【短期連載】緑内障とたたかう柴犬「うに」vol.2〜手術のこと〜
平成最後の夏も終わりを告げ、季節はすっかり秋。うにはシニアの仲間入り8歳に。8歳になるまで無事に、と欲張っていた左目も同様に発症してしまいました。片方の目が緑内障を発症した場合、もう片方の発症率は非常に高く、半年〜3年以内に発症すると言われています。残念ながらうにの目も例外に漏れず、祈り届かずしっかり9カ月で発症してしまいました。
8月お盆を過ぎた頃、またまた手術を受けました。これでうにの両目は近い未来に失明することが確実となりました。今の技術ではこの失明を食い止めることはできません。
しかし今この状態で視力が残っていることも事実です。
今回は前回に続く、1回目の手術の様子を。
※vol.1はコチラからご覧ください。
眼科専門医へ
2017年11月14日、眼圧が上がり始めてから2日半が経過し、うには手術を受けるために眼科専門医が院長の動物病院へ入院となりました。実を言うと、この時点でもまだなお、飼い主である私はきっと大丈夫であると、なんだかんだ言っても視力が失われることはないと奇跡を信じていました。
奇跡というよりも、まさかうにが緑内障になるわけがない!という思いの方が強かったでしょうか。認めない、受け入れない、うにがこんな大手術をすることになるわけがない、と言ったところが正解だと思います。
こんなことになることを覚悟してうにを、はろを受け入れたわけではない!ペットと楽しく、癒されて暮らすはずだったのに…自分への不幸を恨む、と言ったなんとも未熟な状態だったと思います。今思うと、とてもとても情けない話です。
しかしながら、うにの右目はあらゆる処置も功を奏さず、手術以外の道はなくなってしまいました。
術前の処置
近くの動物病院より専門的な処置を受けるために、少し離れた眼科専門医のもとへ。
専門医という日本ではまだそこまで浸透していない制度。その凄さを目の当たりにし、顕著にな処置能力、知識の高さ。おそらく勘違いも多いかと思うので書き記しておきます。
先生方はできる限り、手術を避けようとあらゆる処置を試みてくださいます。そして、「視力があるうちは決して眼球摘出や視力を奪うようなことはしない」ということです。ここが専門医と獣医師の違いだと思います。
このあと、私の心の弱さから何度となく心配をぶつけることになるのですが、すべての悩みや葛藤をほぼ100%取り除いでくれるそんな先生方です。
以下、うにの手術へ至るまでの治療経過です。
12:00 |
院回りの散歩を終え、入院手続き |
---|---|
13:00 |
点眼開始:ラタノプロスト →縮瞳させる(犬のみ)ことで水の出口を広げる、エイゾプトを15分毎に4回。同時に点滴開始、血液検査(手術に備えて)。この点滴で全身の水分を抜き、眼圧を下げる効果を期待するというもの |
15:00 |
点滴終了:眼圧右28 左10 通常10以下 縮瞳不十分、炎症+瞳が白く曇る、白目の充血 |
16:30 |
眼圧再度上昇:右58左10 点眼変更 ラタノプロストからルミガンへ |
17:00 |
眼圧右58 ステロイド結膜下注射(抗炎症) |
17:30 |
眼圧右41 |
18:00 |
前房穿刺 眼圧右6 |
このまま一晩様子見たものの眼圧再上昇、緑内障バルブインプラント手術へ臨むことになったのです。
初めて1泊以上の入院となるうににとって、うにとほとんど離れたことがない夜を過ごすことになったはろも、ひたすらはろを抱きしめていた私にとっても、心もとない不安いっぱいの夜となったことはいうまでもありません。
緑内障とは
眼圧上昇などにより、視神経が障害される病気です。進行性の病気のため、いかなる処置、手術を行ってもいずれは視覚を失うことになります。
原発性と続発性に分かれており、原発性は房水の流出が阻害されることが原因で起こります。
隅角の異常(柴犬に多くみられます)、両目に発症。
続発性は腫瘍、水晶体の位置異常、炎症(どの犬種にもあり得る)。
うにの場合は水晶体位置に異常なし、眼内の腫瘍なし、炎症あり、柴犬であるとのことから原発性緑内障の診断となりました。
残っている視覚を守ること、眼圧上昇による痛みを除くことが手術のポイントになります。
急性期は点眼、点滴でとにかく眼圧を下げること。
慢性期は失明、眼球拡大。視覚維持のための緑内障バルブインプラント、痛み除去のための眼球摘出、義眼の手術が主となります。
緑内障バルブインプラント手術
うにに選んだこのバルブインプラント術。もちろんのこと、手術直前まで全く知識はありませんでした。
弁付きのバルブ(親指の爪弱の厚さ1ミリの透明のバルブ)を隅角に設置し、眼房水が流れるルートを作るというものです。
10mmHg以上になると弁が開いて、目の中の水を結膜に流してくれます。
この手術におけるメリットは、眼圧が保てること、視覚が維持できる期間が点眼のみの治療より長い。
デメリットは平均一年〜一年半で視覚は失われる。要因としては、バルブの不具合、結膜組織の硬結、バルブが詰まる、バルブが押し出されることも可能性としてある。
この説明の間にもうにの眼圧は上がり、早期決断をするのが飼い主としてできることでした。金銭面、その他、踏み出せない一歩を押してくれたのは忙しい中、うにを思い病院まで車を出してくれた友人でした。
今でも忘れることはできませんが、とてもひとりでは決断もできず、また気持ちがふつと切れそうでした。
あのとき、投げ出さずに取り組んできた気持ちとの闘い、痛そうなうにとの向き合い方、今でも思い出すたびに涙が溢れます。犬を買い、飼うことにこんなにも辛いことが含まれているとは思いませんでした。
そうして朝一番で手術が行われることになりました。
要した時間は1時間半程度でしょうか。無事に1回目の手術は成功しました。
その後のケア、通院、向き合い方の大変さは想像を絶するものとなっております。
専門医の凄さ
獣医師にも“専門医”がいるのをご存知ですか。欧米ではすでに広まっている専門医制度が日本においても始まり、うにはその眼科専門医の一人にお世話になることになります。
この先生の凄さ、神業とも言われるその凄まじさを目の当たりに。現在、日本にも100名を超える皮膚科、眼科、外科などの専門医の称号を得た獣医師がいるそうです。
その分野、症状におけるエキスパートであるがゆえ、他の分野に関してほとんど診察はせず、診察予約は常に埋まっているような状態ですが、急患の受け入れはしてくださいます。
初診料、診察料はすべて高額と言えます。しかしながらそれに匹敵する、もしくはお釣りが返ってくるレベルの技術と経験、症例は持ち合わせていることは確かです。
一生かかっても返済していかねばならないというような、私にとってはそんな金額ですが、後悔はなく、今はうににできる限るのことしようと思っています。
少なくともうにの恩人であるとともに、飼い主として、私に自覚と覚悟をしっかり持たせてくれた先生方でもあります。
また今の医学では解明できていない、うにの涙の成分やその先生も経験したことが少ない症状をもしうにが持つならば、ぜひ今後の研究に、今後他の一匹でも多くのわんこが救える症例となれば、と願ってやみません。最高の技術を与えることにより、飼い主の気持ちまでをも動かせる、それが専門医の神業であり、自信と意識の高さであり、技術の一貫であると思います。
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