2022年5月13日3,223 ビュー View

『春生まれの椿』ーKIKI連載・お転婆姉妹の椿と柊 #7

モデルや執筆家、写真家として活動するKIKIさんは、東京と逗子の二拠点で「柴犬ライフ」を満喫中。愛柴の名前は椿(つばき)で、キツネ顔とたぬき顔のハーフさん。そして忘れてはならないのが、KIKIさんの娘であり、椿の妹である柊(ひいらぎ)の存在。

お転婆娘たちが繰り出す、明るくにぎやかで、癒しに包まれた柴犬ライフー。KIKIさんご自身が、温かな文章で綴ります。

 

#7は、春が来ると椿の幼い頃を思い出すー。

『春生まれの椿』ーKIKI連載・お転婆姉妹の椿と柊 #7

柴犬ライフ,kiki,モデル

春生まれの椿。今年も3月に誕生日を迎えて、4歳になった。もう子どもでなく、年頃の女子であろうか。昨夏、うちに三女となる人間の赤ちゃん(正確には、第二子。うちでは、椿が長女、第一子の柊が次女ということになっている。)が来てからは、母性が湧くのか、すっかり“お母さん”の顔つきである。

 

幼犬のころ、散歩をしていると、落ち着いた年頃の柴犬を連れた飼い主さんたちに、「まぁ!元気でいいわね」と、たびたび言われた。私としては、当時の椿は、元気過ぎていつも手を焼いていたので、「もうすこし、落ち着いてほしいです〜」と返す。すると、「そんなの、あっという間だから! 落ち着いちゃったら、それはそれで寂しいものよ」と、皆が同じような返答をした。

柴犬ライフ,kiki,モデル

photo:KIKI

 

本当だった。昨年、3歳になったあたりからか、おどろくほど落ち着いてきた。家ではベランダから外を覗いている他は、ほとんどごろんと寝そべっている。これが、当たり前になってくると、以前がどんなだったか、あまり思い出せない。とはいえ、椿が0歳のとき、うちに初めて来てから長いことしばらくは、ソファに座ってテレビを見るのも憚られるほど落ち着きがなかったことは、強く印象に残っている。今では、テレビを見ているとき、本を読んでいるとき、そして三女にミルクをあげているとき、椿はソファに乗ってきてピタッとからだを寄せてくる。あぁ、もう! かわいいなぁ、といつもしあわせな気分になる。

 

椿が幼犬だったころが、どんなだったか。久しぶりに、写真を見返した。椿は、茨城県の鹿島のブリーダーさんからやってきた。柴犬に興味を持ってから一年くらい、インターネットで柴犬の写真を眺めていた。(飼おうと思ったきっかけは、柴犬ライフの本誌で受けた取材記事に詳しくある。)そして、ある時、「ピン!」と来た。元気で強そう、と思う仔犬に出会ったのだ。連絡をとって、その時は、夫は同行せず、ひとりでブリーダーさんに会いに行った。

柴犬ライフ,kiki,モデル

photo:KIKI

 

写真の仔を実際にひと目見て、抱っこをさせてもらって、もう、でろでろだった。一緒に産まれた仔犬が他に3頭いて、その子たちも見せてもらった。2頭はブリーダーさんのところに残り、1頭はすでに行き先が決まっているというが、うちに来るかもしれない子が、一番可愛いのでは!? と、すでに親バカ気分になっていた。

 

犬舎では、母親犬や、他の柴犬も見せてもらったのだが、皆、きれいで、なにより元気で強そうだったので、漠然と安心感を持った。それに、仔犬の成長後の姿も想像がしやすかった。今思うと、ほぼ偶然のような出会いだけれど、愛情を込めて犬を育てているブリーダーさんに出会えたことが、本当についていた。私も夫も、犬を飼うのは初めてのことだったので、心配事も多く、だから、家に犬が来てからも頼れる人が必要だった。

 

そんな様々な要素が積み重なり、私の心のなかは決まっていた。でも、夫の同意ももらわないとならないので、一旦、決断は保留にさせてもらい、帰宅した。とはいえ、翌日には、「飼います!」とブリーダーさんに連絡する勢いだったのではなかったかと思う。

柴犬ライフ,kiki,モデル

photo:KIKI

 

椿を、あらためて鹿島に迎えに行くときは、夫も一緒だった。彼は大学まで陸上部で、今も登山やトレイルランニングを趣味にし、からだを動かすのが好きだということ知ったブリーダーさんは、「体力のありそうな人のお家に選んでもらえて、よかったです」と、ニコニコ。彼は経験上、予期していたのだろう。というわけで、椿は幼犬の頃から、とにかくとにかく元気なのだ。

 

今でも、散歩のときは変わらず、足取り軽く浮き浮きとしている。夫と散歩のときは、たいぶ走っているようだし、月に数度、山に散歩に行くと、かなり前のめりだ。でも、家での落ち着き様を見ていると、散歩のときまで落ち着いてしまったらな。たしかに、すこし寂しく感じそうだ。とはいえ、椿は椿。これからも一緒に過ごして年数を重ねていって、お互いに変わっていくところも変わらないところも、ゆるりと歩調を合わせていけたらいいなと思う。

 

 

【PROFILE】KIKI

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東京生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業後、ファッション雑誌や広告媒体を中心にモデルとして活躍。

近年では写真家、執筆家として活動の幅を広げている。

著書は『KIKI LOVE FASHION』(宝島社)『山スタイル手帖 KIKI』(講談社)ほか

Instagram:@campagne_premiere

 

 

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