『場所取り合戦』ーKIKI連載・お転婆姉妹の椿と柊 #13
モデルや執筆家、写真家として活動するKIKIさんは、東京と逗子の二拠点で「柴犬ライフ」を満喫中。愛柴の名前は椿(つばき)で、キツネ顔とたぬき顔のハーフさん。そして忘れてはならないのが、KIKIさんの娘であり、椿の妹である柊(ひいらぎ)の存在。
お転婆娘たちが繰り出す、明るくにぎやかで、癒しに包まれた柴犬ライフー。KIKIさんご自身が、温かな文章で綴ります。
#13は、秋ごろの、とあるエピソードー。
『場所取り合戦』ーKIKI連載・お転婆姉妹の椿と柊 #13
皆さんの家の柴犬たちは、毎晩、決まった場所で寝ていますか? うちの椿は、決まっているような、そうでもないような。今年の秋、ようやく朝夕涼しく感じられるようになり、夜はクーラーをつけていなくても眠れるようになった頃。(以前は、寝る時にクーラーをつけっぱなしなんて考えられなかったと思いませんか? 風邪引くからダメ!って、言われていたような気がするのですが。)そんなふうに思っていたら、夏の暑いときには全く使っていなかった椿専用のベッドに、夜だけでなく、昼間のくつろぎタイムも、いそいそと入りこみまるまるようになった。
やっぱりこのベッド、気持ちいいよね、と思わず声をかけたくなる。椿のベッドは、柴犬先輩・マル子のお父さんに教えてもらったデロリアンズというメーカーの犬用ベッド。「3年経ってもへたらない」とうたっているように、すでに5年近く使っているが、かわらずふかふかを保っている。とはいえ、縁の立ち上がりの部分は張りがそれなりにあるので、可愛くてたまらないあご乗せポーズをたびたびしてくれている。
気持ちがいい、と感じるのは犬だけでない。ふと気づくと、柴犬ではなく人間の娘がうっとりとした目つきで寝転がっているときがある。うちの三姉妹、椿は長女で5歳、次女(人)は4歳、三女(人)は2歳。家ではつねに競い合う存在である彼女たちは、そのベッドが快適と知ってから、すきを狙っては入りこんでいる。本心を言うならば、わたしだってそのベッドで寝られるものなら寝たい…。と思って、カバーを洗って整えているときなど、ちょっとだけ縁に頭を乗せてみたりする。Lサイズなら、からだも入るかな。
柴犬の性分か他の犬種もそうなのか、いつもその快適ベッドで寝ているわけではない。ソファだったり、ベランダに出るガラス戸の前のマットだったり。姿が見えないな、と探してみると玄関にペッタリと腹をつけて寝ているときもある。これは、誰かの帰りを待っているという忠誠心からではなく、単にモルタル塗装の玄関が冷やりとしているからで、夏の暑いときはよく玄関にいた。
犬と一緒に暮らしている友人宅にお邪魔すると、犬用のベッドや、居場所になるようなスペースをいくつか用意しているのが見受けられる。参考にして、椿が家に来たばかりのころは、他のベッドやマットを落ち着きそうな場所に置いてみたけれど、全然使っている様子がなかったので、デロリアンズのベッド以外は片付けてしまった。
とはいえ、椿にはもうひとつ、お気に入りのベッドがある。それは夫のベッドだ。
子犬のころは、昼でも夜でもとにかく落ち着きがなかったので、寝室に入れようものなら、私たちが寝られなくなってしまうほどの騒ぎになっていた。なので、夜になったらケージに入れてカーテンを掛けて暗くして、眠ってもらっていた。でも、成長とともに、ケージには入らなくなり、仮に入れたとしても、出せ出せ! といった感じで甲高く吠えるようになってしまった。
すぐにわたしは根負けして、夜も自由にさせるようになったが、それでも、人のベッドに上げることはなかった。ところがある外出時、ペットシッターさんに預けていたときに、定時報告とともに、どうも彼女のベッドらしいところでくつろいでいる椿の写真が送られてきた。椿のずうずうしさに唖然としたが、仕方ないのでベッドに上がらせてもらったことのお礼を伝えると、「とんでもない! 椿ちゃんがとっても甘えてくれて、うれしいです」との返事。そのシッターさんは、椿の面倒をよく見てくれているようで、預ける際には、椿はこちらを振り返りもせず、大喜びでしっぽを振ってついていく有様だ。
それからというもの、なし崩し的にうちでも人のベッドにも上がるようになった。わたしはホコリ・ダニ系のアレルギーがあるので、用心して自分のベッドには乗らないように椿に言い聞かせているけれど、夫はまったく気にしないタイプ。というわけで、椿は夫の足元に時おり、寝そべるようになった。(ふだんはひとりで寝ている娘たちも、夜中に目が覚めて大人のベッドに上がってくるときがあるが、その時もなぜか夫の方を選ぶ。小さいものたちに人気なのだ。)これからだんだんと夜が冷え込んでくる。湯たんぽ犬・椿の出番がますます増えていきそうだ。
【PROFILE】KIKI
東京生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業後、ファッション雑誌や広告媒体を中心にモデルとして活躍。
近年では写真家、執筆家として活動の幅を広げている。
著書は『KIKI LOVE FASHION』(宝島社)『山スタイル手帖 KIKI』(講談社)ほか
Instagram:@campagne_premiere
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