2020年10月23日40,014 ビュー View

【取材】「ええあんばい」で17歳に。オーナーも犬も頑張りすぎないのが長寿の秘訣 #7ココ

平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。

そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。

今回は京都で消防団犬として活躍し、今は少し認知症が始まったけれど変わらず地域の愛され柴として日々をはんなりと過ごす17歳のココちゃんを取材しました。ストレスのない暮らしが長生きの秘訣だと語るオーナーさんの“犬育て術”は、すべてのワンコオーナーにとって参考になる工夫がたくさん詰まっています。

 

ココちゃんのプロフィール

年齢&性別

17歳5ヶ月の女の子

体重 

4.9kg(若い頃は7.5kg)

大好きなこと 

お散歩。

既往歴

6歳の時に子宮蓄膿症になり緊急手術。

12歳で椎間板ヘルニアを発症。13歳で再発。

14歳の時にもともと弱かった股関節に関節炎を発症。その年の暮れに前庭疾患を患う。

17歳で腎臓の数値が悪化、薬とサプリを飲み始める。

 

家族を驚かせた脱走事件あり、消防団犬としての活躍あり!

柴犬,子犬

 

ココちゃんのお宅は京都で85年続く骨董品店。

 

そこの看板犬としておしとやかな幼少時代を過ごしたのかと思いきや、実は若かりし日の彼女は何度か家族の肝を冷やすこともあったそう。

 

オーナーの村田きよみさんにお話を伺いました。

 

「ココは京都の柴犬専門のブリーダーさんから迎えた子で、実はココの前に同じ犬舎から“ちゃちゃ”という名の柴を迎えていたんです。

 

ちゃちゃはやって来たその日からご飯を食べず元気がないので、結局再びブリーダーさんの元で預かってもらうことになったのですが、その数日後に虹の橋を渡ってしまいました。

 

そんなことがあり、しばらく犬を飼うのはよそうかと思ったけれど、何度か足を運んでいた同じ犬舎で息子が気に入った柴がいて。それがココです。

柴犬と子供

 

不思議なもので、その後血統書を見ると、実はココとちゃちゃは母系の曾祖父母が同じ。血縁関係があったのです。

 

何頭もの柴の中から迷わずココを選んだ息子、そして血縁。これは運命なのかもしれないと感じました。

 

ココは元気な子でしたが、2歳の時には脱走して迷子になり警察まで迎えに行ったり、近所の交差点で発車しかけたタクシーの側面にあたったことが。

 

どちらも幸い怪我はなかったですが、何度もヒヤリとさせられましたね」

 

そんなおてんばと言える時代もありつつ、ココちゃんはすくすくと成犬に成長します。

柴犬

 

「ココが5歳の時、義父が地元の消防団の団長だった縁もあって、地域に貢献する消防団犬になりました。

 

消防活動のキャンペーンのお手伝いや巡回に参加したりと、元来人が好きな子なので、楽しんで活動していたように思います。

 

これがNHKのニュースで取り上げられたことで、その後何度かTVでも紹介してもらいました。

 

この活動で様々な人に触れ合った経験が、今思えばココにとって良い影響を与えていたのかもしれません」

柴犬

 

予想だにしていなかった病。そしてヘルニアと向き合うことに。

柴犬,シェルティー

 

それまで大きな病気も怪我もなかったココちゃんですが、6歳になった真冬のこと。突然ご飯をまったく食べなくなりました。

 

「これは絶対におかしいと病院へ行きました。検査すると子宮蓄膿症で即手術とのこと。

 

言われてみれば以前から性器を舐めることがあったので、それでか! と。手術は1時間半程度でしたが、退院は4日後。

 

お腹と両前足の毛を刈られ、まるでプードルのようでした……。

 

子宮蓄膿症は完治しましたが、その翌年に椎間板ヘルニアを発症。

 

薬の服用と安静が必須でしたが、ココはお外トイレ派なので、朝晩は抱っこで散歩させ、モゾモゾし始めたら下ろす、という風に外に出ていました。

 

家にこもらせっぱなしだとストレスが溜まると思い、なるべくストレスのないような工夫もしました」

柴犬

 

実はストレスについては持論があるそう。

 

「お世話になっている獣医さんは“ストレスが一番あかん”という考えで、普段からストレスに配慮くださる方。

 

私自身もストレスは溜めたくないので、お互いにストレスのない暮らしを心掛けています。

 

このストレスフリーな環境が、ココの長寿に影響していると思います。

 

例えばささみジャーキーなどのおやつは手作りしてますが、フードは私がストレスになるから、手作りはしない。

 

とにかくオーナーが頑張りすぎないことがコツで、私がストレスを感じていると犬ってそれを察知します。

 

もちろん良いと言われることは取り入れるけれど、固執せず柔軟にゆるく、“ええあんばい”でやるのが私とココにはいいのです。

 

子宮蓄膿症になるまで病気らしい病気がなかったのも、ストレスとは無縁だったからかもと思ってます」

 

犬とは接しなかったココちゃん。シェルティーの妹を迎えたことで良い変化が。

柴犬,シェルティー

 

ココちゃんが12歳の時、シェルティーのルナちゃんが家族に。ルナちゃんの登場によって、ココちゃんにある変化が起きました。

 

「ココは人は好きだけど犬には全く興味がない子で、自分を人間だと思っているタイプ。

 

