」。
とはいえ、20歳という年齢まで一緒に過ごせているのは、紛れもなくママさんのサポートがあるからこそ。
そんなママさんにとって、20歳を迎えることが目標でしたが、いざその年齢に達したら、やはり21歳を目指したいという欲が出てきたそう。
「まずはお正月を一緒に迎え、年賀状にまだ元気だよとテツの写真を使いたい。
今の状態で遠出は難しいけれど、できる限り外の匂いや音を感じてもらい、テツが居心地よくいてくれればと願っています」。
いつでもそばで愛情いっぱいにテツくんを見守るファミリー。そんな家族に、今日もテツくんは「そばに来て〜」と鳴くのです。
取材・文/横田愛子
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