2020年4月6日9,292 ビュー View

【柴犬お悩み解決NOTE】♯15 犬が苦手!ほかのワンコと仲良くなれる?【ドッグトレーナー・小野洋平がズバリ回答】

第一線で活躍するドッグトレーナーの小野洋平さんが、読者からのしつけ・トレーニングのお悩みに答える連載『柴犬のお悩み解決NOTE』。

今回は、他のワンコが苦手というお悩みです。他の犬とも仲良く遊んでほしいというオーナーさんですが、それは果たして正しい願いなのでしょうか……!?

今回のお悩み:どんな犬種でもムリ! ワンコが怖いんです

男の子・4歳

とにかく怖がりな性格で、特に犬が全犬種苦手です。

 

ドッグランに行っても全く遊べないし、散歩中に他のワンさんと会っても逃げる&警戒します。

 

怖がるといっても相手に吠えたりしないし、噛もうともしません。

 

他のワンさんと仲良く遊べるようになれるでしょうか?

 

他の犬と仲良くなるには、子犬のころの社会化がカギ

柴犬

Lenkadan/shutterstock

 

他の犬が苦手な子は、かなりの数いますよね。

 

先にお答えから。

 

柴犬の場合、成犬になってから他犬と遊べるようになるのはかなり難しいです。

 

ですので、今回は解決というよりなぜ難しいのかというのを説明していきたいと思います。

 

<子犬>と<成犬>の違い。

<和犬>と<洋犬>の違い。

 

この二つの違いをしっかり捉えていただきたいと思います。

 

まずは<子犬>時期のしつけについて、詳しく説明していきましょう。

 

パピー期は5つに区切って細やかに対応する

柴犬

Marcos_Casado/shutterstock

 

子犬の場合、僕は大体5シーズンくらいに分けます。

(1)0〜2ヶ月齢 

この最低でもこの時期は母親、兄弟などと離してはいけません。人間の介入は必要ありません。

(2)2〜4ヶ月齢

よく言われる社会化期ですね。一般のご家庭にくるのも、このくらいの時期の子が多くいるはずです。

 

しかし、本当はまだ親兄弟といた方が良い時期だと僕は思います。

 

挨拶の仕方、力の加減などなど母親兄弟から得るものはたくさんあります。

 

“あなたのお家に来た”ということは、母親兄弟の役目を、あなたの家の誰かがしなければならないということです。

(3)4ヶ月〜6ヶ月齢 

色々なことへの好奇心に加え、理解度、好き嫌いなどが出てくる時期です。

 

2〜4ヶ月齢の“気持ちだけ”で動いていた時期から、“頭を使う”ことが増えてきます。

(4)7ヶ月〜10ヶ月齢 

反抗期から一旦落ち着く時期。

 

犬のサイズにもよりますが、体は70%〜80%くらい出来上がってきています。

 

できていたこともできなくなったり、吠えが酷くなったり、ここまでの時期でトレーニングやしつけが上手くいってないと“唸り”や“噛み”が酷くなるなども。

 

その程度によっては、オーナーさんが参ってしまう時期。

(5) 11ヶ月〜1歳2ヶ月 

体も頭も心も80%以上成犬の時期。

 

でもまだ成犬にはなりきってはいません。

 

この時期に“唸り”や“噛み”、そして“苦手なもの”、“怖いもの”が残っていると、飼い主さんは手を焼くことが多いでしょう。

 

社会化は慎重に。やたらめったら他の犬に会わせるのはNG

柴犬

Anastasiia Cherniavskaia/shutterstock

 

上記5つのシーズンを頭に入れたら、質問に戻りましょう。

 

質問メールの文章だけで想像して書いてますので、実際は違うかもしれません。こういう子の場合はこういうケースが多い、くらいのスタンスでお読みください。

 

ご質問に「とにかく怖がりで」とありますが、なんでも怖がっている様であれば(2)の時期の色々な経験が“良い状態”で起こらなかった、足りなかったのだと思います。

 

“良い状態”というのがとても大切になってきます。

 

ドッグランに初めて行ったのが何ヶ月齢かは不明ですが、もし(2)(3)(4)の時期に行ったのであれば、そこでどんな犬に会ったのかがとても大切です。

 

社会化期はやたらめったら、他の犬に会わせればいいというものではありません。

 

その子が耐えることができる程度の刺激、乗り越えられる刺激を考えて、会わせる犬や、触れ合う時間を調整したりします。

 

もし、ここを間違ってしまったらアフターケアもしなければなりません。

 

(1)の時期からビビっている様であれば、尚更に気をつけ、時間をかけて育てていかなければなりません。

 

それでも、他の犬や人が大丈夫にならないこともあります。

 

なぜなら、トレーニングやしつけでは、元々の性格が変わることはほぼないからです。

 

性格は変わらずとも、“良い経験”をすることで、外的な要因に対しての“態度”は変わります。

 

だからトレーニングが大切なのです。

 

