【取材】好きなだけ食べて遊んでOK!自由に生きて17歳に。18冊目の「散歩ノート」などアイデア満載の柴犬ライフにも注目! #29銀牙
平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。
そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。今回登場してくれたのは、リーダー気質で優しい性格だという17歳の銀牙くん。約1年前から前庭疾患で寝たきりになりましたが、愛&アイデア満載の介護で幸せな日々を過ごしています。
銀牙くんのプロフィール
年齢&性別
17歳5ヶ月歳の男の子
体重
10.2kg(若い頃は23kgの立派な体格)。
大好きなこと
大型犬と遊ぶこと、BBQ
既往歴
・生後4ヶ月の頃に滴下タイプのノミ ・ダニ駆除薬でアレルギーに。
・16歳で前庭疾患を発症。
食事量に制限はなし! 食と運動と培った健康
銀牙くんは先住犬だった珊瑚ちゃんのお婿さんとして迎えられ、息子の光牙くん、娘の雲母ちゃん、養子に出した心愛ちゃんをもうけました。
残念ながら銀牙くん以外はすでに虹の橋を渡りましたが、みんながいる頃は群れのリーダー犬として、母犬以上に我が子を可愛がるイクメン柴だったそう。
「生後11ヶ月でパパとなった銀牙ももう17歳。今でこそ寝たきりだけど、16歳で前庭疾患を患うまでは大きな病気や怪我とは無縁でした。
持って生まれた強い体のおかげだと思いますが、他に長寿の理由があるとしたら食事と運動、あとは犬同士の触れ合いでしょうか。
ごはんは要介護になった今はシリンジであげられるロイヤルカナン退院サポートのウルトラソフトですが、それまではライフステージに合わせたサイエンスダイエット一本。
出身の犬舎さんと同じ食事をあげるようにしていて、そこに鶏肉を炊いたスープを肉ごとトッピングするのが定番でした」(オーナーの齋藤清隆さん=以下「」内同)。
ハイシニアになった今は体力維持のため、『リポビタンDハイパー』を水で希釈したものを水の代わりに与えてたりもしているそう。
そして驚くことに、若いころから食事量には制限を設けてなかったんだとか。
「食べたがるのは体が欲しがっているということ。食事の時間は決めていますが、食べ足りなそうならおかわりを入れます。これは我が家の4柴みんなそうしていました。
おやつには骨を強くするために煮干しやチーズ、ジャーキーを選び、無添加のものを選ぶよう気をつけています。
また運動も大切。平日は雨でも台風でも朝と夜に最低30分以上、週末は木陰での休憩や自由運動を盛り込んだ4時間程度のロングウォークを日課にしていて、食と運動のバランスを大事にしていましたね」。
パピーの頃からずっと室内飼いという銀牙ファミリーですが、その生活環境にもさまざまな工夫が。
「リビングは犬たちに開放し、室内でも自由に過ごせるように。
我が家は子供4人の大家族で、子供と犬がたくさん触れ合えうだけでなく、犬同士でも遊んでいました。
ごはんと遊びが常に満たされていたのが、結果的に良かったのかな」。
ちなみに銀牙くんは有名動物番組の再現VTRで俳優犬として活躍したこともあるそうで、そんな刺激的な経験も、健康にひと役買っていたのかもしれません。
散歩ノートをつけて体調を家族で共有
銀牙くんの体調管理に欠かせないのが、18冊目にもなるというお散歩ノートの存在。
「家族6人、それぞれ仕事や学校などで忙しかったため、子供が小さい頃はお散歩当番を決めていました。
散歩に行っていなくても、家族全員が銀牙たちの様子を把握できるよう、散歩で気づいたことを書き留めるために作ったのが“お散歩ノート”です。
当初は珊瑚の出産に伴う育児ノートだったのですが、徐々に排泄の状態や散歩道で除草剤を撒いているエリアなど、気づいたことをメモするように。
このノートのおかげで、誰が散歩に行ってもその日の体調などが分かるようになったんです」。
