【取材】もうすぐ15歳のそら。認知症の症状が消えた「刺激ある生活」とは#3
平均寿命は12〜15歳と言われる柴犬。そこで我が『柴犬ライフ』では、12歳を超えてもなお元気な柴犬を、憧れと敬意を込めて“レジェンド柴”と呼んでいます。
そんなレジェンドたちのライフスタイルや食生活などにフォーカスし、その元気の秘訣や、老犬と暮らす上で大切だと思うことを、オーナーさんに語っていただくこの連載。
今回は、ずっと年下のフレブルと一緒に暮らす14歳のそらちゃんが登場です。
フレブル・ぞろくんがもたらした驚きの効果とは…!?
目次
そらちゃんプロフィール
年齢&性別
14歳の女の子。2020年5月31日で15歳に。
体重
12kg
大好きなこと
おやつやご飯。5分程度の散歩
既往歴
1歳頃に鶏肉アレルギーと判明。
11歳で認知症の症状が出始める。
12歳では慢性腎不全と診断。また加齢による難聴により、耳がほぼ聞こえないように。
お散歩大好き! 雨でも風でも出かけます
もうすぐ15歳になろうとしているそらちゃん。
しかし待ち合わせ場所に凛と立っている姿は、その年齢を感じさせない若々しさでした。
そんなそらちゃんの日課は、朝晩ご家族が交代で行ってくれる5分程度のお散歩。
「雨でも雪でも必ずお散歩します。大雨でもカッパ着て歩いているのは柴くらい(笑)」そう語るのは、オーナーの中平祐子さん(以下、「」内同)。
どんな天候でも出かけなければならないのは少し大変かもしれませんが、短い時間でも毎日欠かさずというのが規則正しい生活リズムを生み、健康につながっているのかもしれません。
撮影場所の公園でも、そらちゃんは好奇心旺盛に自ら進んで色々な場所を歩いてくれました。
そのさまは、姿勢よくスタスタと歩き、中平さんに“付いてきてね”と言っているような雰囲気。階段の上り下りもスムーズです。
“これくらい大丈夫!”とばかりに、家族を引っ張りながら階段を上ってくる姿は目を見張るほど。
基本的に自分のペースで自分の行きたいほうに歩いて行くそらちゃんは、マイペースで少し頑固なところもあるのだとか。
「好き嫌いがはっきりしているし、少し気が荒い部分もあるけれど、それを理解することが大切かと思っています。
いろいろな犬種を飼ってきましたが、柴犬は初めてだったので少し覚悟してしつけ教室にも行きました。
お座りとお手でやめちゃいましたけど(笑)」。
頑固な性格は、“THE柴犬”といった感じですね。
口元が荒れてカイカイ…原因は食物アレルギーだった
そらちゃんには既往症がいくつかありますが、食物アレルギーもそのひとつです。
「1歳か2歳の頃、口の周りが荒れてかゆがるようになってしまいました。病院でステロイド剤を処方されても治らなくて」。
なかなか治まらない症状に心を痛めていたところ、それを知ったペット用品店の方が「柴犬は鶏肉アレルギーが多いので、鶏肉が入ったフードをやめてみては?」とアドバイスをしてくれたそう。
「それで鶏肉が入っていないフードに切り替えてみたところ症状が治まったんです」。
その後、鶏肉は与えないようにしているためアレルギーが出ることはないのだそう。
犬種によって出やすいアレルギーや注意することなど、犬と暮らすことが初めてではなくてもわからないことは多々あります。
そんな時は色々な立場の人にアドバイスをもらうことが重要だと気付かせてくれるお話でした。
慢性腎不全と上手く付き合う
12歳で、慢性腎不全と診断。
かかりつけの病院では週3回病院に通って点滴をするという、積極的治療の提案もありました。
しかしセカンドオピニオンを受け、違う方法を取ることに決めたそうです。
「セカンドオピニオンを受けた先生に “病院に週3回点滴に通うということは、そらちゃんの性格上も、また金銭的にもあまり勧められない” と言われたのです」。
どうするのがそらちゃんにとって一番良いのか、家族会議を開いて話し合ったそうです。
「病院嫌いのそらに、点滴のため通院させるということは、そらの負担が大きいと考えました。QOL優先というのは家族に一致している考えです」。
そして取り入れた対処法が「フードを変えて水を多く飲ませる」ということでした。
どんなフードにするかをペット用品を扱うお店の店員さんに相談。
腎臓疾患用の療法食ではなく低たんぱくのフードにしました。
「その結果、体調は維持しているので、この方法を選んでよかったと思っています」。
自分たちにはどんな考え方が合っているのかを家族全員で話し合い、そして家族で決めたことが犬にとってベストであるはずだと考えて行動をする。
このように一貫した考えがあることはどんな時でも役に立つと思います。
そしてそれはそらちゃんを思う中平家のみなさまの強い愛情に他なりません。
思いもしなかった副産物。認知症が治っちゃった!