ルナは、ココといっしょに育った娘がドッグトレーナーを目指して専門学校に進学した時に、パートナードッグが必要だということで迎えた子です。

 

最初は相性を心配したものの、自分を人だと思っているココはルナを見て“あら、犬を飼ったのね”という態度ですんなり受け入れていました。

 

ルナは昼間は娘と学校へ行くので、ココと過ごすのは主に夜なのですが、シェルティーらしい持ち前のフレンドリーさでココやほかの犬に接します。

 

その姿につられたのか、ココもその頃からお散歩中に出会う他のワンちゃんに心を開くようになりました。

 

柴とシェルティー、全く性格もタイプも異なるけれど、気づけば寄り添っていていつの間にか姉妹になっているんだと感じましたね。

柴犬

 

最近は足腰がめっきり弱ってお散歩は抱っこ中心のココですが、他の犬に心を開いて以来、散歩中に知り合いの犬を見かけると“下ろせ”とアピールするんです。

 

ワタシまだ歩けるわよ、とカッコ良いところを見せたいのか。

こういうところは柴犬らしいですよね。

 

それにルナが来たことでココはなんだか若返りました」

 

ルナちゃんの登場により犬友達が増えたというココちゃんですが、その翌年には椎間板ヘルニアになり、股関節が関節炎を起こすなど年齢とともに少しずつ体に衰えが出始めたそう。

柴犬

関節炎になったとき。

 

「股関節は生まれつき弱かったのが年齢を重ねて表に出てきたようです。

 

この頃から『アンチノール』を飲ませ始め、効いているような気がしてずっと続けています。

 

でも、この年の暮れに前庭疾患になり、これにはうろたえました。

 

突然ココの目に眼振が起きて、ぐるぐる同じ場所を回りはじめて…。その姿が衝撃的で、とにかく見ているのが辛かったですね。

 

尋常じゃない姿に病院へ駆け込み、そこから1週間、毎日点滴を打ちに通院。

 

点滴を開始して日が経つにつれ眼振の回数が減り、ようやくホッとしました。

 

病気や怪我が少ない子だっただけに、この時が一番心配しましたね」

 

年齢を重ね少しずつ認知症も。でも朗らかに日常を楽しむ姿はお見事!

柴犬

16歳を過ぎた頃から老化がチラホラと顔をのぞかせ始め、今はちょっぴり認知症の気配もあるとのこと。でもオーナーの村田さんはどこまでも朗らかに、そして前向きにココちゃんを支えます。

 

「去年あたりからひざ関節に痛みが出始めたようで、病院でココ用のサポーターを作って対応したり、以前から気になっていた腎臓の数値が悪化してきたのでサプリメントを追加しています。

 

そして最近は少し認知症が出てきたのか、夜中に2〜3回は起きてうろうろ歩き回ることも。

 

でもサークルを作って動ける範囲を限定するのは、ココにとって“おもろない”はず。

 

だから自由に動ける部屋を決め、危ない部分やコーナーはクッションや段ボール、座布団などで覆っています。

 

転んだら鳴いて私を呼ぶのですが、痛いのか、起こして欲しいのか、鳴き声を聞き分けられるようになってきました。

 

それにあちこちを完璧にカバーしているつもりでも、ココはちょっとした隙間を見つけて入り込んだり挟まっています。

柴犬

 

だから毎日“この隙間を見つけられちゃったか〜”なんて、笑いながらココと私で知恵比べ。

 

17歳ともなると本当に色々分かってるので、お互い楽しみながらシニア生活を過ごしていますよ」

 

マイペースを尊重して、ゆるくゆったり心地よく。

柴犬,シェルティ

 

食事は朝晩2回。最近は朝ご飯は気分が乗らないと残すことも増えたようですが、そういった“ココちゃんのペース”を受け入れることを大切にしているそうで…。

 

「食べない時はすぐ片付けるのではなく、少し時間を置いてもう一度出したり。

 

寝る前に食べることも多いので、感覚的には4回くらいに分けてご飯をあげている感じです。

 

最終的に1日分をちゃんと食べてくれれば良いので、ココのペースを尊重してますね。

 

何事もゆるく、気張らずです。

 

もちろんゆるさには良いゆるさと悪いゆるさがあって、健康を守るための部分はゆるめません。

 

でもそれ以外は決めつけすぎず、臨機応変がモットー。結果、それが心地よさにつながると思います。

 

長生きして欲しいという思いはみんな共通ですが、体と心が心地よい状態で過ごしてくれることが一番。

 

そういえば、ココは自分を人やと思うてはるけど、ココを見て育ったルナは自分を柴犬やと思うてはる。

 

最初、多頭飼いは大変だと思ったけど、大変なのは金銭面だけで楽しさは2倍以上。ルナがいることでココが元気でいられるのだと思うことも多々あるのです」

柴犬,シェルティー

 

時々柔らかな京都弁を交えながら、日々をゆったり暮らすココちゃんの様子を教えてくださった村田さん。

 

ココちゃんを愛する気持ちはもちろん、感じたのはとにかく朗らかで明るいということ。

 

人も犬も年を重ねると痛みや認知症が出てくるけれど、それすら笑って楽しめる器の大きさこそが、ココちゃんが17歳を超えた今もお達者な秘訣なのだと感じました。

 

 

取材・文/横田愛子

 

 

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