日本のドッグランは無法地帯

柴犬

mannpuku/shutterstock

 

ドッグランに行くのは、僕はオススメしません。

 

そこにどんな犬が居るかわからないですし、特にパピー期なら、そこで受ける影響が人格形成に大きく影響するからです。

 

こちら側も呼び戻しができない状態なら、なおさら行きたくありません。

 

ドッグランにいる他の子、成犬でも、呼び戻しができない子がたくさんいるからです。

 

つまり、現状の日本のドッグランは“無法地帯”に近い状態になっている場所も多いのです。

 

ですので行くとしたら、かなり注意が必要だと思います。

 

そんな注意ビンビンにしてまで、ビビリの犬を連れて行くことは“かわいそう”なだけですよね。

 

社会化期に犬に慣れさせたいのであれば、犬の幼稚園やパピークラスなどで、その様なクラスを行なっているところに行くことが一番確かだと思います。

 

「逃げる」と「攻撃する」は紙一重。いつか加害者になるかも

柴犬

IuliiaSlyshko/shutterstock

 

相談者さんのメールに「散歩中に他のワンさんと会っても逃げる&警戒します。

 

怖がるといっても相手に吠えたりしないし、噛もうともしません」とありますが、

逃げるたり警戒するのは、下手すると相手に噛みついてしまうので気をつけてください。

 

犬が噛む時は、気持ち的に追い詰められた時す。

 

今は逃げているので、相手もそれ以上はしてこないのかもしれません。

 

お散歩中とありますので、オーナーさんがリードで止めているのかもしれません。

 

しかし、「怖い」「やめて」「近づかないで」と、どんどん追い詰められて心理的な境界線を超えると「ガッ!」と行ってしまう可能性が高いです。

 

やられる前にやってやる、というわけです。

 

洋犬と柴犬の性格の違いを理解して

柴犬

Lichtflut/shutterstock

 

そして次に、他の犬と遊ぶことが、本当に必要かどうかを考え直してみてください。

 

和犬と洋犬という括りだけを考えても、和犬は他の犬との関わるのが好きじゃない子が多いです。

 

もしオーナーさんが、洋犬のように他の犬と仲良く遊ぶ姿を想像しているのであれば、それは間違ったイメージ。

 

和犬にとっては難しいことだと思ってください。

 

もちろん、中には他の犬と遊べる和犬もいますが、洋犬に比べると比率的には少ないですし、それが和犬の特徴なのです。

 

あなたは大嫌いな人といまさら仲良くなれますか?

柴犬

MitchyPQ/shutterstock

 

和犬はそんな性格ですので、成犬になってからの他の犬と遊べる様にするには、“ケガをするリスク”がかなり高くなります。

 

4歳の男のコですので、40歳くらいの人間の大人で考えてみてると簡単でしょう。

 

40歳の大人を、もともと大嫌いな人と、仲良くなって親しく付き合うようにさせることと同じくらい難しいことなんです。

 

そこにプラスして、元来、人見知りでコミュケーションが苦手だという性格も考えねばなりません。

 

ドッグランや散歩で会った犬と仲良くしてほしいというのは、人見知りが激しい大人に、「パーティーで初めて会う不特定多数の人と、老若男女問わず仲良くしてね」って言うくらい、理不尽なところからスタートすることになります。

 

人は言葉で嫌いを伝えられます。

 

しかし犬は“噛む”という行為をしますので、「もしかしたら仲良くなれるかも?」とお互いを理解し合う前に、ケガのリスクが出てきます。

 

「ケガしても構わない」という犬が何頭かいてくれたらトレーニングが可能ですが、それは“人と犬の在り方”に関わってきますので、良しとは言えないトレーニングになってくるかなと思います。

 

オーナーさんは、ドッグランに行って遊ぶ犬を見て憧れるかもしれません。

 

しかし、それをやりたいのはオーナーだけ。

 

他の犬が嫌いな成犬に育ててしまったのであれば、それは必要ないと思います。

 

もし“対他の犬”以外でビビってることがあれば、それをできるだけビビらないようにしてあげることの方が、僕は大切だと思います。

 

犬に不安や恐れ、警戒がある状態でのしつけやトレーニングは、オーナーさんだけでは解決が難しい場合が多いですので、ぜひ、トレーナーと一緒に犬をラクにしてあげてようと思ってトレーニングに励んでくださいませ。

 

小野洋平 PROFILE

『inu-house』代表。

通信のベンチャー企業に勤務後、カナダに渡りドッグトレーニングを学ぶ。カナダでは、いきなり家庭犬のトレーニングを行う現場で問題犬と呼ばれている犬たちに囲まれての修行。帰国後、介助犬育成と家庭犬トレーニングのケイナイン・ファミリーを立ち上げるが、日本人の犬の考え方や家庭犬の在り方に疑問を抱き、家庭犬トレーニングを主に行うようになる。日本独特の犬文化を守ることと変えていくことが目標。

 

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