【取材】亡き父のためにつけたハッシュタグ「#レジェンド柴」。17歳のさくらが家族の絆を深めて… #17さくら
平均寿命が12〜15歳と言われる柴犬。そこで我らが『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。そんなレジェンド柴たちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの特集。今回登場するのは、一時は死を覚悟したほどの状態から奇跡の復活を遂げた17歳のさくらちゃん。実はこの取材、昨年亡くなられたさくらちゃんパパが導いてくれたと思えるご縁なのです。
目次
さくらちゃんプロフィール
年齢&性別
17歳7か月(2021年11月時点)の女の子
体重
6.8kg(MAX12kg)
大好きなこと
散歩、食べること
既往歴
・10歳の頃に外耳炎に。
・16歳の夏に急に倒れて立てなくなる。高齢のためMRIなどの精密検査はおこなわず、血液検査から「神経系の異常。脳腫瘍の可能性がある」と診断。
“犬は自分を家族の下から二番目と思っている”を地で行くさくらちゃん
徳島県にお住いの村上さんのお宅にさくらちゃんがやって来たのは、今から17年前。さくらちゃんが生後3か月、村上家の末っ子・亮さんが5歳のころでした。
「息子が小さい時から“犬が欲しい、犬が欲しい”って、ずっと言っていて。あまりに言うもんだから、新聞の“子犬譲ります”って言うのを見て、主人と相談してもらいに行ったんです。
出かけてた息子が帰って来て子犬がいたら喜ぶかな? と思ったら、そうでもなくて。世話もあまりしませんでした(笑)」(ママさん)と、ちょっと肩透かしを食らってしまったパパさん&ママさん。
しかしさくらちゃんを迎えるにあたって、子供たちに「飼うならちゃんと責任を持ちなさい」と、犬の飼い方についての本やビデオをしっかり見せていたため、当時は亮さんに代わって(?)上のお姉さんお2人がお世話をしていたそうです。
「僕は結構さくらになめられてて、下に見られてたんで体を触らせてもらえなかったんです。ちょろっと後ろからなでたりはしてましたけど」(亮さん)。
「確かに。吠えられてましたね」(ママさん)。
これも今ではいい思い出。ママさんいわく、亮さんが高校生、さくらちゃんが10歳を過ぎたあたりから「急に仲良くなり始めた」そうで、現在亮さんはさくらちゃんの日常や家族との思い出をインスタグラム( @shiba_sakura_2004)にたくさんアップしています。
愛情いっぱいの投稿が人気で、フォロワーさんも300人超え! じつは今回も取材も、このインスタグラムがきっかけとなりました。
飼育方針は“野生を忘れさせない”!?
穏やかな表情からもわかるように、昔から優しい性格のさくらちゃん。
「子供たちが小さい時によくケンカをしていたんですが、泣いてる子のところに寄り添って、手をペロペロとなめながらなだめたり、なぐさめたりしてました。
その優しさは今も変わりません。主人が病気をした時もいつもそばにいて、お見舞いしてましたね」(ママさん)。
その一方で怖がりな一面もあって、知らない人が近づいてくるとガウガウと威嚇してしまうため、これまでに家族以外でさくらちゃんに触れられた人は10人未満。ワンちゃんのお友達はほとんどいません。
だからこそより一層、家族との結びつきが強くなったとも言えるのですが、さくらちゃんは決してぬくぬくと育ったわけではないそうです。聞くと、最初は外飼いだったんだとか。
「私が“犬は犬。野生を忘れさせないように甘やかしたらダメ”と勝手に思っていて、家の2階のベランダで飼っていました。
うちは2階にリビングがあるので家族がよく見える位置ではあるし、夏は暑くないように、冬は寒くないようにはしてあげてましたけど、主人はそれをかわいそうだと思っていたんでしょうね。すごく愛情を注いでかわいがってましたから」(ママさん)。
さくらちゃんが村上さんのお宅にやって来た17年前は、まだまだ外飼いも多かった時代。和犬である柴犬だったらなおさらです。
「ベランダはそこそこ広くて、自由に走り回ってました。
家の前が道路なんですけど、車や人が通ると毎回ベランダで“柵を越えるんじゃないか!?”ってくらいジャンプをくり返してて。それで脚力がついた気がします(笑)」(亮さん)。
