【取材】10歳で歩行困難になるも12歳で再び歩けるように!16歳の菊ちゃんの長寿の秘訣はパパの“あんよ体操” #26菊
平均寿命が12〜15歳と言われる柴犬。そこで我らが『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。今回登場するのは、16歳半の菊ちゃん。家族の献身的なケアで奇跡の復活を遂げた女の子です!
菊ちゃんのプロフィール
年令&性別
16歳6カ月の女の子(2005年9月10日生まれ)
体重
8.6kg
大好きなこと
泳げないけど海が好きで、浜辺のお散歩が大好き。
既往歴
・1歳のとき全身の体毛が抜ける。
・4~5歳のころに膀胱炎に。
・10歳のころ、後ろ足がすり足になり、神経や周囲の血管が圧迫されて起こる馬尾症候群との診断。
・15歳のときに発酵前のパン生地を誤飲。
4歳で膀胱炎、10歳で馬尾症候群に
海辺のお散歩が大好きな菊ちゃんは、16歳の女の子。
菊母ちゃんこと、オーナーの飯塚美和さんが「我が家は夫婦ふたりなので、しっぽのある娘として育てています(笑)」というほど、愛情を注がれて育ちました。
多くの柴犬がそうであるように菊ちゃんも皮膚が弱く、1歳のときに全身の毛が抜けてしまったためアレルギー検査を。
原因の特定はできなかったものの、おそらく花粉アレルギーではないかと言われ、それ以降、お散歩時には洋服を着せ、散歩後は外でブラシをかけて足を洗い、花粉をつけたままにしないように徹底しています。
また4~5歳のころには、膀胱炎に。
普段は吠えたりしない穏やかな菊ちゃんが、「おしっこをする体勢で、“おしっこが出ない”って鳴いたんです」と菊母ちゃん(以下「」内同)。
膀胱炎は薬で完治しましたが、数値が安定している今も3カ月ごとに定期検査をしています。
さらに10歳のころには、歩くときに後ろ左足をするように。そのせいで肉球もすり減っていました。
かかりつけの動物病院では股関節形成不全と診断され、経過観察に。そこで別の病院でお灸と漢方薬での治療を試みたものの、すり足は改善せず3つ目の病院へ。
ここで馬尾症候群と診断され、注射や投薬治療を受けますが、思うような効果は出ませんでした。異変に気づいてから、すでに1年半が経っていました。
元のかかりつけ医に戻り、これまでの経緯と馬尾症候群と診断されたことを伝え、注射など投薬治療を続けたところ、少しずつ回復。
「結局、何が効いたのかわからないんですが、すり足は12歳のころには治って、普通に歩けるようになっていました」。
その間、欠かさず続けていたのが病院で教わった足の体操。
お家では“あんよ体操”と呼び、父ちゃんが足を動かしてあげるのが毎晩の日課です。
「すり足だった菊を知ってる人は、今の姿を見て“よかったね”って言ってくれるんです」(菊母ちゃん)。
何箇所もセカンドオピニオンを受けたり、父ちゃんが毎日欠かさず体操をサポートしてくれたり。この家族の愛が、菊ちゃんを復活させたのかもしれません。
誤飲処置の後、けいれんのような発作が
シニアといわれる年齢になっても元気だった菊ちゃんですが、15歳のころには発酵前のパンを誤飲。おなかでパンの生地が膨らむと危険なので、急いで病院で処置をしてもらいました。
しかしその後、「後ろ足、前足、頭がビクッとけいれんするような動作が続いたんです」。
けいれんのような動きは次第にひどくなり、息は荒く、舌はべろーんと出たまま。
「怖くて怖くて。菊が死ぬのが現実になる不安を、初めて感じました」。
診療時間外でしたが、慌てて病院に電話。獣医師が持ってきてくれた座薬で症状が収まります。
発作の原因は、15歳という高齢の菊ちゃんには誤飲処置で使った注射が強すぎたためとのこと。
「発作が認知症を早めた気がしていて……。あれがなければ、今ももっと元気だったんじゃないかと思います」と誤飲を深く悔やんだそう。
「15歳当時の菊は、まだまだ若々しくて元気いっぱいで、シニアだという感覚が薄くて。それ以来、菊は若く見えてもいい年齢なんだと意識するようになりました」。
健康の秘訣は“あんよ体操”とお灸
16歳になってからは、老いを実感することが増えてきました。すき間を見つけて入り込んでしまうのも、そのひとつ。
「こんなところに!?って、すき間を見つけるのが天才的。2回に1回は自分で戻ってきますが、様子を見て戻ってこれないときは助けに行きます」。
そんな菊母ちゃんが考える健康の秘訣は、“あんよ体操”と棒灸だそう。
体操は、後ろ足を引いて伸ばす、上下の曲げ伸ばし、足の付け根を回す3種類の運動を左右20回ずつ。
「やり方が間違っていないか、ときどき病院で先生に確認してもらいます」。
この体操のおかげで筋肉がついているのでは、と先生から言われているそうです。
また足の治療で始めたお灸は、1年前からほぼ毎日。
「頭からしっぽまで、背中を30分かけて、ゆっくり温めます。その後、後ろ足を15分ずつ。寝てる間にするんです。
もともと人間用のものですが、温めるのは気持ちいいと思いますし、これからも続けていくつもりです」。
また、16歳以降は歯磨きも頑張っています。
「歯石が気になって先生に相談したら、先生も驚くほど歯石がこびりついていました。
“取ってみましょうか?”って、麻酔なしでパキパキって取ってくれて。塊が飛んで、びっくりしました。キレイに取れたので、今は心を入れ換えて歯磨きをしてます」。
菊母ちゃんが使うのは、子ども用の360度歯ブラシ。
「毎回、歯ブラシが真っ黒になるんですよ! 口の中って、汚れているんですね」。
シニア犬は、みんな愛おしくて尊い
お散歩は、カートに乗せて出かけ、歩きたいときは自分で歩かせ、疲れたらまたカートへ。
海が好きな菊ちゃんは、海辺に行くと足取りが軽くなるそうです。
「最近はあんまり表情がなくなってきているけど、頭に刺激を与えるように言葉がけをしています。しっかり自分の足で歩いているので、まだしばらくは歩けそうです」。
身近な犬友さんの中では、菊ちゃんが最年長に。
「昔から仲がよかった菊のお友達は、みんなお空に逝っちゃいました。
身近で16歳の子がいないので、SNSで16歳、17歳、18歳の子を見ると、菊はまだ若いなってホッとしたり、励みになりますね」。
長年、一緒に暮らしていると、菊ちゃんへの愛しさは増すばかり。
「今の菊がいちばんかわいいんですよね。菊だけじゃなくて、インスタで見ている会ったことないシニア犬たちも、みんな愛おしくて尊く思えてきます。
愛情を持って育てられた子って、違って見えるんですよね。
菊もよく“かわいがられてる顔をしてる”って言ってもらうんですけど、表情や全身に出ているんでしょうね。
だから、よりかわいく、愛おしく見えるんだと思います。
宝物の菊だけど、いまだに目には入れられません。この暮らしの中で、いつの日にか菊が目に入ることがあると思います」。
体操もお灸も、菊家の温かさが伝わるスキンシップ。菊ちゃんの全身から、家族の愛があふれるのが伝わってくるようです。
取材・文/都丸優子
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