2021年8月4日6,628 ビュー View

『合羽好きと合羽嫌い』ーKIKI連載・お転婆姉妹の椿と柊 #3

モデルや執筆家、写真家として活動するKIKIさんは、東京と逗子の二拠点で「柴犬ライフ」を満喫中。愛柴の名前は椿(つばき)で、キツネ顔とたぬき顔のハーフさん。そして忘れてはならないのが、KIKIさんの娘であり、椿の妹である柊(ひいらぎ)の存在。

お転婆娘たちが繰り出す、明るくにぎやかで、癒しに包まれた柴犬ライフー。KIKIさんご自身が、温かな文章で綴ります。

 

#3は柴犬オーナーなら「うんうん」と共感する、合羽の話し。

『合羽好きと合羽嫌い』ーKIKI連載・お転婆姉妹の椿と柊 #3

柴犬ライフ,kiki,モデル

初夏になって、肌寒い日もあるけれど、たいてい寝室の窓をすこし開けたままカーテンをひいて寝ている。うちが古い住まいというのもあって、密閉性はないうえに窓を開けていると、室内の状態は天候の影響をうけやすい。でも、眠りながらも、しとしとと雨が降ってきたのを知ったり、サッシがガタガタと揺れて風が強いなと感じたりするのは、嫌いではない。

 

とはいえ、空が白みはじめたのに雨足が強まってくると、今朝の散歩はどうしようと夢現に思う。しかし、飼い犬の柴犬・椿(3歳雌)は、雨が嫌いではなく、むしろ雨が降っていることに気づいているのか、というくらい無頓着だ。柴犬全般が、そうなのだろうか。だから、雨の中、散歩に出るのは、人間側が厭わなければ問題はない。

photo:KIKI

 

椿は濡れてもお構いなし。分厚い毛皮のおかげでカラダの芯まで濡れないという利点はあるが、その毛皮が濡れてしまうと、ちゃんとタオルで拭いても、もわっとした独特の臭いが漂う。その臭いも今となっては、慣れてしまい、うちの子のにおい〜と鼻をつけて、むふふぅ、としてしまうのだけれど。

 

でも、やっぱり臭いは臭いなので、できるだけ濡れるのは避けたいというわたし自身の心境もあり、たいていは合羽を着せて散歩に出る。明るい黄緑色の合羽は、椿の柴犬先輩のお父さんからいただいたお気に入りだ。フードの前側にソフトワイヤーが入っているので、頭のかたちに合わせて形状がつくれ、お腹側を通るマジックテープで留めるので着せるのも簡単。

 

ところがだ。合羽を着せると、椿のテンションがだだ下りする。犬にも表情があるのだなと、知ったつもりになっていたけれど、合羽をまとったときの椿の顔は、もう本当にかわいそうになるくらい、へんこんだ表情になる。歩き方も、ふだんの勢いがまったくなくなり、しょんぼりと怒られた子どものような足取りになってしまう。

柴犬ライフ,kiki,モデル

photo:KIKI

 

一方、椿の妹、人間・柊(2歳)は、合羽や長靴を着せるとテンションがものすごく上がる。他所で見ていても、雨上がり晴れの日に長靴を履いている子がいるな、と子どもができる前は他人事として眺めていたが、雨の日以外、それらを目のつくところが隠しておかないと、保育園の登園時に、「ながぐつ、はくはく〜!」と涙を流して訴えてきて、面倒なことになる。

 

そんなわけで、雨降りの日、椿の散歩は、雨が小降りになるのを待って、合羽を着せずに、いつもより短いルートで済ませるようにしている。ただ、週末など休みの日になると、保育園がおやすみの妹の体力が、家にいるだけだと持て余してしまうので、短縮ルートの散歩では済ませられず、遠出の散歩をする必要がでてくる。そんなときは、外出の時間も長くなるので姉には我慢してもらって合羽を着せるのだが………。

KIKI

photo:KIKI

 

弱気になった姉に対して、精力が増した妹は強気に出る。ここぞ、とばかりに柊は意気揚々とリードを持ち、その斜め後ろをとぼとぼと歩く椿。そのふたりの姿を見ると、いつも思わず笑みが溢れてしまう。雨の日の週末くらい、こうして、たまに勢力図が変わるのもいいのかな、なんて思ってしまうのだ。

 

 

【PROFILE】KIKI

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東京生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業後、ファッション雑誌や広告媒体を中心にモデルとして活躍。

近年では写真家、執筆家として活動の幅を広げている。

著書は『KIKI LOVE FASHION』(宝島社)『山スタイル手帖 KIKI』(講談社)ほか

Instagram:@campagne_premiere

 

 

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