2021年12月27日7,099 ビュー View

【取材】アイデア満載の “楽しむ介護” で暮らす19歳5ヶ月。甘えん坊になった今こそが特別な時間 #18ハル

平均寿命が12〜15歳と言われる柴犬。そこで我らが『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。

今回登場してくれたのは、1年前に足のケガから歩くことができなくなってしまった19歳のハルくん。当初は動けないことに苛立ちを感じていたものの、今はご家族のアイデア満載の暮らしで幸せな毎日を過ごしているのです。

ハルくんのプロフィール

柴犬

年齢&性別

19歳の男の子(2002年7月20日生まれ)

体重 

8.0kg(若い頃は10.0kg)

好きなこと

食べることとお散歩

既往歴

・15歳で前庭疾患と診断、今も投薬治療を継続中

出来ない部分を手助けし、出来ることを慈しむ暮らし

柴犬

 

若い時はとびきりヤンチャ、現在は元気に自己主張をするもののすっかり年を重ねて甘えん坊、そして穏やかになったハルくん。

 

すでに耳は聞こえず、後ろ足は弱ってしまい常に家族に見守られながら暮らしていますが、16歳の頃までは駆け回っていたというハルくんの長寿の秘訣をご夫妻が教えてくださいました。

 

「ハルはこれぞ柴といった性格で、若い時はあまり触れさせてもくれず、首輪にリードをつけるのも一苦労。

 

病気もなく、ワクチンやフィラリア予防以外で獣医にかかることもほぼありませんでした。

 

今のように抱っこが大好きな甘えん坊になったのは去年あたりからですね」(ママさん)。

 

実はハルくんは16歳から18歳の2年半の間、ご夫妻の転勤が理由でママさんの実家に預けられていたそう。

 

「妻の母には昔から可愛がってもらっていたので、預けている間もハルは居心地が良さそうでしたね。

 

そんなハルですが、大好きなお散歩中に右後ろ足をくじいたようで、それから歩けなくなりました。

 

ちょうどその頃に、私がリモートワークで仕事ができるようになったので、また一緒に暮らせるようになったんです」(パパさん)。

 

最初は歩けないことに苛立ったのか、寝た状態でくるくる回転していたそう。

 

また、しばらくして認知症の症状も出てきました。

 

柴犬

 

「私が仕事をやめたタイミングだったので、傍にいて世話ができたのが幸いでした。

 

2021年の初め頃は夜泣きが酷く、私自身も眠れない状態で辛かったですね」(ママさん)。

 

ノイローゼになりそうなほど老犬介護の大変さを実感。

 

「そんな時、SNSで柴を介護している他の飼い主さんの姿を見て、すごく励まされたんです」(ママさん)。

 

SNSで同じ境遇の飼い主さんと交流を持ち、そのおかげで介護に前向きになれたそうです。

 

我が家流の介護を確立。ようやく介護を楽しめるように

柴犬

 

そこからはアイデアを駆使し、夫婦二人三脚で介護に取り組むように。

 

「ハルのケアをしている時にこんなのがあればいいなと感じたものを夫に提案し、それをDIYで作ってもらっています。

 

寝たまま行ける散歩用カートも、ホームセンターで購入した農業用台車に、スノコを取り付け、ベッドがそのまま載せられるように自作しました。

 

最近は、寒くなってきたので、風よけをリクエストしたところ、枠を組んでビニールを張ってくれました。透明なので、お散歩中もハルが外の景色を楽しめるようになっています。

 

世界に1台しかない“ハルちゃん号”に大満足です。

 

冬場足が冷えている時は、熱湯を入れた瓶をトイレシートで包んだ“即席湯たんぽ”で手足を温めています。赤ちゃんと一緒で手足が暖かくなると寝てくれるんです」(ママさん)。

 

薄くなった毛をサポートするために着せている洋服はママのアイデアが満載

柴犬

 

年とともに関節が固くなったこともあり、脱ぎ着が楽になるように洋服はストレッチ性を重視して試行錯誤しているそう。

 

「夏物は端切れを利用して首周りをゴムで仕上げて、悪くなってきた耳にあたらないように友人に仕立ててもらいました。

 

冬物は、暖かい素材を探した結果、人間用の腹巻の伸びが良いことが判り、これを胴体部分に使いつつ、前足部分を靴下で母に作ってもらいました。

 

首部分を絞ったほうがしっくりくるので、首元にリボンをつけてかわいく仕上げてくれたんです。

 

こうやって試行錯誤しているうちに我が家なりの完成形ができました」(ママさん)。

 

柴犬

 

DIYだけでなく、体調管理のために、1日に何度排泄できたかを把握できるように、紙パンツは毎朝同じ枚数を用意したり、室内をハルくんの快適温度に保ったりしているそうです。

 

