2021年4月1日24,611 ビュー View

『早い朝』ーアキナ山名とおまめのラブい日々#3

お笑いコンビ「アキナ」の山名文和さんは、2020年6月9日に愛柴のおまめを迎えました。保護犬施設からやってきた彼女は、当時8歳。

長年夢みてた“柴犬ライフ”を、ようやく実現した山名さん。おまめとどのように出会い、どんな生活をおくっているのでしょうかー。

アキナ山名と柴犬おまめの最高にラブい日々を、山名さんご本人が綴っていきます。

#3は、おまめを迎えて生活に自然と溶け込んだ、早い朝のルーティンについてー。

『早い朝』ーアキナ山名とおまめのラブい日々#3

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おまめが来て、朝をたっぷり見るようになった。

 

おまめが家に来るまでは、仕事に向かう三十分前に起き、絡まった眠気をほどきながら現場に向かっていた。しかし今思えば二割くらいの眠気を残して到着することが多かった。ブラックのアイスコーヒーを飲んで、残った眠気に蓋をして、起きたことにしていた。

 

振り返る人生は、ほとんどこんな毎日で、学生の頃は気ままに起きて遅刻は当たり前だった。起きるのが面倒でバイトを休んだこともある。結局起きてから何もしない自分に行っとけば良かったと憂鬱になり一日身体が重くなった。

 

まさか自分が家を出る二時間前に目覚める生活がやって来るとは思ってもみなかった。しかし見事にそのルーティンは生活に溶け込んだ。さすがに二時間しか眠れない日があればきついなと思うけど苦だと感じることはない。ご飯をあげて、暫く時間を置いてから散歩に行く。たったこの二つの行動が、僕の生活をとんでもなく激変させてくれた。知っていたようで知らなかった、色んな朝の表情に気付かせてくれた。

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撮影:山名文和(アキナ)

 

朝陽をたっぷり浴びるようになった。当たり前だけど、空はその一瞬しか見られないこと。同じ空は二度と見られないこと。太陽が大きな朝もあれば、何故か小さく見える朝もあること。

 

春の空は柔らかく、夏の空は高く勇ましい、秋の空はどこまでも抜けていて、冬の空は遠慮気味。その中で、秋の空が、僕は一番好きだと気づけたこと。濁りのない空が秋は多い気がする。

 

天気のいい朝は、カーテンを光が破って来るんじゃないかというくらいの陽光を叩きつけてくる。カーテン布を突き抜けた光の破片が散らばり部屋をぼんやり白くさせ、空気中に舞う埃が、光る。そんな日はきまって、窓際でおまめが休む。

 

こんなふうに切り取りたい朝が、これまできっといくつもあったこと。それは哀しいことではなくて、気づけてよかったと思える。

 

人間は、考える。考えるから、一定の朝を迎えることはなかなか出来ない。良いことがあれば胸が踊り、歩いて現場にいってみようと思う朝がある。大きな仕事を控えていれば、それに縛られる朝があり、前の晩に悲しいことがあれば、幸福二割減の朝がやって来る。

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撮影:山名文和(アキナ)

 

おまめも何か考えているかもしれないけれど、僕から見たら毎日ほとんど穏やかに見える。いい意味で自分本位の生き方をしている。お腹が減ればくううんと喉を鳴らし、トイレに行きたいと、自分から玄関に向かう。それ以外は基本的に自分の定位置で、ゆったりとしている。僕より起きるのが遅い日もある。噂で聞いていた犬は飼い主の顔を舐めて起こすものだった。おまめはしない。それが笑える。お腹が空いているときは、おはようと声をかけ頭を撫でる僕の手を舐めてくる。換気扇の下で煙草を吸う僕の足元に来て催促してくる。洗濯をして着替える僕を表情一つ変えず、見つめてくる。散歩用のバックを肩から掛け、いこかと言えばのっそり立ち上がる。身体をぶるると震わせ玄関に向かう。よっしゃ、行きましょかのテンションの日は少ない。はいはい、そろそろ行っとこかくらいの感じがほとんど。

 

僕がいなければご飯も食べられない。扉を開けてトイレに行くことも出来ない。それでも、悪びれることもなく、望むことに手を貸してくれと平気でお願いしてくる。その堂々としたわがままは、愛おしさしかない。瞬間を生きている。

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撮影:山名文和(アキナ)

 

こんなもんでいいんだと思い知らせてくれる。 

人間もそんなふうに生きることがいいんじゃないかと。

それはわがままなどではなく、きっと美しい。

 

無理なら手伝ってと言えばいい。

眠たければ眠いと言えばいい。

誰かの顔色を伺うことに慣れるから、いつのまにか貼り付けてしまった自分を演じようとしてしまう。

 

はっきりと言葉に出来ない類のストレスが沈殿して、疲弊する。

こうでなきゃならないと思う自分は、自分ではない。

こうなりたいと想うなら別だけど。

 

「こうなりたい」と「こうでなきゃならない」が、いつのまにかこんがらがって生き方を複雑にする。僕達の並ぶ行列が、本当に並ぶべきか、改めて考えないといけない。その最終の判断は、結局心がワクワクするかどうか。

 

自分の生きる範囲で、何かを守ること。手で掬い取れる範囲で、助け合うこと。見返りなど求めず。キャパだけは越えないように。

 

そうすれば無限に溢れてくる何かを感じるようになる。自分が思っていたよりは、少し温かい人間だったんだと教えてくれる。数珠つなぎで、大切な人が増えていく。その自信は、朝陽を前よりもっと好きにしてくれた。

 

おまめは、僕に足りなかったものを教えに来てくれた救世主だ。

 

救世主がおしっこに行きたい様なので、リードをつけて行くことにする。この救世主は、油断すると逃げてしまうのだ。

 

 

 

雑誌版『柴犬ライフ』では、インタビュー公開中!

2021年2月16日発売の雑誌版『柴犬ライフ vol.5』では、アキナ山名さんのインタビューを公開。

 

保護施設にたどり着いた経緯や、「おまめ」という名前に隠されたエピソードなど。

 

山名さんとおまめのグラビアも含め、巻頭8ページでお届けします!

  • 雑誌版『柴犬ライフ』vol.5

    雑誌版『柴犬ライフ』vol.5

    柴犬ってなんだ? 柴犬ライフの常識と非常識、そして数多の知恵を。

    出版社:KKベストセラーズ
    発売日: 2021/2/16

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