2022年2月1日13,445 ビュー View

『ゆっくりゆっくり』ーアキナ山名とおまめのラブい日々#13

お笑いコンビ「アキナ」の山名文和さんは、2020年6月9日に愛柴のおまめを迎えました。保護犬施設からやってきた彼女は、当時8歳。

長年夢みてた“柴犬ライフ”を、ようやく実現した山名さん。おまめとどのように出会い、どんな生活をおくっているのでしょうかー。

アキナ山名と柴犬おまめの最高にラブい日々を、山名さんご本人が綴っていきます。

#13は、眠って次の日がやってくる。その繰り返しの大切さ。

『ゆっくりゆっくり』ーアキナ山名とおまめのラブい日々#13

柴犬ライフ,アキナ山名,おまめ

夜、おまめと夫婦で散歩に行く。朝の散歩は基本的にほとんど仕事の為、妻に任せている。夜はできる限りおまめと妻と皆で行く。

 

先日、おまめが珍しい方向にすたすたと歩き、初めて見た公園に入っていった。妻がトイレをしたいと言い出した。「怖いから、トイレの前で待ってて」と言われた。トイレの前でおまめと待つ。「おま、なんかあったら守ってあげてな。悪いやつ居たら噛みついてな」と伝わるかわからないけど冗談で言付ける。するとおまめは、妻が入って行った方をキョロキョロと見だし、トイレに入ろうとする。すぐに出てくるからここで待っておこうとリードを引っ張る。男子便所の方に回り込み、入ろうともする。それは、こちらから行けば女子便所に行けるんじゃないのかと思案しているようにも見てとれた。試しに引っ張ってトイレから離れようとすると、めいっぱい体重をかけそこを動こうとせず、しまいにはへたと座り込む。暫くして妻がトイレから出てきたのを確認して一つ跳ねて喜んでいた。

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撮影:山名文和(アキナ)

 

おまめはわかっていたんだろうか。

守ろうとしてくれたんだろうか。

 

時々することがある。リードを妻が持っているのでおまめが草むらをくんくんと匂いを嗅ぐ間に、手の空いた僕が少し先の電柱に隠れる。ゆらゆらとこちらに歩いて来るのを確認して「わー!」と飛び出すとおまめはぴょーんと跳ねて走ってこちらに来てくれる。それを妻と代るがわるやると、殆ど喜んで走って来てくれる。

 

子供のような一面で微笑ましいと思っていたけれど、ひょっとすると、飛び跳ねて喜ぶことで僕らが更に喜ぶことを知っているんだろうか。

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撮影:山名文和(アキナ)

 

父親の酒のつまみをひとかけら貰って美味しいと言って食べると、両親が笑ったのを覚えている。「お前酒飲みなるでえ」と二人が笑ったあの空気。つまみの味よりもこれを食べたら、この人達は喜んでくれるんだとその空気に触れたくて食べていた頃があった。

 

おまめもそんな感覚を持っているのかもしれない。

触れていたい空気をそっと忍ばせてくれていたら嬉しい。

 

おまめがそばに来てくれて、一年半経った。本当にゆっくりゆっくりそれぞれの距離が柔らかく混ざり合っていくのがわかる。

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撮影:山名文和(アキナ)

 

出掛ける空気を察知して玄関を先に陣取ったり、食べたい時はくうううんと鳴いて見せたり、半年前にはしなかった行動が、この数ヶ月でまた増えた。

急に泣き出したので、おやつをあげても食べず、トイレに行きたいようでもなく、妻がひょいと抱くとすっかり泣き止んだ。これはここ二週間くらいのことである。

 

最初のうち、半年もあればおまめは慣れてくれるだろうと思っていた。だから、想定よりも凄く遅い。でも、そんなものかもしれない。仲の良い友達が一人もいないまま入学した高校で、心底楽しいと感じるようになったのは三年生になってからだった気がする。打ち解けるのがそれほど早い方ではない僕にとってそれくらいの時間を要した。同じ言葉を話す同士でさえ。だとすれば犬とすぐに分かり合おうなんて、馬鹿げためでたい話。今のペースで充分だ。

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撮影:山名文和(アキナ)

 

布団に入る頃、「行こ」と誘うと僕らの布団に潜りこんでいく。眠る場所は決まっていて、そこを嗅ぐと、おまめの匂いがびっちりこびりついている。

愛くるしいおもしろい匂い。ずうっと付けていたい気もするけど、定期的にシーツをすっかり洗うので、その匂いは消える。洗うたびに、匂いのなくなったそこをおまめは寝る前に掘る。

 

ただそれだけ。それだけでいい。その繰り返し。

 

眠って次の日がやってくる頃、また新しいおまめがみられるかもしれない。

 

 

【プロフィール】山名文和(アキナ)

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1980年7月3日生まれ。2012年、秋山賢太とお笑いコンビ「アキナ」を結成。

レギュラー番組を多数抱えるほか、『キンブオブコント』『M-1グランプリ』『THE MANZAI』で決勝進出を果たす。

愛柴は、保護施設から迎えたおまめ(9歳)。

 

 

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