「夏はエアコンの設定を22℃にしているので、さすがに人間は寒いですね。でもそれまで荒かったハルの息遣いが収まって穏やかな呼吸になったので、私たちが着込んで過ごしていました。ハルのためなら、どうってことありません」(ママさん)。

 

こうした様々なアイデアを形にすることで効率的に介護ができ、介護を楽しむ余裕が出てきたのだとか。

 

今では9割の確率でハルくんが求めていることがわかるそう。

 

柴犬

 

「ずっとハルと一緒に過ごす妻は鳴き方でトイレやご飯、抱っこなど何を要求しているか分かるんですよ。

 

側を離れると寂しがるから夜は夫婦で交代しながらリビングで添い寝していますが、甘えん坊のハルが、夜中目が覚めたときに顔が見えるポジションで寝ています。

 

抱っこの要求が多いので夫婦共々手首や肘、腰のサポーターや湿布は必須です。

 

けれど犬生の後半にこうして寄り添って過ごせるのはありがたいこと。ハルがプレゼントしてくれている特別な時間と思っています。

 

年を重ねるとできることが徐々に減りますが、それに合わせてサポートするのが私たちの役目ですからね」(パパさん)。

 

柴犬

 

しかし中には、悔やむこともありました。

 

「ハルは活動的なので、後ろ足が動かなくなってしばらくは私と息子が中腰になって下半身を支えながら歩かせていたんですが、あの時に車椅子があれば...。

 

今年になり車椅子をレンタルしたのですが、もう少し早く導入しておけばまだ自力で好きな場所に行けたのではと後悔しています」(パパさん)。

 

シニア犬用ミルクで毛並が復活!

柴犬

 

19歳の今なお、食欲は旺盛。現在は消化しやすいよう、フードプロセッサーで細かくしたドライフードに、砂肝を茹でたお汁を加えて柔らかくし、ヨーグルト、缶詰を加え、これらをコース風に順番に食べさせているそうです。

 

順番に食べさせると飽きずに最後まで完食してくれるとのこと。水分補給には、シニア犬用ミルクをこまめに飲ませています。

 

「このミルクを飲み始めてから擦れて薄くなっていた毛も生え始め、また毛並みが回復しました。今では、おむつから毛がはみ出しててびっくりしてます。

 

あと焼き芋、自家製パンなども大好物。焼き上がりが近くなると、寝ていてもにおいで起きて、食べる時には目を真ん丸にしてかぶりついて食べています。

 

ここ1年でいろんなものを食べさせるようになったのですが、今は生きているだけで奇跡。だからもう好きなものを好きなだけ食べさせようと決めているんです」(ママさん)。

 

柴犬と家族

 

ハルくんの19歳の誕生日に、家族がみんな揃ってお祝いをした際に、初めて犬用ケーキを食べ、その美味しさのとりこになったんだとか。

 

それ以来毎月のマンスリーバースデイをお祝いするようになり、犬用ケーキを食べるのが習慣になりました。

 

毎回、柴ドリルのようにケーキを食べ進む元気なハルくんを見ると、とても幸せな気持ちになるとともに、大笑いしているそうです。

 

柴犬

 

食事は、今の年齢になるまで、基本的にドライのドッグフード中心ですが、お水にはこだわりがあるようです。

 

「この辺りは地下水が湧くので、家族もハルもこの地下水を飲んでいます。いわゆる天然水ですね。

 

今は2時間おきに水分補給をし、食事は昔と同じ朝と夕方の2回ですが、体重は8kgをキープしています。

 

食べることが体力につながると思うので、旺盛な食欲も長生きには大切だと思います。

 

一時は前庭疾患による発作が頻繁に起き、都度点滴で対応してましたが、最近は発作もなく、日々のお薬として消炎剤、点耳薬、それにサプリメント(アンチノール)で過ごせてます。」(パパさん)

 

柴犬

 

「正直19歳にもなれば一緒に過ごせる時間は決してもう多くない。だからこの時間を大切にしたいんです」と語るママさん。

 

今も天気の良い日は日向ぼっこをし、毎日パパさん手作りのカート“ハルちゃん号”に乗って、若い時からのお散歩コースを楽しむハルくん。

 

パパさんがカートを押し、ママさんがSNS用の写真撮影をしながら思い出が毎日増えているそうです。

 

甘えん坊になったハルくんは、取材中もずっとご主人の腕の中でまどろみ、おむつを替えてもらっていました。その姿はまさにご夫妻の可愛いベイビー。

 

生後2ヶ月で迎えられてから19年、今またパピーの頃のように家族の手でケアされる彼の表情は幸せに満ちているのです。

 

柴犬

 

取材・文/横田愛子

 

★「#レジェンド柴」で投稿お待ちしています!

柴犬ライフでは、取材にご協力頂けるとレジェンド柴を探しております!

12歳を超えた柴たちは、「#レジェンド柴」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。

編集部から取材のお声がけをさせて頂くかも!?

 

 

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