実は慢性腎不全になる1年ほど前に、大きな出来事がありました。
そらちゃんが11歳の頃、認知症の症状が出始めたのです。
「家具と家具の間に入って出てくることが出来なくなる、ということが起き始めました。
いつかはと覚悟をしていたものの、思ったより早い発症に正直戸惑いました」。
とは言えまだ症状が軽かったため、薬は使わず様子を見ることに。
そしてその3か月後に転機が訪れます。
縁あって里親としてフレンチブルドッグのぞろくんを迎えることになったのです。
実はそらちゃん、先住犬のブリュッセルグリフォンの男の子・ぶるちゃんと2歳まで暮らしていた経験があります。
ぶるちゃんが大好きだったというそらちゃん。
あとからやってきた弟・ぞろくんとの相性はというと……。
「そらに、見たことのないような酷い拒絶反応が起こりました。
ぞろを見て吠える、怒る、がすごい。
リビングの端と端にリードで繋いで、顔を合わせて慣れさせる、そしてまた別々の部屋へ戻す、ということを9カ月も続けました」。
緊張を強いられた、家庭内別居生活を9カ月間。相当大変だったことが容易に想像できます。
けれど中平さんは諦めませんでした。
「最初は、“ほかの犬と一緒に暮らすことが、そらにとってもぞろにとってもつらいことなら、多頭飼いは人間のエゴでしかないのかも?”と悩んだ時もありました。
でも、ぞろは前の飼い主さんが手放さざるを得なかった子。
預かった以上は、今度は最後まで同じ家で過ごさせてあげたい……という気持ちでいましたんです。
そうやって夢中でやっているうちに9カ月経っていましたね」。
そして気づけば、そらちゃんの認知症の症状がなくなっていたのです。
「神経がぞろにばかり向くせいか、そこから全く症状が出なくなりました。
ぞろがとにかく気になって、それどころじゃなくなっちゃったのかも(笑)」。
刺激とマイペース、そのどちらも長寿の秘訣
弟のぞろくんは、そらちゃんが大好き。
フレンチブルドッグらしい天真爛漫さでお姉ちゃんを愛し、そして家族を癒しています。
そして今ではそらちゃんも、可愛らしい弟としてぞろくんを認めています。
ペースが違うのでお散歩は別々。
「べったりくっついているわけではないのですが、そらは時折ぞろに意地悪してみたりすることが楽しいみたいです。
私たちには怒ることも、ぞろだと許すということもあるんですよ」。
一緒に遊ぶということはないものの、お互いの存在はとても良い刺激になっているようです。
「長寿の秘訣があるとしたら “マイペースに暮らさせてあげること” かもしれません。
また、加齢は悪いことばかりではなく、耳が聞こえなくなったことで音に過剰反応しないで済むようになりました。
静かで平和な生活を手に入れられたことはそらにとってとても良かったことです」。
一時はどうなることかと思ったぞろくんの存在も良い刺激へと変わりました。
そしてマイペースで無理のない生活も戻ってきました。
そのバランスが、そらちゃんにとってはちょうど良く、ご長寿に一役買っているのでしょう。
撮影・文/Roco
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