外飼いでも大丈夫だったのは、日本の気候に適した体質で自立心が強く、孤独を感じにくい傾向にある柴犬だからこそのエピソードかもしれません(しかし酷暑やゲリラ雷雨など、日本の気候が昔より大きく変化してしまった現代では、室内で飼うことを推奨します)。
さくらちゃんはその後、10歳くらいの頃には夜だけ家の中へ入れるようになり、11歳あたりからは完全に室内飼育に。
「家の中でも制限はしないで、ボクら家族と同じように自由に部屋の行き来をさせてたんです。
そういうふうにストレスを溜めさせない生活が、長生きの秘訣としては一番かな、と思います」(亮さん)。
食べる力は生きる力。昭和風の育て方でレジェンドに
室内飼いになってからは家の中を自由に歩き回り、キッチンに置いてあった生の大根やキャベツをかじって食べてしまうこともあったという、食欲旺盛なさくらちゃん。
毎日の食事はナント、この17年間『愛犬元気』一筋! ライフステージに合ったドライフードをトッピングなしで食べ続けてきました。
そして、14歳あたりからはウェットタイプ(缶詰)に切り替え。
ただ、昔から家族でお鍋をした後のシメの雑炊を薄めて与えることもあるなど、食事管理に関してはあまり気を遣っていなかったそう。
「外飼いもそうですけど、ごはんに関しても“昭和風”というか。“絶対に人間の食べ物は与えない!”とか、そういうところまではしてませんでした。
でも、これだけ長生きしてくれてるんで、その昭和風の育て方がさくらには合っていたんだと思います」(亮さん)。
「今も食欲はすごくあるのでトッピングはしなくても食べてくれるんですが、あまりにも体重が落ちたので、茹でたササミやかぼちゃ、ブロッコリー、大根なんかを混ぜて与えてますね」(ママさん)。
現在では、ほかにもビタミンやミネラルが配合された流動食『わんわんカロリー』も併用して効率的にカロリーを摂取できるようにしたり、関節のためのサプリメント(コンドロイチン)を1日2粒飲ませたりと、いろいろ工夫をされている様子。
ちなみに、おやつは必要以上に食べさせていません。これに関しては「あげるとたぶん無限に食べてしまうから(笑)」(お姉さん)、「おやつの食べ過ぎで野生を忘れて欲しくない」(ママさん)というのが理由だそうです。
寝たきり生活から奇跡の大復活
外耳炎以外の病気をしたことがないくらい体が丈夫なさくらちゃんでしたが、昨年の夏、大病を患いました。
「突然グルグルまわりだして、吐いて倒れてしまったんです。ぐったりして、首をあげることすらできず、まったく動かなくなってしまったんで、病院でも“ちょっと危険”と言われました」(ママさん)。
診断結果は、脳腫瘍の疑い。確定診断が下りなかったのには、村上さんがお住いの地域的な問題が…。
「徳島県にはMRI検査ができる動物病院がなかったんですよ。
ぐったりした状態なうえに高齢なので県外へ行くのはもちろん、全身麻酔で検査するのも難しかったので、かかりつけの病院で血液検査とレントゲンだけをしてもらったんです。
そうしたら、内臓には問題がなく、脳の神経系のほうに異常があることがわかって。“脳に腫瘍があるんじゃないか”と言われました」(ママさん)。
為す術がなく、その日は点滴だけしてもらって帰宅したそう。でも、ここからさくらちゃんが奇跡を起こすのです!
「特別な治療はしてないのに10日くらいで少しずつごはんを食べられるようになって、そこから徐々に回復していきました。
母が朝、外に連れ出して歩く練習をさせたりしてくれたおかげもあって、2〜3か月かけて普通に歩けるくらいまでになったんです」(亮さん)。
「それから1〜2か月に1度は検診に行ってて、“腎臓の数値が悪いよ”って言われても次に行った時にはよくなってたりするんですよ。
先生が心音を聞いて“この子、心臓強いね”って言ってくれてます」(ママさん)。
その後、発作的なものはないのですが、後ろ足の麻痺が強くなってしまったため、自力歩行が難しくなってしまったさくらちゃん。これも脳腫瘍の影響だと考えているそうです。
自然と触れ合わせることで生きる気力を
現在は、お尻を支えて立たせてあげると少しの間立っていられる&数歩前へ進める程度。さくらちゃんが大好きなお散歩はどうしているのでしょう?