また、毎日全身をくまなく触ることも欠かさなかったそう。
「皮膚や皮毛に異常がないか、触られて嫌がる場所がないかを日々チェックしていました。もし異変があっても早く発見すれば、悪化する前に獣医師に診察してもらえますからね」。
また、犬たちも銀牙くんのケアをしてくれていたのだとか。
「毛繕いの延長みたいな感じで、珊瑚が耳や口の中まで舐めてお手入れしていました。珊瑚亡き後は、娘の雲母がケア担当に。
犬同士でスキンシップを兼ねてお手入れしていたんでしょうね。だからなのか、耳や口腔トラブルはほぼありませんでした」。
ノートに全身チェック、さらには犬同士のグルーミングで日々の健康をキープしていたからこそ、ハイシニアになるまで病気知らずだったのかもしれません。
明日がわからなくとも今を楽しむ
銀牙くんが前庭疾患を患った頃には、すでに雲母ちゃんの介護が始まっていました。2柴の介護はもちろん大きな負担でしたが、それでもパパさんやママさんは前を向きます。
「当初は本当に大変でしたが、同じく柴と暮らしているトリマーさんから介護グッズなどの情報を教えてもらったり、獣医さんからアドバイスを得て色々工夫するように。
銀牙は寝たきりになった当初はまだ体力があったため、眼振が起きると暴れることもあり、怪我をしないようクッションで囲ったサークルを使い始めました。
オムツで股ずれが起きたり床ずれもするので、夜中に何度か姿勢を変えるのも欠かしません。
でも床ずれはなかなか治らず、漢方薬や傷口を乾燥させるイサロパンという粉状の薬でケアをしています」。
昼間は奥様、夜はご主人が介護を担当しているそうですが、介護は体力勝負。そこには愛とアイデアが欠かせません。
「銀牙がなるべく快適に過ごせるよう常に考えています。
夜はしっかり眠れるように睡眠薬を使い、眠ってからは床ずれ防止に姿勢を変えてあげたりもします。
また、床ずれの痛みが和らぐよう患部を冷やしたりも」。
主に介護を担当している奥様は、一時昼夜が逆転して大変だったそう。しかしながら「抱っこしてるとパピーに戻ったみたいで、銀牙の体温を感じられることが幸せなんです」と、今では介護ならではの幸せも感じていると言います。
「だけど同時に2頭を介護していた時は壮絶でした。
そんな時に夫が『愛犬との幸せなさいごのために: 必ずくるお別れのときに後悔しない知識と心構え』という本をくれ、それを読んで介護も楽しもうと前向きな気持ちになれたんです。
また、疲れた時は自分へのご褒美に甘いものを食べたり、ちょっとした息抜きをすることがすごく大事ですね」。
ちなみに齋藤家では、犬用と人用で洗濯機が2台あるそうです。
「介護生活ではどうしても洗濯物が増えるので。暮らしをより便利にすることも、介護を楽しむ上で必須だと思います」
セカンドオピニオンの重要性も痛感
介護に行き詰まった時、当時かかりつけだった先生に“これ以上新しいことはできない”と言われたのをきっかけにセカンドオピニオンへ。このことも、介護への心理的負担が大きく減ることに。
「今の先生は薬や治療法を複数提案してくれ、私達が納得できる方法を選べるようになったんです。それがありがたいですね。
今は1週間おきに病院へ行っていますが、その度に疑問や困っていることを尋ねてアドバイスをもらいます。
今も眼振が起きるので、脳内の興奮を抑える薬を飲ませたり、眠くなる薬を使用たり。
こうして私たちに合う先生と治療法に出会えたので、セカンドオピニオンを恐れずに受けることが大事だと改めて気付かされました」。
そして最後に、齋藤さんはこう話してくれました。
「今は毎朝、生存確認から始まり、明日はどうなるかわからないと思っています。だけど今この時間を楽しみたい。だってこれまで、この子にもらった幸せな気持ち、癒やしの時間は計り知れませんから」。
取材・文/横田愛子
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