「後ろ足を補助するハーネスやカートを使って、母が外の空気や風を感じさせに連れ出してくれてます」(亮さん)。
「抱っこして、今までの散歩コースを歩いたりもします。
近くの堤防や電柱のにおいを嗅がせたりしながら。夏の暑い日にも少しだけ外に出て暑さは感じてもらってますし、雨の時は屋根のあるところで雨を見せてますね。
自然と触れ合わせたいので、水たまりにちょっと触らせたりとかもして」(ママさん)。
それがさくらちゃんにとっていい刺激となり、生きる気力にもなっているのは明らかです。
そして、最近はご友人から譲り受けたという手作りの犬用の歩行器(枠のみ)を改良して、さくらちゃんにピッタリくる歩行器を製作中なんだとか。
「まだ完成してないんですけど、それに乗せてあげると、得意げに歩いたんです。
昨日も乗せたら、すごくうれしそうで。昨年の夏に倒れた後も、外に連れ出して抱きかかえながら歩かせるふりをしていたら、だんだん復活してきた気がするので、これからもできる限り自力で歩かせてあげたいと思ってます」(ママさん)。
「後ろ足に麻痺があってどうしても交互に足を出せないんで、極力前足だけで歩けるように工夫をしてあげたいですね」(亮さん)。
手がかかるのは子育てと同じ
昨年の夏から始まった愛犬の介護生活。じつは、亮さんもお姉さんお2人もすでに家を出ているため、普段はママさんがさくらちゃんのお世話を一手に担っています。
毎日のお散歩、体重維持のための食事管理、褥瘡(床ずれ)ができないように体圧分散性に優れたマットに寝かせて体位変換をこまめにしてあげるなど、基本的なことに加えて、ママさんならではのこんな思いやり介護も。
「朝、ホットタオルで関節を温めてあげてます。私も体が冷えると関節のあたりが凝ったり、痛んだりするので気持ちがわかるな、と思って」(ママさん)。
そして、現在は徳島を離れ、大阪で理学療法士のお仕事をされている亮さんからはこんなお話も。
「後ろ足の麻痺がひどくならないように、曲げ伸ばしの運動も母にしてもらうようにしてます。
筋肉は引っ張ることでも伸ばせるんですが、圧迫するだけでも伸長して緩むので、緊張が強い部分に対しては圧迫を加えてあげるように伝えてます。
筋肉や関節を先に温めてから圧迫や曲げ伸ばしの運動をしてあげると筋がより動きやすくなって、関節も痛めにくくなるのでホットタオルはいいですね。母もいろいろ工夫してやってくれてるのでありがたいです」(亮さん)。
亮さんやお姉さんたちの「本当は近くにいて自分がお世話してあげたい」という気持ちを背負って、日々頑張っているママさん。一時期はさくらちゃんの夜鳴きがひどく、2時間おきに起こされたこともあったとか。
「病院の先生に“認知症がある”って言われたんですけど、子供たちが帰ってくるとわかるみたいで明らかに表情が違うし、私が仕事へ行く準備をしてると寂しいからか吠えるんですよ。
だから、結構わかってるな、と思うんです。夜鳴きで眠れない時はちょっとしんどかったですけど、子育てもそうだったから仕方ないかな、と思ってます。
ただ、弱っていく姿を見るのはキツイですね」(ママさん)。
ママさんのポジティブ精神と明るさに支えられている、さくらちゃんのシニアライフ。
テレビ電話でさくらちゃんの様子を見守ったり、ママさんから送ってもらった写真をInstagramにアップしている亮さんも、できる限り月に一度は帰省して、さくらちゃんとの時間を過ごしているそうです。
亡き父のために…。『柴犬ライフ』に取材してもらうためにインスタをスタート
じつは、村上家の大黒柱で、さくらちゃんと一番の仲良しだったパパさんは、ご病気のため昨年9月にご逝去されました。
「父が亡くなった後、父の携帯に『柴犬ライフ』さんのアプリが入ってるのを母が見つけて、僕に“お父さん、闘病中にこれを見てたみたい”って教えてくれたんです。
それで、“#レジェンド柴”をつけてインスタに写真を載せたら、『柴犬ライフ』さんにさくらのことも記事にしてもらえるんじゃないか、そうしたら父も喜ぶな、と思ってインスタを始めました。
でも、まさか本当に声をかけていただけるとは思ってなくて(笑)」(亮さん)。
「“わぁー、こんなうれしいことってある!? お父さん、喜ぶわー!”って感激しました」(ママさん)。
今回の取材は、偶然にもパパさんの一周忌でご家族がご実家に集まっているタイミングとなり、パパさんが結んでくれたご縁に心が温かくなりました。
「去年は脳腫瘍の影響でさくらの体調が本当に悪かったので、“主人がさくらを連れて行っちゃったらどうしよう”と思ったんですが、私たちのもとに残してくれました。
だから、今まで以上に、もっと大事にしたいと思って。さくらの介護に手がかかるので、主人が亡くなってさみしいと落ち込む暇がありません(笑)」(ママさん)。
「さくらはボクらの癒しで、さくらがいることで家族の絆も強まってるんで、まだまだ長生きしてもらいたいというのが一番の願いです。
動けなくなってしまっても、生きてくれいればそれだけでいいです」(亮さん)。
自然いっぱいの徳島で昭和風に育てられて、“レジェンド柴”と呼ばれる歳にまでなった、さくらちゃん。
取材後には子宮蓄膿症になり、一時は危険な状態にもなりましたが、持ち前の生命力と手厚い看護で、現在は持ち直しているそうです。
さくらちゃんには愛情をいっぱい注いでくれる素敵なご家族のほか、インスタグラムを通して繋がったたくさんの柴好きフォロワーさんたちもついていて、エールを送ってくれています。
どうかそれを力に、1日でも長く元気で過ごせますように。頑張って、さくらちゃん!
取材・文/ 永野ゆかり
★「#レジェンド柴」で投稿お待ちしています!
柴犬ライフでは、取材にご協力頂けるとレジェンド柴を探しております!
12歳を超えた柴たちは、「#レジェンド柴」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。
編集部から取材のお声がけをさせて頂くかも!?
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